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「撫子ですけど!?」 「ようつべで見かけたあのダンスを踊っていたり歌っていたりしている撫子さんなんですね!?」 「ようつべ…だと?」 誰だー!?勝手にようつべにうpしたのはー!?万死に値するぞ!!それより何故知っている、この二人はパンピ臭しかしないのに…。何故ネット上で活動している私の事を知っているんだ。 「あぁ、会えて良かった!バカ澤には感謝です。」 「バカ澤?」 「えぇ、僕に撫子さんの存在を教えてくれたのです。」 「あー…そうなんだ。」 「こんなところで会えるなんて、思ってもみませんでしたよ。裕太君、カメラ、今すぐカメラを出しなさい!」 「いや、ありませんよ!」 「なんで持ってきていないんですか!偵察に来たんですよ!?」 「観月さんが言ったんじゃないですか!カメラなんてまどろっこしい。誰に伝えるんですか。彼らには僕の言葉で伝えれば十分だからって言って持ってこなかったじゃないですか!」 「あぁ、なんて惜しいことをっ!」 顔を歪めて悔しがる。 「…………ヒッ!?」 撫子が短い悲鳴を上げる。観月に両手をガシッと掴まれたから。もしかしたらこの動作は色々とトラウマになってるかもしれない。 「なんてことだ…。あぁ、僕のヴィーナス。ここで出会えたことを数多の神々に感謝します!貴女はこの汚れた地に舞い降りた神々しき乙女、その乙女は愛されるべき高尚なお方。そんなお方が僕の目の前に…あぁ、僕の姿がヴィーナスの瞳に写っているのですね。」 うっとりと撫子を見つめている。 「う゛、ギャァアアア!?」 痒い痒いカユイー!!つかこの人怖い、なんでそんな恥ずかしいこと言えるの?え?ヴィーナス?文字で読む分には構わないけど…口に出すとかなり痛々しいな…。それよりもこんなキャラだったとは…もう少しプライド高めのツンデレかと思ったのにぃ…! ふと裕太を見るとさっきよりも観月から距離を取っている。顔をひきつらせて、 どうしてこんな反応をするんだ。君は彼とは先輩後輩の間柄でそれなりに親しんでいるんだろう? 「……あの…裕太君?」 「無い無い無い無い無い無い…。」 首をブンブン横に振り、観月のキャラを否定中。へー…キャラ豹変したのかこの人は…。 「あぁ、貴女と出会えたこの日を奇跡の日として生涯忘れないことを貴女に誓います。僕のヴィーナス…。」 まだ言っている観月いい加減、撫子が嫌がっていることを気づけばいいのに。このままでは好感度をマイナスまで下げることになるというのに。 「観、月君!!やめて!お願いだから!」 もう石田ボイスはリアルで聞くものではないと理解したよ。台詞の内容と相まって跡部や忍足よりも破壊力あるかもしれない。 「何故そんな事を言うんですか?僕と貴女の縁の糸がようやくここで絡み合ったのですよ?もっと…もっとですよ!!」 「何がもっとだこの野郎。」 思わずキレた撫子。恥ずかしいから止めろと言ったのに、まだ続ける気か貴様。 「私が止めてって言ってるんだから止めてよ。むしろもう帰ってよ!」 「そのように怒るヴィーナスもまた美しい、あぁ貴女の仕草一つ一つに僕の心臓が震えています。」 「ああああああ!!裕太君!止めて、ホントマジで!」 「いや、あの…観月先輩?嫌がってるんで止めた方が…。」 オズオズと控えめに忠告。 「お黙りなさい!!」 聞きしに勝る怒りっぷり。こんな必死になっている観月を見たのは初めてらしい。裕太はすぐに謝罪した。ここで先輩と後輩の刷り込み的なものも見た気がした。 「はい!!すみませんでした!」 「使えねぇ!誰か、誰か助けてぇええ!」 叫ぶとテニスコート方面からユニフォームを着た伊達眼鏡がやってきた。 「撫子ー、跡部がさっさと戻って来いて言うとった…て、これなんて言う状況や?」 忍足が状況把握しようと頑張る。聖ルドルフの二人が居て、撫子が居て、黒髪の方が撫子の両手をガシッと掴み前傾姿勢。撫子はそれに対して逃げるように身体を反らしている。もう一人の聖ルドルフは呆然と唖然とその様子を見ている。 「成る程全然分からん。」 「救世主!」 「は?」 「とりあえず助けて!!」 忍足に縋る撫子という奇妙な光景を目の当たりにしてしまった忍足はこれはただ事ではないと理解。仕方がないので手を貸すことにしてやったらしい。 「…しゃーない一個貸しやで。」 |
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