青春Destroy | ナノ


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時計に目をやるとすでに12時を回っていた。どれだけ財前との会話に花が咲いていたのだろう。夢中になると時間の経過なんて気にしてないから余計である。

「で…椿崎。それどういう状況なんじゃ?」

仁王に言われ自分がどの様な状態にいるかを確認する。どういう状況なのかと聞かれたら、巻き込み転倒事故を起こしてしまっただけなのだけれど。おやおや、よく見ると訳も分からない人が見たら、誤解を招く様な体勢になっているではありませんか。
撫子は地面を背中に、仰向けに倒れておりそれに覆いかぶさるように財前が位置している。圧し掛かってしまわない様にと、両手を突き出して自信を支えている格好をしている。必然的にその両手の位置は撫子の肩の上、顔の横であった。
早い話、撫子が財前に押し倒されている体勢となっているだけの話である。

「あー………転んだだけです。財前さん、巻き込んで御免なさい。怪我はないかしら?」

「あ、はい。大丈夫です。」

「そう、それは良かった。では退いてくれるかしら?こんな不格好な姿、晒したくないの。」

「あ………すみません。」

なんだか、名残惜しいと訴えたい表情であった財前。とてもゆっくりとした動作で立ち上がる。それから覆いかぶさって居た財前がどけてからその後すぐ立ち上がる撫子。
やれやれ、驚いた。と一段落、気持ちを落ち着けているとなんだか扉の方、奥の人。その人からやたら熱い、強い視線を感じる。犯人は白石。口を押さえてこちらをガン見していた。

「…あの…白石君?」

「え、ちょっ。めっちゃ百合や…目の前に百合の花畑が見えるで!なんてエクスタシーな展開や!素敵すぎるやろ!財前、後で事の有様を全て吐けや!細かく言えや!そんでもってその時の心境をしっかり語れや!これは部長命令やッふううううう!」

「…………エクスタ?」

どうしたのこの人、なにこれ怖い。一瞬で鳥肌が立った。何なんだろう。この異常なテンションは…百合て…お前、…花畑ってお前…その発想……ん?なんでGLの隠語をすらっとこの人は言っているの?それに、エクスタシーって…私の知っている限りではホワイトストーンさんがよく使う言葉であるけれど…まさか、エクスタさんってこの人?いやいや、白石君は男だし、…いや、でも百合の需要はどちらかと言えば男子に多いけど、…でもエクスタさんのサイトはBLが多いしなぁ…なにより、こんなイケメンが腐男子なわけがない。

「サイト更新が今日から忙しゅうなるでぇ!せや、注意書もせなな!俺活動がBLやし!こんなに百合ネタでたぎったんは初めてや!まぁ、しょうがないわな!ネタが身近に有ったわけとちゃうし、あー!立海と練習試合組んでホンマよかったわ。一時は財前のせいでクッソ面倒臭いことになると思っとったけど!撫子と財前のCP。どっちが右や?左や?ホンマ決めかねるで。俺の脳内ホンマ大爆発!」

…はい、ホワイトストーンさん確定ですね。御馳走様です。毎日拝見させていただいています。萌えをありがとう。こんなイケメンからあんな素敵な小説が生み出されていたとなっちゃぁ、別の意味で興奮します。ありがとうございます。近々リンクの申請をさせていただこうと思います。片思いでいいです。相互なんて恐れ多い。

なんて撫子が同一人物であると確認し、思いにふけっていると、今度は大きな声が聞こえてきた。どうやら謙也が叫んだようである。しかもそれは穏やかなものではなかった。

「白石あっち行けぇ!キショいわ!!」

「あ…すまんな。」

白石は罵られたと言うのに、自分が悪かったと非を認め謝った。確かに公共の場で腐トークをすることはマナーに反しているからね!
そして、謙也はそれだけでは気は収まらなかった様で、愚痴を続けた。

「…ホンマ堪忍してぇな、俺がそういうん大っ嫌いな事言ったやん!!考える分は別に構わんけど口に出すとかホンマ止めてや。ホンマ、約束守れんとかやっぱりそう言う人種はクソやんな。言ってた通りやわ。」

あーん?この忍足謙也っちゅーやつは私を敵に回したな?私の前で、腐人達の人格を罵るとかやるじゃねぇか。確かにあれだけどさぁあああああああ、確かにテンション上げ過ぎてた白石君も悪いけれどさぁああああR-18ワードを言ったわけでもないし、具体的な妄想を発言したわけじゃないからさぁ!ちょっとぐらい許してあげてよぉおお!しかも口ぶりからして大嫌いって豪語してた感じなのかなぁああああ?忍足君よおぉおお。みんながみんなクソだっておもってんじゃねぇぇええぞ!誰の入れ知恵だぁああ?ぁああああん?お前がその気ならこっちだってやらかすぞ!やってやんよ!小便はすませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタふるえて命乞いする心の準備はOK?
よろしい、ならば戦争だ。

「撫子さん。少し水道場まで付いてきてくれないか?」

「あ゛?」

撫子が戦闘態勢に入りかけた瞬間、柳が興を削ぐように話しかけてきた。思わず挑発するような言葉を発してしまったが、開眼していた柳に畳み掛ける様に命令されたら意気消沈もいいとこ。撫子はすごすごと二人の後ろをついて行くことにした。

「来い、と言っている。」

「…はい。」

柳と撫子は水道場に移動。
他のメンバーは部室に入り各自昼食。さっきまでの空気とは一変。なにも無かったかのように、和気藹々とお弁当に舌鼓。

「撫子さん、怒りのオーラが隠せれていなかったぞ?」

どうやら柳が撫子を部室から連れ出した理由は撫子の怒りオーラを四天王寺に見せないためであった。ナイス判断。あのままいけば撫子は修羅と化してその場を更地にしていただろう。と言うのは誇張であるが、そこそこ大変なことになっていただろう。

「マスターよぉ…当たり前じゃないか、私の存在意義頭から否定だぞ?腹立つわぁ、あの野郎。チッ」

静かに舌打ち。

「しかし、BLだって苦手な人種だって居るだろう。撫子さんだって百合には抵抗あるんじゃないか?」

「いんや、全然。かわい子ちゃんがかわい子ちゃんとランデブーしてていいじゃん。むしろ癒されるわ。」

「………撫子さんは無敵か?
まぁいい。そういう人も居るのは確かだ。たまたま俺達の周りにそういう人種が居なかっただけだ。」

「…まぁ、そうだけどさ…あんなにはっきり声を大にして言わなくても良いじゃん!腐人にだって人権はあるんだぜ!?」

「それは…そうだな。」

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