その日、まだまだ部活があったはずのテツヤは私に少し待っているように言うと、帰り支度をして私の元に戻ってきた。怖がる私に寄り添って、テツヤは私を家まで送ってくれたのだ。この間といい、今回といい、不思議な事にテツヤはいつも私のピンチに駆けつけてくれる。まるでスーパーマンみたいな存在だ。
「よう、テツ」
「!」
「・・・っ、」
あれからまだ2日。会わないようにとしてきたのに、移動教室の場所へ向かっている途中、聞きたくない声が耳に入った。咄嗟の事にヤツを視界に入れてしまい、もちろん私は後悔した。
「んな怯えんなよ、もう手ェ出さねェし」
テツヤの背中に隠れつつ、青峰をキッと睨む。
「……それ、」
そして、ガーゼが貼られた青峰の頬に気付いた。
「あー?もうだいぶ腫れは引いたけどな。いきなり殴られるなんて予想外だったわ。しかも思いっきりやったろ」
「自業自得です、行きますよ灯」
テツヤが殴ったの?……私の、ために?
「テツヤ、」
「はい」
「部活内でケンカ、いいの…?」
「灯は心配しなくて大丈夫ですよ」
本当に?、と聞こうとすると私達の前に誰かが立ちふさがった。
「なるほど、やはりそういう事か」
「……赤司君」
「え?」
どうやらその人が、時々耳にする赤司君らしい。確かに髪の毛が赤い。…ていうか彼、見た事あるな。目立つ髪色に整った容姿だし。
「普段温厚なテツヤがいきなり青峰を殴るから何かと思えば、やっぱり幼馴染みが絡んでいたんだね」
「……察しが良くて助かります」
「あの、」
「初めまして、佐藤さん。僕が男子バスケ部で主将をしている赤司征十郎だ」
「……私の、名前」
「テツヤの幼馴染みだから知っているさ、青峰が君に何かしたようですまないね。僕からもお詫びするよ」
「……いえ、」
顎に手を当てて、赤司君が考え込むような動作をする。いきなりなんだろう。
「確かに君は分かりにくいね。表情もあまりないし、口数も少ない」
「……、」
「赤司君」
「ただ、テツヤの言うように、よく見れば分かるかもしれない。今も少し眉間にシワを寄せているね、どうやら不快そうだ」
「……!」
すごい、この人。
「…今度はなんだい?」
「灯は感激しています」
「その顔でか?」
「……」
「今拗ねました」
「それは何となく分かったよ」
「……!」
やっぱりすごいよ赤司君とやら!
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