色褪せたりはしない



「あれ、敏弥それ持って帰るん?」
「うん。最近いっぱい雑誌出てるからさー持って帰るの重い」
「ほな自分のだけでえーやん」
「…とか言いながら、薫君も京君のパーソナル持って帰ってんじゃん」
「まぁ、読むやん」
「ウチは家に京虜ちゃんが居るからね。持って帰ってあげたらめちゃくちゃ喜ぶの」
「あぁー、ルキ君な」
「まぁ俺等のバンドが好きらしいから、薫君や堕威君のとか全員の読んでるよ」
「そら嬉しいなぁ。またルキ君誘って飲みに行こうや」
「うん。ルキ君にも言っておく。じゃ、この後ルキ君とご飯約束してるから、また明日ね」
「おぅ、また明日」


事務所に届いてた京君が載ってる対談やパーソナルの雑誌を一冊ずつ取って鞄の中に入れる。
そしたら薫君も持って帰ってて。

俺は皆のって言うか自分の雑誌とか読まないんだけど、ルキ君と暮らすようになってルキ君が毎回買って来てたから、俺が事務所から持って帰るのが恒例になった。

代わりにルキ君の雑誌も持って帰って来てよって言って、お互いのバンドの雑誌が家の本棚に大量にある。

漫画も置いてるしスコアも置いてるし、ルキ君がそろそろ新しい棚欲しいって言ってたな。


薫君に軽く挨拶をして、事務所を出て。
携帯を見ながらタクシーに乗る。


ルキ君からメールが入ってて、もう待ち合わせ場所に着いたらしい。
今から行くよって返信して、携帯を閉じる。


一緒に暮らしてるけど、ルキ君とは時々飲みに行ったりご飯行ったり。
待ち合わせして会うまでって、結構わくわくするよねー。


タクシーの中で都会の景色を見ながらそんな事を考える。


何年も付き合ってんのにな。


タクシーから降りて、待ち合わせ場所に向かう。
ルキ君を探すと、端の方でサングラスをしてハットを被ったちっさい子を見つけた。


「ルキ君ごめん。お待たせ」
「おー。敏弥さんお疲れ」


ルキ君の方に近寄ると、ルキ君は顔を上げてiPodを止めた。


「お疲れ。じゃ、行こっか」
「うん。今日の店は敏弥さんが聞いた店だっけ?」
「そうそう、個室だし料理美味しいしいい雰囲気だよーって聞いたから、ルキ君と行きたいなーって」
「そりゃ楽しみだな」
「都会って食べに行く所いっぱいあっていいよね」
「飽きねーよな。家で飯食うのもいいけど」
「だよねー。あ、あそこだよー」


スタッフに聞いた、雰囲気のいい店。
入り口がわかりにくいって聞いてたけど、見つけられてよかった。


入り口から店までが長くて、そこから店員に案内される。
純和風な雰囲気の店。

何か俺等の格好で来るのもどうよって感じだなー。


案内された個室は畳で結構広い。
鞄を置いて、ルキ君と向かい合わせに座る。


「はー…つっかれた。ここ雰囲気いいなー。俺等似合わねー」
「それ俺も思った」


ルキ君の言葉に笑いながらメニューを開く。
ここはコース料理が美味いって聞いたし、それでいいかな。


「ルキ君なに飲む?」
「ウーロンハイ」
「了解。俺この黒ビールにしよ。料理はこのコースでいい?」
「敏弥さんに任せるよ。灰皿ある?」
「ん、はい」
「サンキュー」


ルキ君の方に灰皿を寄越して、自然な流れで煙草に火を点ける。
そんな中、店員を呼んで飲み物と料理を注文して。


「あっ、そうそう。ルキ君これ」
「ん?」
「はい」
「んー?あっ!京さんのじゃん!まじサンキュー!」


持って帰って来た京君が載ってる雑誌を鞄の中から出して差し出すと。
ルキ君は嬉しそうに言って煙草を消して受け取った。

そのテンションはどう言う事だよコラ。


「あーマジ京さん格好良い。俺も対談の仕事させてくんねーかなー」
「…京君絶対無言で終わるよね」
「うっせーな。夢見るぐらいはいいだろ」
「はいはい」


雑誌を受け取ったルキ君は、何ページかペラペラと捲る。
ま、いつもの事だけど。


ルキ君が嬉しそうに見んのを見るのは好きだからいいけど、何か複雑。
京君京君てさぁ。

京君の何処がいいのさ。


じっとルキ君を見てると、先に飲み物が運ばれて来て。
ルキ君は雑誌を置いて、こっちに向き直った。


「じゃ、敏弥さんお疲れー」
「お疲れ」


グラスを合わせて、一口。
喉渇いてたから、冷たいビールが美味しかった。


「ルキ君てそんなに京君が好き?」
「うん。尊敬してる」
「ふーん」
「後、俺が京さん京さん言ってる時の敏弥さんの顔が好き」
「は?」
「敏弥さん超可愛い。愛してる」
「何それ」
「あはは」
「バカじゃねーの」
「うん」


ちょっとその言葉の意味を理解して、嬉しいって思った俺も十分バカだよね。

何年も付き合ってんのに、こうしてサラッと言う事が新鮮で。
あぁ、俺も好きだなって自覚しちゃうんだね。



END


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