猿比古と(K小咄)

※夢主は猿比古美咲と元同じクラスで一般人

「あれ、伏見くんだ」
緊張感の全く感じられない声音と呼び方に、俺の周囲が身体を強ばらせたのが分かった。
友人と呼ぶには縁の薄いこいつは、何かと俺を気遣い顔を見るたびに声をかけてくる。正直鬱陶しい。
「ンだよ……こっちは仕事中だぞ」
舌打ちが自然と出る。しかし相手はそんな態度にも馴れているので今更俺の顔色を伺うこともない。
「うん、お疲れ様。久しぶりに会えたから声かけとこうかなって思っただけ」
わざわざ話し掛けんな、と言おうとして止めた。何度言ってもこいつは聞きはしない。かといって人の話を聞かない奴ではないというのに。
後ろから感じるしせんが不快だ。こいつらの言いたいことは分かっている。俺にこんな仲の良い(ように見えるのだろう)知り合いがいることに驚いているに違いない。
「あっそ……それだけかよ」
「あ、うん!」
脱力。いや、もうそれも慣れた。