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鏡の中にはユルっとしたフワっとしたロングヘアな髪型をした、少々垂れ目の姫カワ系の人物が居た。これをメイクアップだけでしたと言うのか。いやいや、それにしては大変身し過ぎである。 「目つきの悪さが緩和されすぎてキモい。私整形でもした?」 「メイクだけぜよ。」 「おいおい、仁王…いやペテンさんよ。何お前、性別男やってんだよ。お前実は女じゃないのか?あーん?」 不良が絡むように仁王に絡む。 女の撫子には持っていない技術を男の仁王が持っていると言う事でとてもいきなり嫉妬心である。 「そんな訳なか。」 「このメイクスキルで男っていうのがもったない…。」 まじまじともう一度鏡を覗く。何度見ても大変身しすぎている撫子自身の顔があるだけである。メイクの力は偉大だと言うことが改めて分かった。 「ねぇ、椿崎さん。こっち向いてよ。」 「ん?」 撫子は振り返り幸村を見る。そうすると必然的に立海メンバーに顔をお披露目する事態となった。 どんな反応が撫子返ってくるだろうとはwktkしていたわけだが、反応が無くメンバー絶句状態であった。 「いや、あんたらさっきメイク中の顔見たでしょ。」 「髪型が…さ。なぁジャッカル。」 「あ、あぁ。」 「へー…。」 そんなにも違うのか。確かにコスをしている時でもウィッグを被ると大変身するからね。そうか、そんなにもパンピは驚くものか………フッ。 撫子がとても悪い顔をした。何を企んでいると言うのだ。 悪戯大好きな仁王に耳打ちをする。 「ねぇ、仁王。この中で一番単純な人って誰?」 「ほー…そうじゃのー赤也か、真田ぜよ。」 仁王も始めこそ何を言っているんだ?と疑問に感じた様だが、何かを察したのか撫子と同じようなあくどい顔をして二人の名前をあげた。 その名前を聞いて、撫子は仁王から視線を移し、真田と赤也を見つめる。 「赤也君と真田君、ちょっと一歩前に出てくれるかな?」 二人は頭に?マークを出しながらも指示に従った。 撫子はその二人の前まで歩いて行き座り込む。男子には出来ないあの座り方だ。そして両手を両足の間に入れ床に手をつく、猫背となるが不格好なものではなく計算されたふつくしい座り方である。少し首を傾げ、顎を引き、上目遣いとなり、二人を見つめる。見つめられた二人はドキッとして顔を赤らめた。その反応を見て撫子は満足げに呟いた。 「セクシー…ビーンム(笑)」 ピロリーン―― 「たたた、たたるんどる!!」 「な!?撫子さん!?」 二人の慌てようが物凄く面白かった。一瞬でも見惚れた二人の負けである。 「アハハハハ!!最っ高!素の私がやってもガン飛ばしてる風にしか見えないのに。仁王、後でこのメイクの仕方教えてよ。」 「いいぜよ。」 「つか今、誰が写メ撮った?今すぐ消せ。」 セクシービーム(笑)のポーズを誰かが写メった音がした。 流石にあんなものを第三者に見せられると思うとたまったもんじゃい。 「え?何?俺に命令?」 「ゆゆゆ幸村様でありましたか!?できれば消していただきたく…。」 撮ったやつは地獄に堕ちろ、と言った高圧的な態度で臨んでいたが幸村が撮った人物だと知って撫子は態度を変換。下でに出てみた。 「従うと思う?」 「ですよねー…。」 しかし無駄に終わった。予想はしてた。 「そうだよ、だって面白い写真を撮ってくれるなら貸してくれるって滝君が言ってたもん。」 「ああああああ、そのデータは滝様に行くのですね!?」 「うん、もう送っちゃったー。」 送信完了画面を撫子に見せつける幸村。 「アハハハハホントだー…ハァ。」 「失礼します。部長、四天宝寺のバスが到着しました。」 撫子が落胆していると部室の扉が開いて部員が報告に来た。 「あぁ、ありがとう。…さぁ、みんな行こうか。」 「「「「「イエッサー!!」」」」」 気合十分。勿論撫子も気合をとりあえず入れている訳であるが、私物が机の上にあることは何となく避けたい。中には見られたくないものが鎮座している訳で。例えば時間つぶし様にBL小説だとか、ネタ帳だとか。色々あれなものが入っているiPodがある訳であって。 とりあえず、机の上ではなく、隅っこでもいいんだ。目立たないところに置かせてくれ。 「あああッちょっと待って私鞄しまえてないやぁああああ!!iPodがッ。」 鞄はなんとか隅に置くことができたが、乱暴に扱ったために危険物体iPodが鞄の中から出てしまった。 「椿崎さん、行くよ?待たせちゃ悪いじゃないか。」 「ぐ…っイ、イエッサー!!」 机の上に落ちてしまったiPodは後から回収しよう。 |
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