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「あ…と、…べ…。」 立って気絶して、それでも戦おうってか。格好いいじゃん、でも……。 「お疲れ様。」 終わったね、夏。ベスト8なんて…凄いじゃん。開催地枠だからって侮られてたけど、やっぱり強いよみんな。 と感傷に浸っていたら気絶している跡部に不穏な小さな影が近づいていた。バリカンを持ったリョーマだった。 「リョーママジ小悪魔!」 リョーマがバリカンを頭に近づけると跡部の意識が覚醒したのかリョーマの持っていたバリカンを奪い自ら髪を剃りだした。 「ギャぁあああああああ!?跡部がぁぁあああぁああ!」 「跡部アホやん!自分で刈るてアホやん!跡部回収しに行くで!」 「合点!」 忍足と共に跡部を回収に行った。再び気を失っている模様。医務室まで忍足が背負って運ぶ。運んですぐに跡部の意識は戻ってきた。 「あ、跡部起きたんか?」 「どう…なった?」 どうやら意識を失う直前の記憶が曖昧なようだ。 「うん…お疲れ様。」 撫子は一言、伝えた。 「……そうか。」 悔しいような顔は見せず、ただ静かに一点を見つめていた。全力を出し切った上でのこの結果なのだから本望なのだろう。 「うん、それでね?この後…なんだけどね?」 焼き肉を食べに行かないか?と提案しようとした。が、跡部が叫んだ。 「俺の髪!」 「は、ぁ?」 「俺の髪がない!」 慌てたように跡部が両手で自分の髪の量を調べた。極端に少なくなった髪。 「…自分でやったんだよそれ。」 「まぁ、跡部が自分でせんかったらもっと丸坊主になっとったんやけどな。」 今の跡部の髪の長さだと長めのスポーツ刈りだ。 「クッソ!こんな惨めな姿じゃ外に出れねぇじゃねぇか!」 「田舎の野球部員に謝れ。」 田舎のほとんどの学校では入部したら強制丸坊主だぞ。 「椿崎、お前ヅラ持ってたよな。」 「ヅラじゃないウィッグだ。」 「言い方なんてどうでも良い。前の俺様の髪型にそっくりなやつ持って来い。今すぐにだ。」 「えー…面倒くさいー私にメリット無いじゃんか。」 含み笑いで跡部を見つめる。 「何が望みだ!」 「これからみんなで焼き肉食べ行こ、もちろん跡部の金で。」 「分かったから、持って来い!」 「ラジャラジャ♪じゃ忍足、跡部の相手は頼んだ。私家から直接そこの焼き肉店行くわ。」 「了解。撫子もさっさと戻って来ぃや。」 撫子は跡部と忍足と別れ、家に帰った。そしてウィッグコレクションの中から跡部の髪色に酷似している物…ぶっちゃけいつか跡部の嫌がらせのために買っていたウィッグを取り出した。長いままだったから調整。 「私ってテラ優しくね?」 自分でも完璧と思える形になった。 「あ、ついでに着替えて行こう。制服に匂いついたら嫌だし。」 安売りの時に買ったTシャツを着て焼肉店に急ぐ。 |
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