青春Destroy | ナノ


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「撫子さんが外に出て着替えてどうする。撫子さんは女子だぞ。」

「…うわーっ久しぶりに女子扱いされた気がする…。」

「どんな扱い受けてるんだ…。」

「…聞くな、まぁ私もあいつ等の扱いは酷いことをしてるからドローだけど…。」

妄想したり妄想したり妄想したり妄想したりね。
これだけ聞くと、氷帝がどんなに最低な扱いをしているのだ、と思われてしまうがそうではない。もう、色々と撫子の扱いに対して麻痺しているだけなのである。
まず、始めの頃は撫子もマネージャー室で着替えたりしていたのだ。しかし、時間が経つにつれてレギュラーメンバーとも結構話をし始めた。話をすることは結構限られた時間となってしまうのである。部活の始まる前か、部活が終わった後。結構それ位しか話す時間が無いのである。だからだんだんとレギュラー専用部室に入り浸る様になり、荷物を置くようになり、そこで着替える様になってしまっていた。勿論、撫子の意思だけではそれは叶わないモノであった。特に数名は嫌がった。だからこそ、撫子は譲歩案を提示した。「制服の下にジャージを着たまま過ごすから、制服と言う殻を脱ぐだけだから」と言った。事実、下着だとか、そう言ったセクスィなモノは見せず着替えることが可能なのだと。そう言う事なら、ととても渋々納得させられた。絆されたともいう。

そしてここで着替えてはいけないと言う事で、外に出ると言う撫子もどうかと思うが、田舎の学校では、部活時、女子でも外で着替えることは日常だったのである。そんな風景を見ていた撫子だったからとった行動である。

「俺達が外に出る。着替えたら呼んでくれ。」

「イエッサー。」

ぞろぞろと外に出て行くメンバー。
撫子も着替えるために紙袋からユニフォームを取り出す。

「わぁ、きいろぉい!いつも青いのばっか見てたからなんか新鮮だなぁ。それにしても仁王のか…入んなかったらどうしよう!?私がとてもふくよかだと思われてしまう。いやいや、流石に入るって、自分を信じろ…俺!!そして着たら絶対に仁王の隣に並ばないでおこう。並んだら袖から見える二の腕の太さが簡単に比較されるからな…。」

独り言を言いながらパンピコス…ではなく、今着ている服を脱いでジャージに着替える。それからハーパンを履こうと、紙袋の中に手を突っ込んだ。
取り出して、それをパッと広げてみた。しかしそれはハーパンではなかった。

「ななっなんじゃこりゃー!?」

姿を見せたのはハーパンでなくスコート。

……なんでスコートが入ってんの!?ズボンは?ズボンは無いの?なんでスコートってこんなに短いの!?ぜひ仁王や赤也君、ブン太君あたりに履いてほしーなぁこの野郎!!
あ!?確かこれ、仁王のだって言ってた!もしかして仁王にこんな趣味が!?女装趣味が!?なんと言う事!?

問いただすためにドア越しで仁王を呼ぶ。

「ちょっとどう言うことさぁ!?仁王!アンタにこんな趣味があったなんて!確かにルカ姐さんのコスを半無理矢理やらせたけど!こんな性癖に…ッ。私にはそんな趣味は無いからお前の履いてるハーパンを寄越せ!そしてお前がスコートを履きやがれ!!」

「ピヨッ!?濡れ衣じゃ!!上の服だけが俺んじゃ!スコートは女テニからのレンタルじゃ!!」

「はっハァ!?なんでわざわざ面倒くさい事してんだよ!」

「言ってなかったか?『いつもスコート履いててきれいな足が拝めれるんだぜ!!』と赤也は言う。」

突然の濡れ衣にアウアウしている仁王の代わりに冷静に居る柳が答えた。

「聞ぃいいいいてぬぇえええええよあきゃやぁあ!!」

「ヒッひゃい!」

「あんたって子は…。」

「すみませんっす…ホント、反省してます。」

声だけ聴いただけだが、とても反省している様子が伺える。激怒ぷんぷん丸であった撫子であったが、赤也の弱々しい声を聞いて毒気が抜かれた。

「ハァァ…仕方ない、履いてあげよう。myエンジェル赤也の為に。」

「あざーっす!!」

撫子は着替え、スコートという似合う似合わないが激しい物を履くことになった。

「着替えたよー。」

撫子の呼びかけでメンバーが入ってくる。

「俺様の美脚に酔いな。」

「流石撫子さんだ。美脚だな。GJだ赤也。」
「えへへぇ、柳先輩に褒められちった。」
「立海コス…ここに一眼レフが無いことが悔やまれますね。」

何故肯定的な意見しかないのだ。ここで撫子が求めているのは「ふざけんな」と言った罵倒を期待していたのに。冷たい反応を欲していたと言うのに。ツッコミを求めていたと言うのに。ボケ殺しはキツイ。

「…私の欲しい反応が無い、だと!?そういや鏡無いの?私まだ自分の顔見れてないんだけど…。」

「男しか使わん部屋に鏡があると思うんじゃなか。」

「え?うちのレギュラー室には無駄にデカい全身鏡があるぜ?」

「それは跡部が居るからだろう。」

「あ、なんか納得。」

「椿崎、ヅラ被せちゃるけん、こっち来んしゃい。」

仁王のもとに移動。メンバーに背を向けウィッグが撫子の頭上へ。それから整われる。
そこでふと気付く。

「おぅ、頼む。あ…ってことは、私ウィッグネット被ったままのあのこっ恥ずかしい姿を今の今まで晒していたと言うのか…鬱だ死のう。」

「撫子さん早まるな。」

鬱々としていた撫子を止めにかかる柳。
その間ゆるっとしたふわっとした髪形を再現するために仁王がウィッグをいじっている。

「よし、完成ぜよ!」

仁王は達成感に満ちあふれた。久々に見た仁王のドヤ顔な気がする。

「出来た?仁王のドヤ顔からして大変身したと予想される!私も見たい!!」

なんだか、他人に変身させられると言った感覚が新鮮過ぎてテンションが静かに上がっていたのである。撫子は興奮気味に鏡を所望した。すると柳生が紳士の七つ道具、鏡を取り出して手渡して来てくれた。先程の鏡の再登場である。

「柳生君、ありがとう。」

撫子は鏡をのぞき込む。

「誰だ、コイツ。」

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