キスマークの意味



よくあるベタだなとは思うけど。
タイミングが合うと、ルキ君と一緒に風呂に入る。

一応、ルキ君と一緒に選んだ部屋は広めな風呂の造り。
でもやっぱ男2人が入ると若干狭い。

でも一緒に風呂に入るのはいいよね。
喧嘩して気まずくなっても、何だかんだ仲直り出来るし。

スキンシップは大事だね。


「ッあー…気持ちぃー」
「ホント、今日も疲れたー…」


一緒に入ると体格的な問題で俺の足の間にルキ君が入って、俺の身体に背中を預けさせる形。
そんなルキ君のお腹に腕を回して湯に身体を預ける。


ルキ君の体温と、お湯の温度で身体が弛緩する。

気持ちイイ。


「敏弥さん最近仕事どうよ」
「んー?忙しいよ、やっぱ。リハもあるしさー」
「だよな。俺もリハあるしアルバムあるし、訳わかんねー」
「時間の感覚無くなるよね」
「そうそう。こうしてるとスゲー落ち着く」


そう言ってルキ君は俺の肩に頭を乗せて目を閉じて息を吐く。

少し上向き加減になったルキ君の顔は、あんま寝てないっぽくて若干クマがあった。

洗った髪をオールバックにしてるから、顔の印象が全然違う。


お互い仕事忙しかったら、ご飯も外食とかケータリングになったりして。
あんま顔合わせる機会も無くなるんだよね。


同棲する前は、それでよく擦れ違って喧嘩しちゃったりしたけど。
一緒に住んでてお互いの事が多少把握出来る分、喧嘩は減った、気がする。


気持ち良さそうに浸かるルキ君のこめかみ辺りに唇を当てると、うっすらと目を開けて俺を見上げて。

すると、俺に凭れてたルキ君は身体を起こして。
俺の方に向かい合う形になって密着して来た。


「なぁに、ルキ君」
「別に」
「…とか言いながらキスしたかったんでしょ、ルキ君は」
「まぁな」
「んふ。可愛い」
「煩ぇ」


唇に柔らかくキスして来たルキ君を、目を細めて見つめる。

悪態吐きながら、俺の首に両腕を回して首筋に顔を埋めて来た。
ルキ君の肩に湯をかけながら片手で腰を抱く。

そしたら、首筋にちょっとだけ痛み。


「あ、何。キスマーク付けんの?」
「うん」
「暫く撮影ねーし、いっぱい付けて」
「生放送まで消えねー様にしてやるよ」
「あはは。それは困るなー」


なんて。
全く困らないけど。


首筋の柔らかい所や鎖骨、ルキ君の唇が這う。
キスマーク付けてんだろうなって思う小さな痛みが時々走って。

目の前には、無防備に晒されたルキ君の肌。
ちょうど胸元。


そこに俺も吸い付く。
そしたら、ルキ君の動きが止まった。


「…何、敏弥さん」
「俺も付けるー」
「えー俺撮影あんだけど」
「いいじゃん。見せつけなよ」
「そうしたいのは山々だけど、多分メイクさんに消されるな」
「あは、残念」


まぁルキ君は化粧ガッツリしてるし、ドーラン塗れば隠れるしね。

キツくルキ君の皮膚に吸い付けば、くっきりとした赤いキスマークが付いた。


胸元はだける衣装だったら見えるかな。


「…付いた?」
「うん、きっちり付いた。俺は?」
「敏弥さんにも付いたよ」
「そっか」


ルキ君が俺の皮膚を指先でなぞった。


「敏弥さんて昔からキスマーク付けられんの好きだったよな。セフレいっぱいいた癖に」
「いっぱいいたからだよ。お前だけのモンじゃねーよって牽制出来るじゃん」
「うわ、最低ー。よく殴られなかったな」
「キスマークぐらいで怒るセフレだったらいらないからね」
「はは、確かに。セフレは怒る権利ねーよなぁ」
「ね。ルキ君は怒ってたよね、雰囲気が」
「あー…そうだっけ?」
「ルキ君プライド高いもんねぇ」
「何でこんな男好きになったんだって思ったね、昔は」
「今は?」
「…敏弥さんを好きになって、よかったよ」
「俺も。ちょー幸せ」


にっこりと笑って、向かい合ったままのルキ君の髪をゆっくり撫で付けた。


白いルキ君の肌に自分が付けた赤い痣がよく栄える。


またゆっくりとお互い唇を合わせて。
柔らかく何度もキスをする。


人のモンになるのが嫌だった昔。
いつの間にか独占を知って、こうして好きな人と一緒に暮らしてるのとか想像出来なかった。


今は皮膚に主張する赤い痣が、愛しいモンに思えた。



END


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