01:忘却なる救いは途絶えた




目を覚ますと、きれいな女の人が 私を見るなり泣きついてきた。うっ、衝撃で全身が痛い。誰かと思えばそれは母だった。今世での私のお母さん。一瞬それに戸惑いはしたけれど、私はこの母がずっと、私に愛情を注いでいてくれたこと知っている。そして今も、心から私を心配していたであろうことも。私はそのことが、むず痒いけど嬉しくて、前世を思い出した今でも この人をお母さんだと思えることにホッとした。

聞けば私は、学校で何らかの事件に巻き込まれた末、頭を強く打ち、なんと2日ほど気を失っていたらしい。しかし、検査をしても 脳や命に別状はなく、ただ眠っているだけの状態が長く続いていたため、医者も両親も頭を抱えていたんだとか。起きてからいろいろとわけのわからない部屋にまわされたのはそのためか。

「とはいえ、全身の打撲に左腕の骨折。完治には時間もかかりますし、前頭部の強打も後々異常がみつかるという場合もありますので、あと1週間程は検査入院です」

この度は災難でしたね、と医者にそう告げられ、包帯でグルグル巻きになった自分の頭と腕を確認する。いや、あんなのに巻き込まれてこの程度のケガで済んだのだから、むしろラッキーだと思う。母もそれらを聞いて少し安心したのか、一度 必要なものを取りに家へ戻ると部屋を出て行った。それが数分前の出来事。


そして現在…。

「よかった〜、本当に目が覚めたんだ!あぁもう、一時はどうなるかと思ったよ……」
「大丈夫か山田?」
「ちっ、やわな女だぜ。10代目の手をわずらわせてんじゃねえよ」
「ちょっと隼人!!そんな言い方っ!!」

ギャーギャーと、人の病室で構いもせず騒ぐ目の前の彼らに、痛い頭がさらに痛い。皆さん、病院ではお静かに、ですよ。そしてできれば早く帰れ。特に獄寺、てめーだよ。悪びれるそぶりも見せない男の姿に内心で悪態をつく。
いや、まあ、薄々気づいてはいたさ。たぶん、いや絶対、君たちが関係しているんだろうなぁ とは。すぐ近くで酷くうろたえている 栗色の髪の少年と、その仲間たちのほうへ視線を向ける。


うわ。私、マジでREBON!の世界に転生しちゃってるよ。


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