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「ねぇ、柳に椿崎さん。俺を置いて行くなんて水臭いじゃないか。俺も誘ってほしかったな。」 ここに誘われていなかった幸村が、話に無理矢理割り込んできた。 真の無敵は幸村である。 「いや、誘ったところで面白い話は別にないよ。ね?マスター?」 「ああ撫子さんの暴走しそうになったところを俺が止めただけの話だからな。」 「ふーん……でさ、そんなことはどうでもいいんだけど。椿崎さんの趣味…バレちゃってるよね?」 興味なさげに頷いたと思ったら次に言った言葉は、撫子にとってとても不吉な言葉だった。脈絡もなく、しかも疑問形ではなく断定系。何それ怖い。 「あ…あーそんなー。根拠のない事をよくもぬけぬけとー、やめてくれよー、人事を尽くしてるに決まってるのだよー。後は天命を待つだけなのだよ。ナノダヨー…。」 「よね?俺が間違ってるって言うの?」 二度目の質問。 先ほどより声のトーンが下がる。 「……はい…。」 「へー、あれだけ気をつけてっていったのに。」 「はい…。で!でも財前さんは仲間で!ぜんざいPさんだったからッ。」 「え?言い訳?」 「すみません。黙ります。」 「罰として練習試合が終わったら俺と試合してよ。ほら前言ってたでしょ?この前はあれこれ理由を付けてきて俺との試合を断ってきたからね。今回は、逃がさないよ。」 「…クッ。イケボっ…!」 イケボでささやかれても嫌なものは嫌だ、絶対嫌だ。 絶対幸村君のテニス、鬼畜そうだもん。その爽やかな笑みの下には魔王系男子の顔がある事、私は知ってんだぞ。魔王系男子のテニススタイルってなんだろう。もう恐怖する事しか出来ないじゃん。 「拒否権なんてあると思ってるの?」 「…慎んでその話、お請けいたします。」 そう答えるしかなかった。それ以外の答えを言うともっと怖い目に遇わされる気がして、私の本能が警笛を鳴らしていたんだ。 「フフッ…楽しみにしとくね?」 「………………あ、そう言えば私の壮大な過去って何?」 幸村の笑みで背筋を涼しくしながら打ちひしがれている撫子。 しかしずっとそうしていられないのが今の現状。撫子は先ほど気になっていた自分の壮大な過去について質問をした。後でね、と言われていたから、今聞いても大丈夫であろう。 「あぁ、それはね。簡単な話だよ。椿崎さんは昔虐めに遭ってて今は更正してるけど、ちょっと前までは話しかけて来なかったし、感情が薄かった。それで今も何がトラウマになってるか分かんないっていう過去。って感じで四天宝寺の人に言っておいた!」 グッと親指を立てる。 とてもいい笑顔だ。達成感に満ち溢れている。中身を知らなければ拝み倒したくなる様な笑みであった。 「言っておいた!…じゃねーよ!」 「だって椿崎さんが白石君の前でクールにしてるから悪いんだよ?」 「いや、クールしとけっつったの幸村君じゃん!なんて理不尽!!」 「まぁ、そう言うことだから午後も頑張ってね。応援だけは、してるから!」 幸村は踵を返し、部室へ。 「えー…もう、なんか引きこもりになりたい…。ハァ…ではマスター、私達も部室に戻りますかね?…………マスター?」 先程から柳が一言も話していない。 不思議に思って顔を見上げると、そこには開眼した柳が。 「怖ッ!!ちょ、マスターそれ怖いって。何?うさみちゃん?いきなりとかマジ止めよ。心臓にテラ悪ス。」 「撫子さん…ぜんざいPというのは本当か?」 どうやら柳は財前=ぜんざいPという事実に驚いていたようだった。 「え?あぁ、そうだよ?凄いよね!そんな大御所に会えるなんて!後はエクスタさんも!」 「まさか…エクスタさんとは白石蔵ノ介のことか!?」 「あ、そうそう白石君!人は見た目で判断しちゃぁいけねーよな!あんなイケメンが腐っているだなんて!ホントこんな、ねぇ!会えると思わなかった!」 「もう人生の運を使い果たしたのではないか?」 「いや、それを言うならマスターもでしょ。マスターもぜんざいPさんとホワイトストーンさん好きでしょ?」 「うん!」 「眩し!?マスターが、うん!って何?何なのこの気持ち、これを萌えというのね!」 |
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