青春Destroy | ナノ


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さて…どうしよう。舞長さんが踊りながらこっち見てるー。あっち向いてると思ったらこっち見てるー。その馬のマスク、…怖いね。画面上だったら馬の被り物をしているという点で笑える点となるのだが、リアルで見ると怖い。焦点の合わない目が何よりも怖い。
しかし流石舞長さん。でも踊るのは止めないんだ。その踊り手精神、素晴らしいよ。…だったら私だって踊り手精神を見せてやるぜ!

撫子は扉をしっかりと押し開け部室内に、そして再び扉を閉める。舞長はその撫子の動作に驚きはしたが、ダンスはやめなかった。そして撫子は流れている音楽に合わせて体を動かした。そう。舞長とダンスを始めたのだ。
いつかネタとして踊ろうと思って練習しておいて良かった。そんな無駄な努力がここではとても最高の方法を採ることができた。舞長は驚きながらも乱入してきた撫子を追い出すこともせず逆に画面の端により撫子をカメラ内に収めさせた。とてもいきなり夢のコラボの始まりである。証拠にコメント欄が荒ぶった。

色々な事態に陥ってしまったが、無事に一曲が済み生放送も終了。
一瞬静かな空気が流れる。どう話を切り出すべきか、もう正体を知りたくて知りたくて仕方がないので、撫子はいきなり本題に入ることにした。
誰ですか?

「あの…舞長さん…ですよね?生放送中心の踊り手の…。」

「あぁ。」

「マスク、外してもらっても良いですか?」

「…………あぁ。」

舞長は恐る恐るといった表現が適当の手つきでマスクを外す。そこに現れ出るは手塚の顔、なんとも気まずそうな顔である。いや、表情には現れていないが、冷や汗が額を伝っている。ポーカーフェイス破れたり。
しかし撫子はポーカーフェイスを保つことができなかった。何故かって?それはもちろん。あんなに真面目な堅物部長として有名な手塚国光がこんな馬のマスクを被ってネタ曲を踊るだなんて想像ができなかったからだ。むしろ想像を絶している。

「ててて、て手塚君!?」

「あぁ。…アナタは、あの撫子さんでしたか。まさか、不二の親戚とは…。」

「よく分かりましたね。今ウィッグとかで変装してるのに…。」

「簡単だ。踊り方に特徴がある。長身をいかしたダイナミックな動きの中に繊細な動き。閲覧者もすぐ分かっていた。」

「あー…確かに。コメントでそんなの流れてたね。」

「しかし、撫子さんは…今年の春に東京の学校に通っているはずだが…。」

しまった。辻褄が色々破綻してしまっている。これはどうするべきか。簡単だ。逃げるしかない。

「アハ…アハハハハハ…手塚君ありがとう!私のコメント欄もちゃんと見てくれてるんだね!ものすっごく光栄だよ!」

「話をそらすな話を。」

「…そのですね…アハ、あ、周助君の鞄はどれ?」

「それだが?」

手塚が不二の鞄を指差した。
撫子はその位置を確認した後、手塚の両手をソッと握りしめた。

「私、舞長さんに出会えてホンット嬉しかった!さようなら!!」

撫子はその場を駆け出した。手塚が示したん不二の鞄を引っ掴かんで、動作も俊敏に大胆に、扉をとても乱暴に開けた。扉の蝶番が軋む音がした。

「な、待て!」

「手塚君、ホンットごめん!バレるわけにはいかないだ!」

手塚も慌てて後を追いかける。扉の向こうで撫子がドアノブを掴んだまま手塚を見つめていた。そして手塚に対して心の奥底から謝罪をして、手塚が丁度扉から出ようとしたときに撫子は力一杯閉めた。手塚は扉に向かって突進していたようなもので、勢いは急には止めることが出来ない。そんな中扉が閉まってしまった。つまり手塚は扉に顔面からダイブした形になる。
当分うずくまっておくしかないだろう。合掌。
この隙に撫子は青学から逃亡しようと計画を咄嗟に立てた。まず、不二のもとに行って写真のデータを出してもらう。これが目的で今回の偵察は始まったといっても過言ではないから。
カバンを抱え、不二の元へと全力疾走。そして藤にカバンを突き出す。

「仙人掌さんこの中にあるデータってどれ!?」

「あれ?撫子さんどうしてそんなに慌ててるの?」

「手塚君にバレた!私が親戚じゃないって!」

「…へー、バレちゃったんだ。」

少々黒いオーラを感じつつも今はそれどころではない。それによく考えれば咄嗟に不二のHNを口走ってしまってる。

「そう!でもね、私も手塚君の秘密知ったからドローね!」

「秘密?」

「後でメールで教えるから、今はデータ!」

「…ま、いいよ。ハイこれ。」

ゴソゴソと鞄の中を漁りデータを取り出す。

「ありがとう!!また会いましょう!その時はもっとクオリティを高めとくから!」

「それは撮り甲斐があるね。頑張ってね。」

門から出て家に直行。いつもよりも早い時間に帰ることが出来た。不本意ではある。もっと青学の選手の筋にk…選手の特性を見ておきたかった。しかし終わってしまったのでそれをいつまでも悔やんでいてもしょうがない。

「っあー……怖かった。まさか舞長さんが手塚君だったとわね…豹変っぷりがテラ恐ろしす。よし、ついでに舞長さんの今までの動画もっかい見てみよう。」

パソコンを立ち上げ、笑顔動画にログイン。見ればすでに先ほど撫子が飛び入り参加した動画が上がっていた。

「どうしよう…あのクッソ真面目な面をした手塚君がこんなダンス踊ってたらもう…私…腹筋が死ぬ。つかあんなにイケメンなら素顔晒せばいいのに…。」

一通り見終わって続いては跡部に提出する用の青学テニス部の偵察記録をワードで作成。
明日提出と言われてしまっているので、即効で仕上げることにする。唸れ、撫子のブラインドタッチ能力。

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