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青学も氷帝も帰って行った。まだ早い時間。その場で解散になったため撫子はついでにこの辺りを散歩することにした。 「初めてストリートテニス場って見たな。東京にはこんなのが辺りにいっぱいあるのか?流石都会!大都会岡山なんて本当滑稽!…っと。」 ある公園の前を通り過ぎていたらテニスボールが公園の方から飛んできた。この公園にもストリートテニス場と言うものが存在するらしい。田舎ではあまり見かけなかったが、結構存在するものなのか? 撫子は転がってきたテニスボールを拾い上げ、拾いに来るであろうプレイヤーを待った。 「す、すみませーん…って椿崎さん!?」 「鳳!?」 するとどうだろう。最近練習に顔を出していない鳳と遭遇してしまった。 「あ…っと、ボールありがとうございました。」 片手を差し出してきた。きっとボールを返してほしいのだろう。 「あ…はい、これ。…もしかしてさ……もしかしてなんだけど、宍戸とここで練習してる?」 「え!?………すみません!」 逃げるように走り出した。 「あ、ちょ…待。」 いきなり走り出されたら追いかけたくなるでしょう!もしかして愛を育んでるなう?それならなおさら観察しなきゃじゃん! 「おー…やっぱりあった。」 再びテニスコートを見た撫子は感動を覚えた。しかしそれも束の間で、コートの隅に目をやると鳳に怪我を治療されている傷だらけの宍戸が居た。 「ちょっ宍戸なんでアンタそんなに傷だらけなの!?プレイなの!?SMプレイなの!?」 あわてて駆け寄る。 「ゲッ…んでここに……。」 「ボールを拾いに来た鳳を追いかけてきたわ!」 「長太郎…っ!」 「すみません、すみません!」 「お前は謝りきのこか!」 ペコペコ謝りながら消毒していく。 しかしあまりやったこと無いのだろう、ガーゼが曲がったり包帯が所々緩んでいる。もたもたしてイライラする。何故そこを引っ張るんだ。と言うかその部分は環行帯で巻いたらすぐ崩れてしまうのに。そこは麦穂帯で巻きなさいな。そこは亀甲帯。ってまさか環行帯しか巻き方を知らないというのか? 「あぁああ!見ててイライラする鳳代わって!」 「ハイィイ!」 選手交代。撫子はテキパキと消毒していく。 「……ふぅ…終わりっと。いい仕事したわぁ。」 「……とよ。」 宍戸が何か呟いた。 「あ?なんだって?」 「っありがとよ!」 顔を真っ赤にさせて言う。 「いひひ、どう致しましてぇ。」 ヤダ可愛い!同級生なのに可愛いとか思わせるとかやっぱ生意気野郎のデレはハンパないわ。 「んで…悪かった…。」 「へ?何が?」 「準決勝の時…顔…殴って……悪かった。」 「あぁ、別にどうでもいいよ。もう治ったし。」 「へ!?椿崎さん殴られてたんですか!?」 鳳が驚く。 「うん…あれ?気付かなかった?」 「え、でも準決勝の次の日傷ありませんでしたよね?」 「あ…そっか、私化粧で誤魔化してたんだ。」 まず下地をきっちり塗るでしょ?それからコンシーラーを軽く付けて、それからファンデーデション。ノーズシャドウを薄く塗って、最後にフェイスパウダーとチークを塗って、完成!殴られた傷を隠すための最低限のおメイク! 「あ、だから妙に顔色のいい日が続いたんですね。」 「えッ私日頃ってそんなに顔色悪い?」 「気になる程度には。」 「…マジでか…毎日化粧する必要あるか?いや、でも朝顔面耕す時間ないし、お肌に負担かけすぎたくもないからな…。」 「なんでそんなに平気なんだよ!」 鳳と撫子が談笑していたらそんな空気をぶち壊すかの如く宍戸が怒鳴った。そんなに怒鳴らなくても聞こえるが、そんな感情を抑えて訴えることができないぐらいには宍戸は高ぶっていたのだろう。 |
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