02:嘘をつくのは誰の為か




はっきり言おう。正直、原作の内容をそれほど覚えていない。なんたってあれを読んだのはもう15年ほど前の話だ。前世の記憶がよみがえったといっても、しっかりと思い出せるものは数少ない。そんな曖昧な記憶で、当時読んでいた漫画の内容など詳しく覚えているわけがない。精々キャラの判別ができるくらいだ。あの時は結構ハマってだったんだけどな…。記憶なんてそんなものか。

「ケガの調子はどーだ?」
「!?あ、うん…。大丈夫、だよ。なんとか」

数分前まで母が座っていたベッド脇の椅子にひょいっと飛び乗り、私に話しかけてきた赤ん坊…。もといリボーン、くん。今日が初対面にも関わらず すごいナチュラルに話しかけてきたものだから、驚いてびくりと肩を揺らしてしまった。
こんな可愛らしい外見をしているが 沢田の家庭教師にして超一流の殺し屋、目的のためならわりと手段を択ばない結構やばい奴。現状 一番関わりたくないキャラぶっちぎりの一位である。

「入院したって聞いたときは マジで焦ったぜ…。わりぃな、俺たちの遊びに巻き込んじまったみたいで」
「…気にしないで。この通り、そこまで重症ってわけじゃないから」

遊びっておまっ、それもはや天然ってレベルじゃなくない??君がそういうタイプだっていうことは前々から知っていたけれども。いろんな意味で凄い存在だよ山本武。
とりあえず、お詫びにと持ってきてくれたお寿司はありがたくいただいた。1人じゃ食べきれそうにないので、あとでお母さんと食べよう。

「ったく、てめーのせいで こいつらをやり損ねたじゃねーか」
「………。」

お前はいったい、何をしに来たんだ?
なぜか文句を垂れてくる銀髪の不良、獄寺隼人に無言で目を合わせれば、彼はチッと舌打ちをこぼした。…なんだこいつ。まじでなんだこいつ?怒りたいのはこっちのほうなんですけど?嫌なら早く帰ってほしいんですけど?ケガの原因がお前の愛用するダイナマイトだっていうこと、こっちはちゃんと確認してるんだからな。
こうして直接関わったのは初めてだが、リアルでの第一印象は最悪だ。お前が果てろ。

「山田!!ほんっとうにごめん!!こんなひどいケガまでさせちゃって…。ってリボーン!!元はといえば、お前が山本とニーナに変な試験させ、いったぁああ!!」
「……。沢田もボロボロみたいだけど、大丈夫?」

突然の理不尽な暴力にその場に倒れこむ貧弱そうな少年。彼がこの、かつて私が漫画として読んでいた世界の主人公…、沢田綱吉。
そういえば何度かパンツイチ姿で出歩く彼のことを見かけたが、思えばあれは死ぬ気になったあとだったのか。「え、そういう趣味があったの?」と声をかけたのは申し訳なかったかもしれない。もちろん本人には全力で否定されたが。

そんな彼らが、私の知る物語の中心人物たち。



…じゃあ、

「花子ちゃん、本当に大丈夫?すごいケガだよ…?」

心配そうにこちらをみつめる この少女は?

彼女はいったい、だれ―?


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