青春Destroy | ナノ


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「…で、私は生け贄になったと。」

「撫子さん、もうちわけない…こちらの学校内でも当てはまる人を探したのだが…見つからなくてな。撫子さんならメイク一つで変わるし、仕事も早い。演技も出来る。さらには氷帝でお姉様と呼ばれているらしいではないか。最強最適な人材だった。」

誇るように言い放つ。

「何故お姉様呼びを知っている!?マスターに報告した覚えはないぞ!」

「いや、過去にヅイッターで言っていたぞ?『お姉様と慕ってくれる会長ちゃんを始めとする子猫ちゃんprpr』とな。その後すぐに削除したみたいだがな。」

「くッあのヅイートを見られていたかッ、頑張れば特定できるからヤバいと思ってすぐ消したのにッ!マスター、恐ろし子!」

「撫子さん…ごめんなさいっす…。」

赤也が初めて口を開いた。柳の後ろから撫子の様子を伺う様に、上目遣いでこっちらを見ている。とても可愛らしいアングルだ。

「俺からも頼む。」

「マスター……言い方がダメ、もっと取引先に言うみたいに言って。」

「…一日だけ、立海のマネージャーになってください。」

「っしゃー!!流石マスター分かってるぅ!今のでテンションMAXになったから何でも任せんしゃい!!」

「椿崎…それ俺の口調じゃ。」

「良いじゃん、別に減るもんじゃないし。」

「あぁ、そうだ。撫子さん、表情をころころと変えることは止めていただきたい。」

「な!?私のアイデンティティーの消失!コロコロ表情を変えるのは、人との距離を縮めるための最強のウエポン!!なに!?ぼっちになれと!?」

「いや、赤也がクールビューティーな人物だと伝えたために、表情豊かなのはどうかと思うんだ。しかし撫子さん面倒くさい事の先には楽園が待っているぞ?」

なんだか悪い笑みを柳が浮かべている。どうやら、とても面白い事を伝えてくれるらしい。これは期待だ。ちょっと不貞腐れていた撫子だったが、柳の方へ耳を傾けた。

「……何だい?」

「これから来る四天宝寺も俺達のように高クォリティーの奴らだ。さらに黒属性は居ない。」

「何!?と言う事は!」

「かけ算のし放題、やり放題だ。奴らの前でにやけなかったらいい。にやけそうになったらここに逃げ込めばいい。」

そう考えたらお得でしかない。黒属性の居ない学校で納得いくまで妄想が出来る。
表情が出せないのなんて、今まで幾度となくあったではないか。特に先生の目の前であるとどんなに悪態をつきたくても笑顔で通してきた!偽るのなんてお茶の子さいさいである。
無表情を突き通すなんて楽勝。今回、にやけ顔を抑えることは少々きついが、そんなのは訓練だと思えばどうってことない。

「キャーッ!!やる気満々メーターマックスDEATH★」

イスから立ち上がろうとするが柳生に阻まれる。

「椿崎さん今立たないで下さい。まだ終わってません。」

「あ…実にさーせん。」

メイクが終わるまでしばらくの沈黙。
幸村は撫子をガン見。
メイク中の顔を見られるのは少し抵抗があるが、文句を言えるほど度胸は無い。言ったとしても却下されるのがオチである。
目を閉じて、開けて、目を伏せて、上を向いて、やっぱり目を重点的に加工される。予想はついていたが、刺激され過ぎて涙でそう。色んな意味で。

「メイクは終了じゃ。後はヅラを…。の前に、これに着替えてくれんかの?」

被せて、完成。ではあるが、被せる前に仁王が紙袋を差し出した。

「ん?分かったけど…何?」

撫子は疑問に思いながらも受け取り、中身を見る。
その中には辛子色の伝統ある立海のレギュラー服が入っていた。

「レギュラージャージ、だと!?これを着てもいいの!?私が!」

どの学校もレギュラーしか着れないとされているレギュラージャージ。
これを着てもいいと言う事はどんなに名誉な事か。しかも立海。二連覇している王者立海大のジャージである。
撫子は氷帝の生徒だとしても、立海はなんだか身内の学校な気がしているのである。これは関わりのある皆には内緒だよ!

「今日1日だけは椿崎さんも俺達の仲間だ。だからその証明にね。大きさは大丈夫だと思うよ。仁王だから君達身長はだいたい一緒だしね。仁王臭いかもだけど我慢してね?」

「なんちゅーいいぐさじゃ…。」

「う、わー。なんか感動して泣きそう…。」

「大袈裟だなぁ。どうせ氷帝でもレギュラージャージ着てんだろぃ?」

「…違うのですよ、丸井君。
私、氷帝でマネージャーしてるけど…お揃いのジャージじゃないのですよ…。」

そうなんです。撫子は氷帝のレギュラージャージなんて着たこと無いのです。仕事をする時は自前の物を使っているのです。体育の時に着ているジャージか、家で着ているジャージか。部屋着にしていたジャージが枯渇してしまむらにジャージを求めに走ったのは記憶に新しい。

「それはそれは…。」

当たり前に着ていると予想していたブン太は、それ以上なんと声を掛けていいのか分からなくなり、相槌を打つだけとなってしまった。

「もう立海に転校してやろうかなぁ…。」

「それは滝君が許さないんじゃないかなぁ?俺は大歓迎だけどね。」

「あー…そだね。よし、着替えるか。」

撫子はその場で自分の服に手をかけた。

「何してるんすか!?」

「あ、ごめん。つい…そうだ。今日は制服じゃなかったんだ。いつもの技が使えないんだったな。抜かった。ちょっと待ってて、着替えてくるから。」

だったらと、外に出て着替えようとする。

「ちょっ撫子さん、どこ行くんすか!?」

「着替えようと…。」

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