恋人との甘えの意味



敏弥さんが海外ライブに行って、1人と1匹になった部屋の中。
コロンは朝早くに起きるんだけど、俺が起き出すまではゲージの中のドーム型のベッドで丸まって寝てるし。

馬鹿みたいにデカいベッドで1人。
明朝に寝て、仕事の時間まで寝倒そうとした思惑は自分の携帯の着信音によって意識が覚醒させられる。


舌打ちをして、手探りで携帯を探す。
ディスプレイに出た敏弥の名前に、通話ボタンを押して携帯を耳に押し当てた。


「はい」
『…寝てた?』
「そりゃーまぁ、時差あるからね、そっちと」
『…そ。じゃ、いい』
「良くねーだろ起こしたんだから責任取れよお前」
『だからもう一回寝ればいいだろ』
「お前ね…」


敏弥さんの可愛くねー言葉に溜め息。

何の為に電話して来たんだよ、なんて聞かなくても大体わかる。


中継されたコイツのフェスを見てて寝んの遅くなった訳だし。


一応、見たってメールは入れてた訳で。
メンタルが決して強くは無い敏弥さんが俺に電話して来たのって、その事だろ。

声のトーンが低い。


さっきまでの眠気はどっかに行って、ベッドの上で身体を起こす。


「どうしたんだよ。俺の声が聞きたくなった?」
『…自惚れんなよ。馬鹿じゃねーの』
「はは。ライブどーだった?」
『………』
「………」
『…………最悪だった。京君にも迷惑かけちゃった』
「そう思ってんならいいじゃん。次頑張れば」
『だよねぇ…』
「練習しろよお前。グダグダだったし」
『わかってるよ。もー…ヘコむ』
「よしよし、帰って来たら慰めてやるよ」
『今慰めてよ』
「やだよ。まだツアー残ってんだろ。今から甘えてどうすんのしっかりしろよ。敏弥さんなら出来るよ」
『…当たり前じゃん』
「だろ。格好良い敏弥さん、期待してるから」
『うん』


少しだけ、敏弥さんの声に張りが出て来たから安堵してベッドさいどに置いてある煙草に手を伸ばす。
傍に置いてある時計の、表示された時間はもう二度寝は出来ねーかなって時間で。

コロンの散歩でも行こうかな。

朝早い方が涼しいしコロンの肉球焼けなくて済むし。


そんな事を考えながら、敏弥さんと他愛ない会話。


「そう言えば、バスの隣誰だったんだよ」
『ん?京君だよ』
「うーわー。ずりぃ」
『何がだよ。ルキ君、京君京君言っててムカつく』
「悪ィかよ」
『…あんま会話してくんねー癖に』
「だよなー。やっぱ俺嫌われてんの?」
『京君人見知り激しいからね』


そっかなー。
よく敏弥さんのライブ観に行って、楽屋に挨拶に行っても一言二言交わすだけだし。

色々話聞きたいんだけどなー。


煙草に火を点けて、ふーっと煙を吐き出す。


「また何か写メ送ってよ」
『おうよ。バンバン送るよ』
「楽しみにしてる」
『あ!写メと言えばコロン!コロン禿げてたんだけど!』
「禿げっつーな馬鹿。あれはサマーカットだっつの」
『つるつるじゃん』
「暑いしな。毛がない方が涼しいじゃんか」
『そうかもだけど。コロンの柔らかい毛撫でるのが好きなのに』
「今はじょりじょり。それも手触りいーぜ?」
『うわ、帰って撫でんの楽しみにしてるわ』
「おぅ。早く帰って来いよ。自分に負けずに頑張れ」
『ありがと。ルキ君もね。また電話するから』
「うん」


挨拶を交わして、通話を切った。

静寂の中、自分が吸う煙草の煙だけが宙を舞う。


通話画面から待ち受け画面に変わったそこは。
敏弥さんと一緒に写した、サングラス姿の2人の写メ。


今は俺の傍にいない、愛しい恋人。

頑張れよ。

俺の元に帰って来た時にドロドロに甘やかしてやるから。



END


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