青春Destroy | ナノ


110


「…えらいクールやなぁ椿崎さんは。」

「うん、そうだね。あれでもましになったんだよ?」

「どうい言うことや…?」

少し顔をしかめる幸村。思いだすことも苦行であると言う表情を浮かべる。勿論演技ではあるのだが、関わりの薄い白石がそれを見抜ける訳もなく、穏便な空気ではないと勘違いした白石が真面目に聞く。

「実はね、椿崎さん…昔…虐めにあっていたんだ。酷いものだったよ。詳しいことは省くけど、今は虐めも無くなったし平和になったんだけど…やっぱりそのショックからか、人と関わることを極端に避けてたし、当分の間感情がなかったし、向こうから話しかけてくることもなかったんだ。」(まぁ、嘘だけど。)

「そう…なんか…。」

「うん、だから椿崎さんと関わるときは気をつけてね?何が地雷か俺達も完璧に把握してないんだ。地雷を踏み抜いても第三者に被害が出るとかじゃないだけど…昔の椿崎さんに戻るところ…俺はもう見たくなんだ。」

「分かったわ…みんなにも言っとく。」

「ありがとう。」

魔王降臨満往時して。
撫子の迷惑なんて知ったことじゃないんですね、分かります。
撫子が居ない間に壮大な悲しい過去が作り上げられた瞬間だった。まぁ、あながち間違ってないよね。だって実際虐めは受けていたみたいだし。違うと言えばこうやって立派に逞しく腐女子している事だろう。


場面が変わって、水道場。
撫子はまた一人でドリンクを製作していく。結構な個数になるが、そこはもうプロレベル。いっそ超高校級のマネージャーと言う称号を送ってもいいかもしれない。

「よっ…し、完成。後は運ぶだけだが、…運ぶ物が無いんですよねこの学校。仕方ない…その辺の平員使うか。」

撫子は適当に部員を呼び持って行くのを手伝ってほしいと伝えた。部員は快く引き受け平員分を持って行ってくれた。

「ありがとう、少年。」

撫子も四天宝寺とレギュラーにとドリンクを持って行く。
すると丁度休憩に入ったのか集まり話し合っている四天宝寺メンバーを発見。何故だか、ただならぬ真剣さが伝わってきた。練習試合に対する意気込みが半端ないと言う事なのだろうか。

しかしそんな空気に入っていくほど度胸がなかったので撫子は先に立海メンバーにドリンクを配ることにした。立海側も何か話し合っていたようだが、撫子にとっては関係無い。四天宝寺ほど威圧感は無かった。

「ちわー!椿崎屋でーす。」

「ありがとう椿崎さん。」

「おい仁王…と言うより全員…何?何か私ヘマした?」

幸村以外は肩を震わせて、口に手を当て何かに対して笑いをこらえていた。
何故だろう。思い当たらない。メイクが崩れたか?いや、それともウィッグがずれてる?それとも時間差でこの大変身メイクがツボった?

「やーのぉ、椿崎…頑張るんじゃぞ。」

原因を考えていたが、仁王が余計意味不明な事を言い始めた。頑張れと。もう既に頑張っている最中なのだが。

「は?」

「椿崎さん、もの凄く面白いことになってるからね。期待してるよ。」

「何が?」

「撫子さんには壮大な過去が作られたということだ。」

「いや意味わかんねぇよ。」

「とりあえず四天宝寺にドリンクを配りに行くと良いよ。ネタばらしは後で教えてあげるよ。」

「……ハァ、分かったよ。」

教える気が幸村他、メンバーから感じられなかったので撫子は考えることを止めた。
時間はかかるが、最終的には答え合わせをしてくれるらしいからその時間まで耐えればいいだけ。

「そうだ撫子さん、午前中はマネにさせる仕事はもう無い。部室で俺達が呼びに行くまでゆっくりするといい。」

「マジか!?サンキュー。」

ドリンクをまとめて一番近くに居たジャッカルに手渡した。後は各自とって、配って、飲んじゃって、と撫子はブン投げしてから四天宝寺の所に向かう。先程まで威圧感満載だった四天宝寺に特攻だ。と気合を入れ直したがそれは無駄に終わってしまった。何故かと言うと、話は終わっていたようで四天宝寺からは普通の空気が漂っていたからである。

「四天宝寺、待たせたわね。財前さんが作ったものではないのだけれど、我慢して飲んでちょうだい。じゃ、配るわね。濃いめを頼んだ方は誰?」

たった一本の濃いめのドリンク。運動した後にそんなの飲んだら喉に引っかかるような気もするが、もしかしたら新陳代謝が異常によくて、濃いめでないと電解質のバランスが大変なことになる人物がいるのかもしれない。誰だ?体格の大きい千歳君と言う人か?

「あぁ、金ちゃんや。おーい金ちゃん、ドリンクや取りおいでぇ。」

「わーった!!」

トテチテターっと駆け寄ってくる金太郎、マジ天使。
どうやら予想とは真反対の金太郎が取りに来た。まだまだ甘いものが飲みたいお年頃なのだろう。しかし、よく見たら筋肉が大変なことになってるな。この子は数年たつと大変身するだろう。部長さんによる光源氏計画を遂行していてその過程がこれだったらもっと妄想が滾ると言うものだ。

「おっきい姉ちゃんありがとな!」

「…おっきい?」

「わ、アホ!」(地雷か?これ地雷なんか?)

白石の焦りは金太郎には通じなかったようで何事も無かったかのようにドリンクを飲み始める。
その笑顔…プライスレスッ!

「…すまんな、椿崎さん。」

「何が?……あぁ、全く気にしてないから。」

身長のことか…別に気にしてないし、て言うか今更すぎるし。むしろこの身長によって金ちゃんが小動物に見えるし。GJ俺の身長。

<< TOP >> 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -