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彷徨う子羊


その日から私は赤司君とお友達になった。テツヤみたいにすぐではないけど、赤司君も私の考えを分かってくれる貴重な人物だ。それにどうやら青峰はあまり赤司君が得意ではないみたいで、本当にちょっかいを出してこなくなった。赤司様さまだ。

「灯、テツヤを知らないか?」
「図書館に行った。もう帰ってくるよ」
「そうか」

私の隣からイスを引っ張り、赤司君が腰を下ろした。また部活の話かな。

「テツくーん!」

廊下の方から聞こえてきた大きな声。テツ君って、もしかして、と思いそちらに目を向けると桃色の髪の可愛らしい女の子が、テツヤの腕にくっついていた。

「…あれ、」
「ん?」

赤司君も私と同じように廊下へ目を向けると、桃井か、と呟いた。

「桃井、さん?」
「ああ。ウチのマネージャーだ。どうやら最近、テツヤに惚れたらしい」

テツヤに惚れた、という事は彼女とかではないんだ。良かった。…うん?

「どうした灯?」
「何でもない」

―――良かったって、何で?

「あれ、赤司君、どうしたんですか?」
「今日の部活の事でちょっとね」
「あ、それなら私が今話したよ!ね、テツ君!」

本当に可愛いらしい女の子だ。見るからに恋する乙女ってやつで、すごく分かりやすい。私が彼女のようにニコニコと可愛らしい笑顔を振りまけたら、テツヤはきっとびっくりするだろうな。多分、無理だけど。

「そうですね、聞きました。それよりそろそろ腕を離してくれませんか?」
「えー!やだー!」

桃井さんはテツヤの言葉に、今度はプクっと頬を膨らませた。私と違って、表情がコロコロ変わる子だ。

「桃井、迷惑してるのが分かるだろう」
「えー、テツ君優しいからそんな事思わないよね?」
「正直に言えば、少し困っています」
「ええー、…分かったぁ」

テツヤも私みたいなのより、桃井さんみたいな可愛い女の子が好きなんだろうな。そう思ったら、なぜか胸の奥が痛んだ気がした。