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クラスについた撫子。すでに忍足は居た。昨日の撫子みたく、一人で読書をしていた。撫子の姿を確認したのか忍足は本から視線を外し、撫子の方へと視線を向けた。 「おはようさん、今日は来るの遅かったやん。」 「…忍足、何で朝練が自由参加でマネは必要無いって教えてくれなかったのかな、かな?」 日吉とちょっとだけほのぼのとした空気に浸っていた撫子だったがなんだかこの丸眼鏡の姿を見たら沸々と怒りが込み上げてきた。日吉が撫子に朝練の事を伝えなかったと言うのは分かる。接点が今まで無かったからね。けど忍足は散々巻き込んだ張本人であるのだから撫子のサポートはしないといけないだろう。そんな気持ちを持ってしまったら後はその怒りを忍足にぶつけるしかない。長い前髪も乱れ、髪の間から人を射殺さんとする眼差しで忍足を睨みつける。 「教えたと思ったんやけど……撫子が忘れとったんちゃう?」 昨日、忍足は言っていなかった。撫子の目が怖かったからといって嘘は良くない。 「嘘だ!!私をなめるなよ?伊達に変なプロジェクトに抜擢されたんじゃねぇよ。私が?忘れた。ハンッ、んなわけねぇだろ。自分に関わり有る情報を私が聞き漏らすわけ無いじゃん。今なら土下座で許してやる。寛大な私の心に感謝しな。」 「実にすんませんでした!」 忍足は華麗にスライディン土下座を果たした。 「嘘は良くない。実に良くない。」 「はい…。」 「まぁいいや、ツンデレ君と遊んだから。いやーリアルノル君だねあの声!」 「日吉があの台詞言ったんか!?」 ガタンと立ち上がる忍足。 「言った言った。つーか言わせた。」 「ええなええなぁ俺も聞きたかった!」 「もっと羨やめ。睨んだ通りだったよ。結構声質似てたし!私のダメ絶対音感なめんなよ!」 「俺も思っとったで!うちのテニス部声質が神がかってると思うわ。」 「だよね!べ様に浪川さんに☆さんにそっくりだよね!」 「せやろー。」 「あー、マネージャーになって良かった。これからもう楽しすぎるわ。氷帝唯一のオタクだった忍足とも早々に出会えたし。ただ君達を傍観できないのは残念だねー。」 「なんやまだ諦めてなかったんかい。」 「諦めるわけ無いじゃん!よく考えて、君達はイケメンだ。俺様に従者、ショタっ子、妖精に美人さんでしょ?受け対象者にお相手、ツンデレに眼鏡!オールパーフェクト!エクセレント、す ば ら し い !だからこそ遠くから見ていたい。それに、夢でよくあるけどさぁ…マネージャーになるなんて生意気よ!とか言っていじめの対象になるでしょ?まぁここは三次元だし無いと思うけど!」 傍観夢ってある意味最強だと思うのよね。美味しいとこ取りで。痺れる憧れるー! 「あー…撫子だから謝っとくわ。ごめん、いじめ有るわ。」 「マジで!?三次元と二次元を一緒にしたらあかん!」 「今までのマネージャーはミーハーだったからザマァって思ってたんやけど……。」 「…ハァ、………ま、いいか。」 「そら辞めたくなるわなぁ。でも辞めんといて…ってええんかい!」 てっきり虐めなんて受けたくない、辞めさせて、つーか辞めさせろ。と訴えてくるかと思って忍足は必死に引き留めようと声をかけていたのだが、どうやらこの撫子。辞めるつもりはないようだ。 「へーきへーき。虐めなんてみんな一回は受けるっしょ。浅はかな考えだよねー。どーってことないない。今回ばかりは忍足は絶対味方で居てくれるんでしょ?だったら平気、ゆぅしー?」 「I see…。」 「うわ、流暢な発音。嫌み?」 若干暗くなった雰囲気を明るくしようと撫子がちゃかす。 「…何かあったら言いや?」 「分かってるよ。」 なんだか重たい空気になってしまった。朝からこんな空気は辛いものがある。こんな空気、テストの日の朝だけでいい。撫子はどうにかこの空気を打ち壊そうと、話しを無理やり変えた。 「……あ、そう昨日笑顔動画に動画うpしたから。一応言っとく。」 「お、おおきに!今日帰ったら探してみるわ。」 「出来れば感想聞かせてね。リアルの声って結構重要だから。」 「OK、我が命に代えても。」 忍足はなんだろう、サービスと言わんばかりにとてもいい声を発してくれた。しかも吐息付である。 「銀さんより色気有るってどういうこと、あんたホントに中学生?」 「当たり前やん。日本には留年制度無いでぇ。」 「忍足って見た目26歳と6ヶ月じゃん。」 「侑士君今ので傷付いた!俺そんな老け顔ちゃうもん。ちょっと大人びてるだけやもん。」 かわいこ、ぶりっこ。忍足君(笑) 「だもんって…それあんたみたいなエロボイスが言ったら別の意味で破壊力有るから辞めて。」 腰に来る。 |
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