青春Destroy | ナノ


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「これでこっちの自己紹介は済んだで、次はそっちや。」

「そうだが、一つ提案だ。お前達は俺達の名前を知っているだろう。こんな事で時間を潰すより試合に回した方が有意義ではないか?」

撫子の願いが柳に通じたらしく、柳がとても素敵な提案をしてくれた。

「ワイもそっちの方がええー!!」

「せやなぁ…あ、けどそっちのマネージャーの名前教えてもらってもええ?初めて見る顔や。」

「…構わない。」

柳がチラッと撫子の方にアイコンタクトを送る。

お、ついに私の出番ですな?

凛と背筋を伸ばし声をハスキーに、転校始めのほむらみたいに…。

「立海のマネージャーをしてる椿崎撫子よ。宜しくお願いします。」

「では、四天宝寺はあの部屋に荷物をおいてまたこのコートに集まってくれ。」

柳が概要を説明し、一同解散。撫子は疾風の如く部室に逃げ込んだ。部室に入りその瞬間壁や床をしきりに叩く。ドンドンドンドンと他人の迷惑なんて考えてられない。自分のこの滾る興奮を抑えることが大切なのである。

「もー、やっだー!!なんなの!?なんなの?四天宝寺ってなんなの!?私のストライクゾーンを的確に抉って抉って!ど直球ドーン!遠山君とかマジ天使。マジヤバいってあの子。あんなに純粋無垢そうな子…いや、天真爛漫子…初めて見たかもしれない。ウッハハー妄想しがいがあるぜ!!誰と掛け算してやろうか!やっぱり世話係っぽい部長さん?拝みたくなる雰囲気の石田君?それとも野生児の雰囲気が共通点の千歳君?
それよりやっぱり、あの財前さん!めっちゃ綺麗だったー…。スペック高杉。ホントにあんなクールビューティーさんって三次元に居るんだ…。しかも身長も高いし、目つきも涼しげ!とってもCoooooool!!あれ、私とデジャヴ?そんなッ撫子ったら烏滸がましいわよ!!デモォ…オ友達ニナリタイデースね!」

「……撫子さん、いつになく壊れてるな…。」

「!?」

声がして頭が動く最速のスピードで部室入口を見る。そこには柳を先頭に、メンバー達がのぞき込んでいた。

「一応聞いておきますが…いつから?」

「『ド直球ドーン』と言うあたりから。」

「オゥ、ジーザス。」

ほぼ始めからではないか。妄想断片も聞かれてしまったと言うのか。ああ、そうなのか。さよなら私の此処でのパンピ擬態の殻。これからは不思議っ子で行くよ。イタイ結果になりそうだけれど。

「まぁ、ここの中では壊れていいと言ったのは確かだからな。続けてくれ。」

「誰が続けるか。」

コレ以上、失態をパンピ男子に見せる訳ねぇだろ。

「おや?幸村君、四天宝寺の方々がコートに集まりましたよ。」

「あぁ、ありがとう。みんなは行こう。椿崎さんは前作ったみたいにボトルの準備お願いしても良いかな?」

「御前を離れず、詔命に背かず、忠誠を誓うと誓約申し上げる!」

「じゃ、後から向こうのマネージャーも手伝いに行かせるから。」

「御意!」

幸村を筆頭に撫子から体を回転させメンバー全員がコートまで移動した。
再び一人になった撫子。もう一度気合を入れ直す。
キャライメージはほむら。表情は崩さず、要注意人物は女子マネージャーの財前さん。それから赤也君に敵対心を持っているであろう二年生。この二人にだけは気を付けなければ。
頭の中を整理して大きく深呼吸。

「っふー…耐えれるのか?俺…。暴走したら幸村君に………うん考えないことにしよう。」

部室を出て水道場まで足を進めた。
そこで気がつく。立海生の人数分のボトルしかないと。四天宝寺用の予備のボトルがないと、

「あっちゃー今日も平員居たよなー。52人…誰か休み……居なかったよなー。優秀だなここ、うちの学校だったら何人もさぼってるのに…。」

氷帝の200人を誇るテニス部は全員出席なんて夢のまた夢。入っているだけの幽霊部員だっているのが現実。氷帝テニス部は入っているだけでもそれなりの価値がある扱いになるらしい。
撫子はとりあえず立海用のボトルを作りながら対策を考えることにした。

あ、四天宝寺の方々からボトルを回収すればいいんだ。
何て言う盲点、テヘペロ。

と何を思ったのかブリッ子のように頭をコツンと叩いた。

「……何を、やっとるんですか?」

背後から声がする。イヤな予感しかしない。
ゆっくりと、ゆっくりと本当にゆっくりと、見たら地獄しかないと予想がついているのに振り向かないといけない事態。ただの拷問である。ゆっくりと体を回転させ声を発した主の姿を確認しようと振り返る。
その間、頭の上に手、なう。

「…財前さん、じゃない……。」

声の主は少し眉の間にしわが寄っている財前だった。
一番見られたくない相手に見られてしまった。なにこれチクられるの?立海のマネージャーはクールキャラを無理やり作っていたイタイ子だって言いふらされるの?待って、お願い。お願いだから待って。幸村君の耳に入れない様にお願いしたい。私はまだ生きたいのか。

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