恋人からのメール
仕事の休憩中。
一段落して淹れてくれた珈琲片手に、簡易テーブルと椅子がセットされた所に腰を下ろす。
自分のノーパソをイジりながら、珈琲を一口。
打ち合わせ中に触って無かった携帯を見ると、メールが何通か入ってた。
まぁ、ほとんどが敏弥さんからだけど。
画像が添付されてるっぽいメールを開けば、文字と共に見える画像。
………。
「ッあぁあぁあ!!」
「ちょ、何ルキうっせ…」
「れいた、ちょっとこれ見て。これ」
「はぁ?何だよ」
「だからこれ」
思わず叫んで、近くにいたれいたが訝しげな視線を向けて来やがった。
そんな事はお構い無しに、れいたを手招きして呼びつけ、自分の携帯画面をれいたの顔面に突き付ける。
れいたが目を細めてピントを合わせて画面を見てた。
「…え?誰これ、何」
「敏弥さん。今日のフリーイベント、この格好で出るっぽい。むちゃくちゃ格好良くね?」
「あー…敏弥さんか。言われてみればそんな感じが…特殊メイクすげーなぁ…マジいかちぃじゃん」
「あー…早く行きてーなー」
「ルキ、今日のそのイベント行くの?」
「おぅ。仕事早く片付けねーと行けるかどうか微妙なトコなんだよ」
何通かくれた敏弥さんからのメールは、今日のメイクはこれですっつって添付された特殊メイクをしたゾンビな敏弥さん。
PVとか、ポラでは見せて貰ったんだけど生で見れるとか。
ライブするとは聞いてたんだけど、まさかこの特殊メイクをするって。
逆に何で教えてくれなかったんだよ。
畜生、似合う。
恋人の欲目抜きにも、超格好良い。
さすが俺の恋人。
何枚か自撮りをした敏弥さんのゾンビ姿の写メを保存。
そしてメールを返す。
「でもまぁ、いつ聞いても不思議だよなールキの恋人が敏弥さんって。イメージ湧かねーっつーか」
「はぁ?何で。れいたも何回か会った事あんだろ」
「会ったけど、ルキって京さん好きって感じだったから」
「あぁー…」
「敏弥さんと付き合うって聞いた時、ビックリしたし色々」
「んー、俺も。最初はお互い遊びだった筈なんだけどなー」
送信完了の文字を見て、携帯を待ち受けに戻すとそこには。
コロンと顔突き合わせてる敏弥さんの笑った顔があって。
すげー良く撮れたから、お気に入り。
気分で待ち受けは変わる感じで。
「それが今じゃバカップルだもんな」
「そう?喧嘩も良くするけどね」
「へー」
「最初とか、俺は京さんと接点持ちたくて敏弥さんと一緒にいるんだろ、とか散々言われたし」
「あぁー、お前結構好きだもんな、京さんの事」
「そうだけど、敏弥さんには愛情で、京さんには尊敬じゃん?全然別物だよ」
「それが度を超しすぎてるからじゃねーの。敏弥さんって嫉妬深いんじゃなかったっけ?」
「うん。嫉妬深い」
「ウザくねーの?」
「何で?可愛いじゃん。敏弥さんのそう言う所、好き」
「あー…そ、」
「ンだよ」
自分から言った癖に、呆れた顔で見て来るれいたの腹に軽く一発拳を当てる。
筋肉付き過ぎてっからかてーんだよコイツの身体。
腕とかヤベーしな。
何、ベーシストは筋肉マンにならなきゃいけないわけ。
あ、敏弥さんからメール返って来た。
『ルキ君も写メちょーだい』って文章。
「れーいた、ちょっとこっち来い」
「何だよ」
「いいから。はい、撮るよー」
「は?」
れいたを自分の隣に呼んで、肩を組んで自分撮り出来るカメラワークに切り替える。
れいたは一瞬戸惑ったけど、撮影は慣れてる訳で。
上手く2人で撮れた写メを敏弥さん宛のメールに添付。
「敏弥さんが写メくれってさ」
「俺写んなくてもいいじゃん」
「まぁ気にすんなって。今休憩中、と…」
メールの文章を打って返す。
数分間、下らない話をれいたとしてるとまた敏弥さんからのメール。
「……ッあ!!!」
「何だよウルセーって」
「…これ。多分れいたと写ってたから仕返し」
「はぁ?」
敏弥さんからのメールには添付画像があって。
そこに写ってた物にまた思わず声を上げた。
れいたに携帯を見せる。
そこには『京君がメイク中』って特殊メイクされてる京さん(不機嫌そうに目だけこっち向いてる横顔)と、自撮り体勢で写メった敏弥さんが画像の中に写り込んでて。
ヤベェ、京さんもめちゃくちゃ格好良い。
「2人共格好良いな」
「だよな。あー今日のイベント楽しみ。早く仕事終わらせよ」
「手抜くなよ」
「当たり前」
返信メールで京さんだけ誉めたら拗ねるかな、敏弥さん。
ホント、可愛いと思う。
京さんと仲良いの、妬けるけどね。
もちろん、恋人として。
END
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