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「はいこれ、跡部あげる。」 昼休み、優雅に紅茶を飲みながら生徒会の仕事に精を出している跡部の目の前にドサッと置かれた紙の山。 「なんだ?これは…。」 「は?昨日私偵察行ったじゃん。それの記録だよ。ジェバンニが一晩でやってくれました。」 ペラペラと記録をめくっていく跡部。ジェバンニって誰だ?と聞きたい気持ちがあったようだが、それどころではなかったらしい。跡部はただ静かに撫子が持ってきた紙を捲り読んでいた。 「………。」 「始めの九枚がレギュラーたちの特徴や癖、あとプレイスタイルからみる性格が書いてある。角刈り君だけ名前が分からなかったけど跡部なら分かるよね。後のページはダブルスになりうるペアの俺考察。ゴールデンペアだけじゃ団体戦には参加できないから青学は試行錯誤の奇々怪々なペアを組んでくると思うしね。」 「やれば…出来るじゃねーかよ椿崎の癖に。」 「私をバカにしないでよ。私はやるときはやる女だから。カッコよくない?働きマンつって!じゃ、あと印刷とかはよろしくー。」 撫子は一仕事終えた後の軽い足取りで教室へと帰って行った。記録を睨みつける跡部。睨みつけるというか凝視する。一日の偵察で、一日のまとめる時間でここまでのものができるものなのか?と疑問符ならいくらでも浮上した。 「オイ樺地。」 「ウス。」 「お前、これ一晩で出来るか?」 「まとめるだけでも二日、かかるかもしれません…。」 「だよな…まぁいい樺地コピーだ。部員全員分。」 「ウス。」 準レギュラーだけでなく部員全員に配るよう指示をした。それだけ準レギュラーだけに配るようなクオリティではなく。レギュラーにも渡せるぐらいの高クオリティの物だったという事だ。いやはや、撫子にちゃんとご苦労とかねぎらいの言葉をかけてやればいいのに。素直ではない跡部がここにいた。 「次は都大会か。あいつらと平達が当たるとおもしろいんだがな。」 「ウス。」 PPPPP―PPPP――…。 跡部と樺地が話している最中に樺地の方からなにかの電子音が聞こえてきた。 「アーン?」 「すみません…。」 「いや、構わねぇ。」 跡部の了解が出たので樺地は電話をとる。電話をとり、会話を続ける。その光景を跡部はただ黙って見ていた。そして樺地は相手との会話が終了し跡部の方を向く。 「跡部さん…ユニフォームが出来たみたいです。」 「そうか、良いタイミングだな。」 「ウス。」 「都大会までに間に合って良かったぜ。今日椿崎に渡す。部室に持って行っとけ。」 「ウス。」 何かを企みそれが成功したようだ。どんな企みなのだろう。撫子にとってデメリットとならないことだといいのだが、どうなのだろう。跡部の表情から推測したいものがあるが、今の跡部の表情は悪代官と揶揄してもおかしくないぐらいの悪い笑みをしていた。 |
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