K(伏見)

「とんだ再会だな」
そう言ったのは中学校のクラスメイトだった。
青くて格好良い、コスプレのような衣装を着ている彼は記憶の中とあまり変わりない。卒業以来に見たが、ぱっと見て誰か分かったくらいなのだから。
「――――?!」
伏見くん、と呼ぼうとしたが声が出なかった。さっきまでの出来事で驚いて声にならないだけかもしれない。
そう思って力を込めてみても、口の間から漏れるのはヒゥヒゥと頼りない風の音だけ。
「さっきお前を襲ったのは声を奪う異能者だ」
(声を奪、われた?)
意味が分からないと言う代わりに首を傾げれば彼にもそれが伝わったようだ。けれど、だからといって説明をしてくれるかんじではない。
「とりあえず病院で看てもらうから着いてこい」
頷いて、立ち上がる。突き飛ばされたときに擦りむいた膝とぶつけた肩は痛むけれど、どこか折れていることはなさそうなのとりあえず安心。
誘導されるままに青い服を着た人達の間を抜けると大きなワゴン車に乗せられた。私の隣に伏見くんが座る。
そこまで親しかったわけでもないから再会を喜ぶ雰囲気でもない。それでも、聞きたいことは沢山あるのに。
今の状況、私の声のこと、彼の仕事のこと。それに、私のことよく覚えてたねって笑いながら言ってみたい。
窓のない車の中で揺られながら、気付かれないようにその横顔を盗み見た。もとから大人びた人だとは思っていたが、仕事中の姿ということもあって同級生には全く見えなかった。