青春Destroy | ナノ


092


「撫子さん俺のメイクの続きしてよ。」

いつの間にかリョーマにメイクをしている手が止まっていたようだ。

「あぁ、ごめん。もうちょっとだからね。」

再びメイクに集中し始めた。

「…………。」

暇になった不二は写真を撮すことも出来ないためメイク中のリョーマの様子を見ることにした。

「…ねぇ撫子さん、ここにこの色持って行ったらどう?」

「おぉ!いいね。仙人掌さんメイクとか経験あるの?」

「無いよ、けど姉さんがしてるところはよく見るしね。」

「そっか…よし、メイク完了。仙人掌さんそれ貸して?」

「はい。」

不二から撫子に物が渡る。
物がリョーマの頭から通し胸元へ。

「かっ、かわかわか可愛いぃ!」

仰け反りながら叫ぶ。
その物とは胸元で可愛らしさを主張するリボンである。

「なんなんだよ!その辺の女子より可愛いじゃないの!いやでも私の子猫ちゃん達のが……いややっぱカッコ可愛い!凛としたオーラが君にはある!!」

「あの…撫子さん、俺どうなってるんすか?」

「んーふーふー…びっくりするぜぇ。」

鏡を取り出しリョーマに手渡す。

「……………ルキア?」

「そう、ルキア!私が一護してるからリョーマはルキアであわせだぜ!」

「越前似合ってるよ。まさかここまで化けるとはね。」

「仙人掌さーんメイクの力なめちゃあかんぜ?よし、では撮影会続けましょー。」

「ちょっ、待って下さいよ。俺女装だなんて聞いてないっす!」

撫子と一緒にあわせができるならと喜んでいたリョーマだが女装となるとやはり羞恥心の方が先に出てしまうようだ。

「リョーマ…。」

一護の顔で悲しそうな顔をする。

「撫子さん、一護でそんな表情しないで、キャラ崩壊激しいから。でも記念に撮っとこ。」

「リョーマ…本当にダメ?私せっかく一護とルキアの合わせが出来ると思ったのに…。」

シュンと顔を下に向ける。

「ほら越前、やりなよ。撫子さんに悲しい思いをさせるの?ファンなのに?」

不二の精神的攻撃が始まった。

「それは…。」

「せっかく撫子さんが髪型やメイクをきちんとしてくれたのにね、そもそも越前が撫子さんと離れたくないって言ったから撫子さんがアイデアを出してくれたんだよ?」

「でも…俺女装なんて…。」

「越前の女装の定義はメイクだけでも言うのかな?あーぁ、矛盾してるようだけど男らしくないなぁ。」

越前が少したじろぐ。

「越前、君が撫子さんのファンだっていうなら撫子さんがKAITOのコスをしてるとき一緒に写ってたルカ、誰だと思う?ペテンさんだよ。ペテンさんって男性レイヤーでしょ?しかもこの人は衣装まで女性物だよ?ねぇ撫子さん、ペテンさんはこの時嫌がった?」

不二は撫子に話をふる。
撫子は下を向いたまま首を横に振る。

「ほら越前も撫子さんに良いこと見せたいならルキアぐらい二つ返事でやりなよ。」

ぐっ、とリョーマは言葉を飲む。
自分が離れたくないって言ったのは事実だし、始め乗り気だったのも事実だ。何よりも撫子とあわせをしていたペテンと言う存在がリョーマを駆り立てる。
ペテンというやつに出来て自分には出来ないのか、そんなのは認めない。

とリョーマは意を決し、
やります。
と答えた。

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