青春Destroy | ナノ


137


「しっかし…さすが地区大会優勝校。」

レベルが高い。氷帝もそこそこ強いから慄くような強さとは感じないけど、それなりに成績を収めているだけある。こりゃ氷帝も油断はできないですねぇ。…流石に準レギュを当てるとかほざかないよな?……データのかさ増しでもしておこうか。正レギュラーが確実に出て行くように。

「よく、知っているな。」

後ろから声がした。
しかも結構いい声。あれだ。ダメ絶対音感を駆使して考察すると、婚活鬼の声な気がする。それからコーポレーション社長。さて、今回このイケメンボイスを駆使しているイケメンは誰だい?
イケメンを予想しながら振り返ってみるとそこにはセルフ逆光眼鏡が立っていた。

…イケメ…イケッ…イケメン?

「あの…さb周助君のお友達?」

「あぁ、三年の乾貞治だ。あなたは…データによると不二の親戚の椿崎撫子さん。岡山から只今遊びに来ている。」

「……。」

データによるとってマスターみたいな奴だな。マスターのキャラの二番煎じは流行んねぇぞ?それに流行らせない。そんなことよりドヤ顔を止めてはくれないだろうか、間違っているデータを言ってドヤるのはマジ勘弁。私は決して周助君の親戚ではい。あんな親戚がいたら私のHPがマッハでやばい。

「たまたま遊びに来ているのに何故優勝校だと?」

はい、普通に氷帝テニス部内では常識です。とは言えない。

「周助君…からさっき聞きましたけど。」

「そうか。」

「ねぇ、二人とも楽しそうだね。」

今後はフェンスの向こう側から声がする。

「周助君じゃない…どうしたの?」

あれ?さっきまで向こうの木の陰に居たと思ったんだけどな。うん、でも常識は通じないって分かってる。

「ねぇ撫子さん。あれ、部室の僕の鞄の中に入ってるからさ、取ってきてくれない?」

「…あれ?」

「そうあれ。」

なんだ?あれって?ドリンクでもタオルでも無さそうな。あ、もしかして写真のデータかな?

「そうだよ。」

うん、読心術って便利ー。しかし、乾君が居る前で話をふらなくてもいい気がするのは私だけじゃないはず。

「分かった。取ってくるね?」

「うん、よろしく。」

撫子は二人のもとから離れ部室へと向かう。

「…しかし、人様の部室に入るのは気が引けるなぁ……しかも鞄を漁るなんて…でもまぁ許可は貰ってるし。いざ推して参る!」

部室のドアに手をかける。

♪〜♪〜〜♪〜♪♪

「ん?」

部室から音楽が聞こえてくる。撫子はドアを思いっきり開けることを止め、静かに耳を近づけ、中から聞こえてくる音楽の特定に勤しんだ。

「!!?」

こ、これは『バラライカ』!?嘘!?なんで!?誰が、え?なんで部室から音楽が?しかもただのJポップではない。こんな、こんなところから流れ出ていい音楽ではない。いったい誰がこれを聞いて喜んでいるというのか!?

撫子は少しだけドアを開けて中を覗いてみる。そこには馬が、…馬の被り物をしている不審者が居た。そんな不審者が一心不乱に音楽に合わせて踊っている。なんと怪しい空間を作り上げているというのか!
しかし、この人物、見覚えがある。

「…え、まさか!舞長さん!?」

『舞長』とは笑顔生放送で神出鬼没のユーザーである。
主なタイトルは「【部活中だけど誰も居ない部室で】○○踊ってみた【舞長】」

生で、しかも部活中という誰が来るかも分からないというハラハラ感がたまらなくエクセレントで人気を博している。その間、元々誰も来ない環境なのではないか?というヤラセ説が出たのだが、過去に実際、親フラならぬ友フラをされそうになり、舞長はダンスを放棄してドアノブを必死に固定するという事件が起こった。それ以来ヤラセ説は吹き飛んだ。ちなみに顔バレ対策で眼鏡をつけた馬のマスクを被っている。うp時間ははだいたい放課後の時間な為撫子は最近リアルタイムではチェック出来でいなかった。

「わぁお!『バラライカ PV いさじ with 阿部ダンサーズ 』(舞長ver)の生ダンス!やったぁ、久し振りに見れた舞長さんの姿が生!」

その舞長が扉を背に踊っている。舞長を撮しているカメラはパソコンに繋がっており撮影真っ最中。つまりは、撫子が少し扉を開けたところもばっちりと映っている。そんな背景の変化に気づいたコメが流れる「舞長ー、後ろー!!」「扉が…開いただと!?」「何!?舞長さんの仲間か!?」「え、これヤラセ?」
と、流れるコメントをふと見た手塚。振り返る。しかしダンスは止めない。どうすることも出来ない撫子は固まった。

<< TOP >> 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -