青春Destroy | ナノ


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「だったらマネージャだって悔しがればいいんじゃないかな。マネージャーだって、みんなのサポートをそれこそ生活を部活に貢献してやってるんだから。球出しだって色々出来るサポートはしてきたんでしょう?君って根は真面目そうだし。だったら悔しがってもいいと僕は思うね。徳川は?」

撫子の反論も入江にとっては簡単に論破できるものだったらしい。マネージャーも貢献している。監督と負けないくらい。言われてみればそうだが、そう言われても撫子の意見とは逆を言っているから簡単には同意できない。
そんな撫子の考えを読み取ったのか入江は徳川にも同意を求めた。スキのない。

「俺も入江に同意する。悔しい時は悔しがればいい。それをバネにすればより伸びる。悔しいと思うことも経験だ。悔しい思いができるのは本気で試合をしたからこそだ。マネージャーもそうだろう。今まで練習を見てきて、今回負けたことで足りないところが分かったはずだ。だったらそれを補えばいい。違うか?」

「……違いません…。」

徳川にも同じことを言われ、問いかけられたら違わないと答えるしかないだろう。実際、彼らも間違ったことは言っていないのだから。

「確かに喧嘩しちゃったことは君にとって気がかりなことかもしれない。だったら謝ればいいじゃないか。東京に戻った時、君は謝るつもりなんだろう?」

「はい。勿論です。」

「うん。迷いがないね。だったら跡部君も許してくれるはずさ。そこまで彼は馬鹿じゃないと思うからね。」

「はい…あの、ありがとうございました。入江さん、徳川さん…。折角お祭りに来たのにこんな話を聞かせて。」

なんとなく、心の中もすっきりして撫子はお礼を言った。礼儀はちゃんと正さないといけないからね。

「気にしないでいいよ。僕達が君の問題に好奇心から首を突っ込んだんだからね。それにお祭りはこれから楽しめばいいんだよ。まだ時間はあるんだからね。」

「はい、是非楽しんでいってくださいね。」

「おう撫子も折角だから一緒に回るか?一人だったんだろ?」

撫子はここでお別れだろうと思っていたが鬼が一緒に回らないかと提案をしてきた。それはとても嬉しい誘いで、ぼっちだった撫子は断るということはしなかった。

「え、兄貴いいの?入江さんも徳川さんもいいの?」

「構わないよ。女の子がいてくれた方が逆ナンとかされないし。」
「別に反対する理由がない。」

「そういう訳だ。一緒に楽しもうぜ。」

「あッ兄貴ぃいい!ありがとぉおおおおお!」

「とりあえず俺と徳川でかき氷を買ってこようと思ってるが、撫子、入江何味がいい?」

「いちご!」
「レモンがいいかな。」

「分かった。」

一緒に過ごすことを選択した4人はいっそのことだからここで花火の時間までの拠点とすることに決めたらしい。結構いい位置が取れていたようだ。だからとりあえず2組に分かれて1組がここで待機、1組が買い出しというか、遊びに行くというかとういった役割決めをした。
二人きりとなった撫子と入江。さっきであったばかりといっても過言ではないから少し緊張してしまう。しかも男だし、パンピだし、年上だし、緊張する要素しかなかった。無言のまま二人きりという事は気まずいからなにか話題を、と撫子は絞り出した。

「えっと入江さん、ご趣味は…?」

って、お見合いかよ。私のコミュニケーション能力はこんなにも低かったのか。もっと…あ、それは相手がヲタクだったら発揮されるものだ。そうだよ。パンピと何を話せばいいのかとか知らんわ!

「ん?楽器を演奏することだよ。あそうだ、折角だから僕のこともお兄ちゃんって呼んでよ。入江さんじゃなくてさ。」

「はい!分かりました…て、え?は?」

なんだろう。そのセリフはツッコミ待ちのボケなのか?だったら綺麗に突っ込むことができなかったこの瞬間、懺悔するしかない。

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