144 |
試合が終わって相校ともに挨拶。重い空気、重い足取りでメンバーが戻ってくる。跡部、樺地、準レギュラーの順で控え場所に戻ってきた。それから宍戸が戻ってくるかと思ったが戻ってこなかった。撫子はコートのところまで宍戸を迎えに行った。すると丁度宍戸がこちらに帰ってくるところだった。 メンバーの中で一番暗い雰囲気を背負って。泣くこともなく、悲しい顔をするわけでもなく、悔しい顔しかしていなかった。 「ア…アハハハハ!宍戸、君最高だよ!超高校級に最高にかっこよかった!攻受の下剋上を果たすような試合運びだったよ!新たな萌えをありがとう!攻に挑む受戸カッコ良かった!うん!」 重い空気を吹き飛ばす勢いで陽気に撫子が宍戸を茶化す。 「っるせえ!!テメェ、どっか行け!俺に構うな!近寄るな!テメェに何が分かる!気安く声かけんな!無駄に励まそうとすんな!ウゼェんだよ!アドバイスがなんだ!忠告がなんだ!意味わかんねぇ暗号使って説明したくせに!俺のスタイルに口出すな!」 宍戸が怒鳴る。怒鳴るついでに撫子の胸ぐらを掴み威嚇。撫子は甘んじてその行為を受け入れる。宍戸の手を持って身を守ることもしない。両手は下にしたまま宍戸のことを煽り続ける。 「っ…やっだぁ、宍戸そんなに怒らないでよ。確かに君は負けたさ、負けた。勝負の世界だもん勝ち負けあって当然だし?予想通りに試合が展開するわけないよ。まぁ、私の予想はある意味で当たったわけだが…。さて宍戸、私はさっきアンタのプレイスタイルにはいっこも口出していない。出すはずがない。それはあんたを完全に否定することになるから、私はそれをしていない。けれど、宍戸、自分がそれをわざわざ口に出したって事は君自身疑問に思ってんじゃないの?」 「っマネージャーのくせに知ったか決め込みやがって、ふざけんな!」 宍戸はその言葉に怒りを覚え握り拳を作る。その握り拳を見た撫子は軽く微笑んで、それから言った。最大級の煽りを宍戸に言ったのだった。 「…マネージャーですよぉ?アナタの部活のマネージャー椿崎撫子たんですぉ?あんたが女の子にちゅーされそうになった時に助けてあげた撫子ちゃんの顔を忘れちゃったんですかぁ?」 「っ!!」 「ってぇのぉ…。」 殴られた。思いっきり男が女を握りこぶしで全力で殴った。殴った本人は驚いている。殴りたくて殴ったというのに殴った本人が驚くなんて予想外である。と言っておく。 「……驚いた宍戸の顔hsprォ!」 「チッ。」 殴られたことなんか気にしてない素振りを見せる撫子。それに苛立った宍戸は舌打ちをして帰って行った。撫子も帰ろうと何事もなにったかのように荷物を取りに控えに戻る。そこには跡部と樺地だけ、他のメンバーはさっさと帰ったようだ。 「残念だったね。」 荷物をまとめながら跡部に声をかける。 「あぁ…だがコンソレーションがある。」 「うん。」 「次は宍戸を下ろしジローを入れる。」 「そっか…。」 「騒がないんだな。お前なら何故だ、と騒ぐと思ったが。」 「氷帝テニス部は実力主義って知ってるから…負けたらレギュラー落ちが当たり前、でしょ?流石に部の方針まで口出ししないよ。」 「あぁ。帰るぞ。」 「うん…。」 ドリンクや救急セットなど部活の備品を跡部の車に乗せる。ついでに自宅まで送って貰えるようだ。車の中で跡部、樺地、撫子が無言のまま外を眺めて窓から見える風景をただ無心で見ているだけの時間が流れていた。 |
<< TOP >> |