120 |
「撫子さん…。」 「ん?なんだい赤也君。」 「巻き込んですんませんっした。」 「おっきい姉ちゃん、ホンマごめんなさい。」 眉をハの字、正座のしびれで涙目。なんて素敵な表情なんだ。これでご飯数杯はイケる。 「はわわわわわっ…そんなッいじめたくなるような顔でこっち見ないでよ!いじめたくなるでしょ!」 「なぁんや、椿崎さんってホンマはそんなキャラやったんやな。」 白石が良かったぁという晴れやかな顔をした。そうだ。幸村の嘘に踊らされていたんだ。けれども怒りよりも安心感の方が勝ったようだった。 「あ…騙してたようでごめんね?私そんな暗すぎる過去なんて持ってないんだ。」 いじめはあったけど。 「かまへんよ。そりゃあ流石に騙されとったらカチンってきたけどネタになったし結果オーライや。」 「…あ!し、白石君、ちょっと近く来てくれるかな。」 ちょいちょいと手招きをして白石を呼ぶ。そして近付いてきた白石だけに聞こえるように話す。 一応確認を取っておきたかったのだ。白石が本当にホワイトストーンさんであるかどうか。 「ねぇ、白石君って…ホワイトストーンさん?」 「………そりぁ、白石って英語で言ったらそれになるわなぁ。」 「…通称エクスタさん。妄想したもん勝ちや、スモールスプリングwithカッパ……。」 「何で知っとんのや!?」 あからさまにあたふたとする。いや、さっき百合とかBLって叫んでただろ。今更照れるなよ。 「私撫子です…けど、知ってますかね? 最近一次創作のジャンルを鬼畜からほのぼのにジャンル変更した…って分かりませんよねぇ。」 「!?ホンマなんそれ!?椿崎さんってあの撫子さんか!? 親に誓って教師に誓って大仏に誓ってキリストに誓ってアッラーに誓って月に誓って撫子さん!?」 「親に誓って教師に誓って大仏に誓ってキリストに誓ってアッラーに誓って月に誓ってその他諸々に誓って撫子です。」 「っわー!!会えてものごっつ嬉しいわ!俺ファンやねん、信者つっても過言ではないでぇ、毎日ストーカーしとるもん。ちゃんと毎日拍手しとるし、メールは烏滸がましゅうて送ったことあらへんけど…。」 「こちらこそ、私もあなたのファンです! 書く作品がほのぼのだろうとシリアスだろうと甘だろうとギャグだろうと死ネタだろうと嫌われだろうと裏だろうとすべて見てます!そして百合だって見てやりすよ!それがエクスタさんの作品ならば!!」 「「会えて良かったぁ!」」 「せや、明日も俺ら東京で観光する予定なんや。良かったら案内してくれへん?」 「いいですよ!とっておきの聖地に連れて行ってあげますよ!メアド教えてください!」 「うわぁ、めっちゃ楽しみやわ!あわよくばスカイプIDもラインもなんかすべて教えたってくださいなぁ!」 「それなら俺も行きます。」 正座している財前が話に入ってきた。白石と撫子が二人で遊ぶと言うことが気に入らなかったようだ。 「お、財前さ…君も来るかい?」 「ひかる。」 「ん?」 「光って呼んで下さい。」 「!?光君!」 「ハイ!」 「シャイニングフェイス!!」 顔を両手で隠しのけぞる。 「撫子さん、俺も下の名前で読んでや。」 「えー…っとなんだったっけ?」 「蔵ノ介や。」 「……長いね…かみそうだよ…。」 「なんかすまん…。」 「うん、蔵さんって呼ぶよ。助さん格さんみたいな?」 「時代劇っぽいな…蔵さんなんて初めて呼ばれるわ。」 「そうなんだ…何事にも経験が必要だよ。」 「ねぇ…君たち、僕を空気にするなんて良い度胸だね。」 幸村が腹いせに、と赤也の足をグリグリグリグリといたぶっている。 「ギャーッ!? ぶ、部長!!止めて下さい、止めて下さいぃ!!ホントなんなんすか!?腹いせにこんな、っギャー!!痛い痛いぃいぃいい!!」 叫ぶ赤也。隣で顔を青くする金太郎。撫子とのデートに心を踊らせる財前。正座させられていても反応は全く違う。 |
<< TOP >> |