青春Destroy | ナノ


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「撫子さんここどうぞ。」

財前が自分の隣に空間を作り撫子を手招きした。

「ありがとう。」

撫子は言われたようにそこに座る。
財前は無言でジーっと撫子を見つめていた。撫子は少しの居心地の悪さを覚えたが、それどころではない。
これから脳内の大運動会が開始されるから。そう言う訳で撫子は財前の視線も何のそので、脳内の準備運動をしていた。

さって、脳内の腕?がなりますなぁ!!

二人はゆっくりと試合を観戦した。
とりあえず、一番最初のターゲットは忍足と言う苗字も癪に障り、さらに腐人を敵に回しやがった忍足謙也だ。

開始されたばかりで、衣服の乱れや、潮紅した頬や鎖骨に伝う汗とかまだ見られておらずスポーツ少年のいいところはなく魅力が半減している。実に残念だよ。しかし、見れば見るほど、何か違和感。現在、忍足謙也はシングルスやってるが…なんかなれてない感じなプレースタイルである。

「ねぇ財前さん…忍足君、いつもはダブルスだったりする?」

「はい、そうっすわ。いつもはおr…ひかるが組んどります。」

「なっ!?…そうなんだ。どうりで…。」

私の萌えレーダーが中途半端にしか反応しないわけだ。

財前君どんな男子なんだ?でも財前さん教えてくれないんだもんなぁ…あ、他の人に聞けばいいな。うん、後で聞こう。

「千歳君はキラキラしてるね…。」

何?セルフキラキラ?背中にバラor百合とかのあれ?

「そっす…才気煥発の極みっすわ。」

「ほー…。」

最近、中学のテニスレベル高いな。若者の人間離れが深刻です先生。…もしかしたら私もテニス続けてたらこの人達の仲間入りをしていた可能性もあったのか?…辞めてよかったのか…もしれない。
あ…小春さんと一氏君……スモールスプリングwithカッパが現実世界に居る!うわー!!三次元で見られるなんて!BLは二次元までだと思っていたけど!なんだろう。…容認してもいいかもしれない。だって本当にそのままなんだもの!!

「フフフッみんな動きが悪いよ。」

小春と一氏ペアの対戦相手だったブン太とジャッカルの動きがピシリと止まる。

「ゆ、幸村君!?」

一氏から幸村の声が聞こえてきた。これは幻聴ではない。撫子にだけ聞こえてきた物ではないから。撫子のダメ絶対音感もあれは幸村の声だって主張しているから。でも一体どういう事なんだ。

「あぁ、一氏先輩の声マネっすわ。」

「声マネ?」

「小春〜、やったでぇ!」

「ユウ君流石やぁ!小春嬉しー!」

「当たり前やろ!笑顔動画にうpした動画で批判コメ0を叩き出してるんやからな!でも小春に褒められた方がもっと誇らしいわぁ!」

ほぅ、笑顔動画か。フムフム…で、うp…してるのか…………へーー。通りで声マネのクオリティーが高い様で。

「ってハァ!?笑顔動画ぁ!?」

「そうっすよ撫子さん、一氏先輩はうじうじっつーHNで活動中の歌い手兼声マネ主っすわ。」

「な!?うじうじさん!?うっそ…え、え……ま、ちょ。」

思わずベンチから腰を浮かべた。

どうしよう、落ち着けない。落ち着けないよぉ!!あの、あのうじうじさんが…そんな。待って、心の準備がッ…あぁ、どうしよう…とりあえず結婚の申し出…じゃない!!
そうだ、部室に駆け込んで発散してこよう。うんそうしよう。では財前さんちょっと失礼、

「おっきい姉ちゃん避けてやぁ!!」

「撫子さん、危ないッ!!」

「え?っ!?」

立ち上がっている撫子の顔面をめがけてテニスボールが飛んできた。どうやら金太郎の打ったボールがコントロールを失いこちらに飛んできたようだ。金太郎、財前に注意を促されたが、いまいち状況が掴めなかった撫子。
とっさの事で頭が追いついていかない。さっきまで別の事で脳内フル回転していたのだから、危ない→避けると言うことが出来なかった。反射神経を駆使したところで、目をギュッと閉じてその衝撃に耐える事しかできなかった。そして強い衝撃と共に撫子の意識はぷっつりと途絶えた。

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