青春Destroy | ナノ


015


部屋に入った撫子を待ち受けていたのは榊監督本人であった。
スーツをビシッと着こなし、髪型も放課後だというのに乱れていない。柄物のスカーフをアクセントに使ったスーツは英国紳士そのもの。つけているローズの香りの香水はエレガントさを表現。普通の女子生徒ならうっかり見ほれてしまうだろう。
撫子は着眼点が違っていた。
まず、スーツがナチュラルに着こなしている所で脳内爆発。スーツ、スーツ!そして、乱れていない髪型にはヅラ疑惑をかけ、柄物のスカーフを目に入れた瞬間、テラ厨2と脳内爆笑。香水はくっせ、マジくっせ。と完全拒否。

「……榊先生ですか?」

「あぁ、そうだが…君は……椿崎君だね。」

「はい、…この度、跡部…君の指名でテニス部マネージャーをする事になりました。今回はその挨拶を、と思い榊先生に会いに来ました。」

完璧に猫を被った撫子。内心は爆笑している。リアル紳士キターっ!!と、二次元からの刺客キター!と。

「うむ、そうかご苦労。」

「で、ですね来週末に練習試合が有ると聞いたのですが。」

「あぁ、ついさっき決まったんだ。それがどうかしたか?」

「あ…のですねその日つg」

都合が…と言いかけた撫子の言葉を遮り榊が言う。

「そうか。分かったぞ、君も練習試合が楽しみなんだな。」

「…………は?」

何を言ってんだ?この先生。

「君の事は知ってるよ。今回のプロジェクトに抜擢されただけあって優秀だな。文系に不安があるが…。君は昔テニスをやっていたそうだな。氷帝のマネージャーになったのも昔テニスをやっていたことが忘れられないかだろう。」

「……ハァ。」

何を言ってるんだ?このおっさん(降格)。マネージャーになったのは岳人とかジローと触れ合えるからなんだが。

「で、次の練習試合で一回でも試合をしてみたいんだろう!」

ガシッと撫子の肩をつかむ榊。

「ヒッ………ソデスネ。」

何を言ってるんだろう?このジジィ(底辺)。

「先生は向上心のある者は好きだぞ。椿崎君、いや撫子君と呼ばせて貰おう。練習試合には私の方から参加できるように計らっておこう。頑張るのだぞ撫子君。」

肩をポンポンと叩く。

「ハイ……。」

セクシャルハラスメントで訴えるぞちくしょー。

「うむ。では行ってよし。」

「ブッ………失礼しました。」

足早にテニスコートに帰っていく撫子。榊の印象はダンディズムな中年からただのNHK(なぜ話を聞かない)おっさんにった。外見はよろしいのに中身は残念という忍足二号だ。

というより、なんだ今のアクションは…「行ってよし!」キリッ

「ブハー!アハハハハハ、なにあれ!決め台詞!?三次元で決め台詞持ってる人初めて見た。やっべー貴重だ、貴重な先生だ。…行ってよし!…アハッハ…ブッ!!」

撫子の脳内は「行ってよし」キリっがリフレインしまくっていた。
行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし行ってよし

たたた、たすけて忍足コノヤロー!
撫子は助けを求めてテニスコートにダッシュした。

「おぉすぃたりぃぃいぃ!」

テニスコートに帰ってきた撫子。

「なんや!?そんな叫んで…。」

「ヘルプヘルプヘルプー!何あんた達の監督!何行ってよし!……ブハッフフつ初めてみたよ三次元で決め台詞持ってる人!あぁん、もう…ダメ。でも紳士!紳士!何だろスカーフと背広着ずに香水をつけずにカッターシャツをはだけさせて、髪型乱して挑戦的な目をしたらパーフェクトだと思うんだけど!攻めスペックだけじゃなくて受けでもいけそうな気がするー!」

考えていた事を忍足に話し始めた。どれだけ妄想していたんだ。末恐ろしい。

「どーどー。監督から背広とスカーフと香水をとったらただのおっさんやで…アイデンティティの消失やで!」

「でもさ、あれはない。あれがなかったら………良い!」

「撫子には地雷はないんかい。」

「無い!無いことを誇りに思ってる。」

「即答かい!ま、でも分かるわ。43歳のくせに生意気だ。」

「43歳なの!?」

「せやでぇ。」

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