青春Destroy | ナノ


160


「ああ、僕、妹属性の那由他だよ。知ってるよね?」

しかしそれはボケではなかったようだ。大真面目に自己紹介をし始めた。二つ名を名乗る入江。妹属性の那由他。
そして、その二つ名について撫子はなにか心当たりがあるようだった。その名前を聞いて、驚きの表情を作った。

「え、ちょっまさか!」

「本当本当、今ここで演奏してもいいんだけど、サックスとか持ってきてないからね。証明とかはできないけど、僕が那由他って言うのは覆されることのない事実なんだ。だからね?撫子ちゃん。僕のことお兄ちゃんって呼んでくれるかな?」

そう、『妹属性の那由他』とは笑顔動画で【○○を演奏してみた】と言う動画を上げている人気ユーザーなのだ。演奏する楽器はピアノ、ハープ、バイオリン、主に使われているのはサックスだが、沢山の楽器を操ることが出来る尊敬するべき投稿者なのだ。そして妹属性と言うのは、動画の中で公言したのだ。妹属性の那由他です、と。それが演奏に反映されていないのだが、那由他は妹属性という事は周知の事実なのである。

「え、っとちょっと待ってください。私、妹になるんですか?入江さんよりもでかいのに!?」

正体が分かったところでなんの解決にもなっていない。撫子が妹とかないない。

「お兄ちゃんだよ。撫子ちゃん。それに見た目なんて関係ないよ。重要なのは僕よりも年下ということさ。ほら、考えてみなよ。阿良々木君だって妹より小さいだろう?なのに妹を愛しているという姿勢がいいよね。僕の憧れだよ。」

「うわぁ…うわぁあ!兄貴ッあにk…ッ!」

しかしながらそういう外見で判断するべきではないと男らしい言い分を述べた入江。少し惚れそうになったが、憧れが変態の汚名を受ける勇気を持っていることで有名な彼であることから少々の身の危険を感じなくもない展開。思わず撫子は鬼に助けを求めた。しかし、鬼は徳川とともに買い出しに出ていてこの場にはいない。

「撫子ちゃん、そこはこの僕、お兄ちゃんに助けを求めないと。ね?」

撫子の反応があまり気に入らなかったらしい。ね?の部分に力を込めて発言し、何とも言えない笑顔を浮かべた。どこかで見たことのある笑顔。そうだ。滝属性達がよくする笑だったんだ。撫子はその笑顔に抗うことは懸命ではないと刷り込まれている身。だから入江が所望しているお兄ちゃん呼びを決行した。

「お…ッお、お兄ちゃん?」

「なんだい?撫子ちゃん。」

ご満悦のよう。とてもいい笑顔を向けている。

「呼んで、みただけ、だよ?え、エヘッ。」

「そっかそっか。もっと呼んでくれてもいいんだよ?」

「…お兄ちゃん。」

撫子は覚悟を決め、入江に貢献することにした。それにずっとお兄ちゃんと呼んでいれば、ゲシュタルト崩壊して心へのダメージが減るかも知れないから、呼び続けてみることにした。

「なんだい?」

「お兄ちゃん。」

「うん、うん、その調子。」

「…ッお兄ちゃん。」

が、しかし心が折れそうなのも事実である。

「そうそう、そのままそのまま!」

「何してんだ?かき氷買ってきたぞ?」

「兄貴ぃいいいい!!お兄ちゃん怖いよぉおおお!」

鬼と徳川が買い出しから戻ってきたようだ。そしてただならぬ雰囲気というか、和気藹々とした雰囲気でないところに疑問を抱き聞いてきたのだが、撫子は今答えることができるような精神状態でない。つまり、鬼に抱きつくしかできなかったのである。

「は、お兄ちゃん?入江のことか?」

「怖いよぉおおおお!!うわぁあああああああああああああ!」

撫子の心に軽くトラウマを植え付けた入江はなんだかとてもいい笑顔をしていた。お兄ちゃん呼びはもう固定してしまったのだけれど、もうそれは過ぎてしまった問題であるため、気にしないことにした。どうせもう直接会うことなんてないだろうし。ネット上となればその場のテンションでどうにか行ける気がした。

<< TOP >> 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -