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残されたメンツ。その中で財前が口を開いた。 どうして瞬間的に静かにしなければならなかったのか。どうしてそこまで撫子に気を使わなければならなかったのか。財前が白石から説明を受けていなかったため、疑問文しか思いつかなかったようだ。 「白石部長。…どういう事っすか?」 「そういや話しとらんかったな。俺もさっき幸村君から聞いたことなんやけどな、椿崎さん。酷い虐めにあったらしいんや。」 撫子の壮大な過去(嘘)を話し始める。 立海組はもう一度聞くことになった作り話に静かに肩を震わせることになった。 「そんな…過去が撫子さんにあったんや……。」 「ん?財前、いつの間に椿崎さんを名前で呼び始めたんや?」 「あ…。」 「そうだ財前さん、椿崎さんと友達になってあげてよ。」 幸村が名案だ、提案する。しかしそんなことは無駄な事。既に撫子と財前はお友達になっている。趣味が合った者同士、仲良くなるのはマッハである。 「友達やなんて当たり前やないっすか。」 「フフッ面白いね君。」 「…撫子さんの手伝い行ってきます。」 財前も部室を後にする。財前は撫子への点数稼ぎに勤しむことにした。 「なんかすまんな、あんな素っ気ない態度で…。」 「ううん、良いよ気にしてないから。財前さんも椿崎さんみたいにあまり人と関わらない子なんだね。」 「あぁ、…せやなぁ……。」 「もしかして椿崎さんみたいにトラウマがあったりするのかな?」 「や、無いで。あの性格は元々や。やから俺も出会ってすぐ友達になるなんて予想外や。」 「この練習試合組んで良かったね。」 幸村が白石に微笑む。 面白いものがたくさん見れたよ、ありがとう。 「あぁ…せやなぁ。」 「よし、ご飯も食べたし、親睦も少しは深まったかな?俺達もそろそろ試合始めようか。」 「おん。」 話がまとまりやっと午後の試合。撫子の脳内では掛け算の嵐が巻き起こるでしょう。 もともとの立海の情報。財前から与えられた四天宝寺のスペック。そして今後起こる対戦相手やダブルスペアと言う化学反応。これだけあれば無限の可能性を秘めているCPは作り放題。フラグ乱建てし放題である。 「さて、午前中に作ってぬるくなったボトルを流水に晒すか…。」 撫子はとりあえず、ドリンクを冷やし始めた。午前中に作って木陰にあったといえど、温くなっているドリンクを再び冷やす作業を開始した。 中のドリンクは飲めるのに、温いってだけで捨てるのはもったいない。だからもう一度冷やす。そこ、手抜きだなんて言わない。 「後はースコア付けと主審……は少年達にやってもらおう。」 何事も経験だ。 決して撫子自身が面倒くさい訳ではない。はず。 「撫子さん。」 財前が部室を出て来たようで話しかけてきた。 「…何?」 「何か手伝えること無いっすか?」 「………今は…無いわ。 ボトルはまだ冷やしてる途中だし、それよりも体調は大丈夫なのかしら?」 「…平気っすわ。午前中はすんませんでした。」 「体調良くなってよかったわね。午後は貴女にも仕事をしてもらうようになるけど、無理はしないでちょうだい。」 「はい……あ、これから練習試合が始まるようっすわ。撫子さん四天宝寺の試合見たいんでしたよね?見に行って下さい。」 「え…でも。ドリンクが出来てない。」 「そんなん今冷やしとるんやけん見守ることしかないですよね。ドリンク見つめるよりも試合見とった方がよっぽど有意義すわ。」 「……そうね。一理あるわ。 幸村君に許可取ってそうさせてもらいましょう。財前さんも一緒に見るかしら?」 「え!?ええっすよ!」 「先にベンチ行っててくれないかしら。」 財前は先にベンチへ。 撫子は幸村に見学の許可を取りに、許可は無事におりた。それから財前の待っているベンチへと移動した。 |
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