雷とウチの子



「ルキくーん。超雷鳴ってるよ」
「んー。そうだな」
「コロンめちゃくちゃ怖がってる」
「撫でてやってよ」
「寧ろ腕の中から離れない」
「あー…可愛いな」
「うん、可愛い」


今日は俺が飯当番だから、晩飯の分の仕込み中。

朝から雨が激しいし、めちゃくちゃ近くに落ちてんじゃねーかってぐらい割れる音を響かせて雷が鳴ってる。

頻繁に光るし鳴るし、かなりデカい音だから結構ビビる。

稲光とか見んのは好きなんだけどな。
綺麗じゃん。


キッチンにいる俺の所にコロンを抱えた敏弥さんがやって来る。

コロンは敏弥さんの腕の中で小さくなって震えてる。


まぁ雷デカくてビビって、なかなか飯も食ってくんなかったしな。
犬って雷苦手なんだ。


敏弥さんはコロンを抱っこして片手で撫でながら、俺の隣に来た。


「ねー。ここまでビビってると留守番大丈夫なの、この子」
「仕方ねーじゃん、お互い仕事なんだから。つーか台風とかマジないなー」
「だよね。でもここまで激しい雨降ってたら逆に外出て走り回りたくない?」
「それは敏弥さんがバ…、変わってるからね」
「オイ今バカって言おうとしただろ」
「あはは」
「コロンー。ルキ君酷いよねー?」


敏弥さんをチラッと見ると、コロンを抱き上げて目線を合わせて話し掛けてた。
まぁ物凄い勢いで顔反らされてたけど。


確かに留守番中は誰もいねーしなー…かと言ってこの雨の中連れ出してホテルに預けんのもな。


そんな事を思いながら料理を作る為に手を動かしてると、隣に立つ敏弥さんにくっつかれた。


「…何、邪魔なんだけど」
「ねー何作ってんの?」
「晩飯。帰って来てから1から作んの嫌だし」
「あー…仕事帰りに作んのって怠いもんね」
「うん。1人だったら絶対ぇ作んねー」
「俺も。食ってくれる人いなきゃやる気出ない」
「敏弥さんは朝飯は食う人いてもやる気出てねーけど」
「朝は弱いんですー。起きたくないんですー」
「は、最悪だな」


邪魔、と敏弥さんの身体を押して動きながら、適当な所で切り上げる。
後は帰って来てからちょっと手を加えれば出来るし。


一息吐いて、洗い物してシンクを綺麗に拭いて手を洗う。
敏弥さんの方に向き直ると、コロンが敏弥さんの腕の中からじっとこっちを見てた。


その間にも、かなり大きな音を立てて雷は鳴る。


「ちょ、雷おさまんねーのかよ」
「落ちないよね?」
「部屋ん中はマンションに避雷針あるから大丈夫だろ。…コロン、おいで」
「はい」
「ん」


敏弥さんからコロンを受け取って抱き上げると。
コロンは甘えた様に身体に擦り寄って来る。


…もう仕事場連れて行こうかな。
雷怖がってんの心配だし。

いやいや、それはそれで甘やかし過ぎか。


「ルーキ君」
「何」
「俺も雷怖いから撫でてー」
「嘘吐くなよ。邪魔、歩けねぇ」
「コロンばっか狡い」
「コロンは可愛いから」
「俺は」
「うーん…」
「悩むのかよ」
「はいはい。あ、稲光すげー」


コロンを抱っこしてると、敏弥さんが背中から抱き付いて来て。
鬱陶しいと思いながらそのままにして、窓の方に近寄る。

叩き付けられる雨に視界は悪いけど、遠くからも稲光が走ってんのが見える。

うん、やっぱ綺麗。


こう言う自然現象を見んのは好き。

無心で見てるといい詩が浮かんで来そう。


コロンを抱いて、何でか知らねーけど敏弥さんが後ろから抱き付いて来て、俺の腹に腕を回す。
身長的な関係で、敏弥さんが俺の頭の上に顎を置くのが腹立つけど。

背中の温かさに身を任せる。


「うわっ、今の音めちゃくちゃ振動来た!」
「うん、すげーな雷」
「俺らが仕事行くまでにはおさまったらいいねー。コロン置いてくの心配」
「親バカ」
「なーによ、ルキ君は心配じゃねーの?」
「めちゃくちゃ心配。だから仕事場連れて行こうか迷ってる」
「ルキ君こそ親バカじゃん!」


頭上から敏弥さんの楽しそうな笑い声が聞こえて来て。
よしよーしって俺の頭を撫でて来た。

俺がコロンを撫でてる様に。

何だこの図。


雷怖いって言う名目の元、くっつく俺達はラブラブです。

ウザいけど、そこが好き。



END


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