今と昔で違う見た目と感情



「ルキ君、何見てんの?」
「んー?これ」
「…俺達のPVじゃん。しかもかなり昔の」
「そー。この頃の敏弥さんは線が細くて綺麗だったなぁって」
「だってこの頃って女形してた時期だしねぇ。確かに細いな」
「今はムキムキだしね」
「ふふん。格好良いだろー」
「ははっ、ありえねー」


半身浴してた風呂から上がるとルキ君が帰ってて、テーブルの上でノートパソコン開いてじっと画面を見てた。

冷蔵庫から缶ビールを出して、プルトップを開けながらルキ君の隣に座る。

ルキ君は眼鏡掛けて煙草を吸いながら、肘を付いて画面を眺めてて。

ルキ君のパソコンを覗き込むと、俺のバンドのPV映像が流れてた。
ホント好きだよな、ルキ君。


画面に流れる映像は10年以上前の自分が映ってて。

ビールを飲みながら、自分もその映像を見て目を細める。


「この頃はまだルキ君と出会って無かったね」
「あー…そうだな。敏弥さんと会った時はもう女形じゃなかったし」
「女形のがよかった?」
「あー?まぁホテルに連れ込まれて無理矢理ヤられた時は」
「あは。だってヤリたかったんだもん。男相手初めてみたいだったから俺がネコやってあげたじゃん」
「その後掘られたけどな」
「初めて開発すんの、大好きだったからね」


懐かしいなぁって言いながら、ルキ君にくっつく。
チラッと俺の方を見たルキ君は溜め息を吐いて。

続いて流れ出した別の映像に目を映す。


まぁ俺はあの頃、結構男でも女でもかなり遊んでたんだけど。
本命もいなかったし、遊ぶ方が楽じゃんって事で。

飲み会で会ったルキ君を酔わせてホテルに連れ込んでヤッて、そのままセフレになったんだよねー。

慣れて来たらルキ君を犯そうって決めてたしね。


「でも何だかんだ、掘られんのもよかっただろ」
「…………、まぁ」
「俺上手いからねー」
「黙れよ遊び人」
「ルキ君も当時は人の事言えなかったじゃん。何人女いたんだよ」
「そんな昔の事は忘れましたー」

笑ってビールの缶をテーブルに置き、ルキ君の肩に腕を回して。
顎を上げさせて唇にキスをする。


「…酒くさ」
「ふふ、ルキ君は昔のが肉付いてたよねー?」


そう言って、顎に掛けた手でうにうにと頬を揉む。

あは。
可愛い顔。


今はほっそりしたよね。
昔はもっと可愛かったのに。


でも唇は厚くて柔らかくて、好き。

「やめろっつの」
「やぁだ」
「ウゼェ…」
「そんな事言ったら俺泣いちゃうよ?」
「嘘吐け」
「あはは」


鬱陶しそうに手を払われて俺を睨むと、ルキ君はまたパソコン画面に目を移した。

なーに、そんなに昔の方がいいのかよ。


「昔の俺が懐かしくなった?」
「んー。こん時、俺何してたかなーって」
「うん?」
「敏弥さんはバンドしてて、名前売れてたけど、俺は全然な訳じゃん」
「まぁ、年齢的な物もあるよね」
「なのに敏弥さんと出会って、何だかんだ一緒に暮らす様になったのが不思議」
「あー…そうだねぇ」


いつの間にか遊ぶのが面倒になって、ルキ君とセックス以外の事をする様になって。

付き合う形になって、一緒に暮らして。


最初はそう言うつもりなんて一切無かったのに。
ホント、縁て不思議だ。


「10年以上経てばそりゃ人も変わるよな」
「俺の顔見て言わなーい。ルキ君だって変わったんだからね」
「そりゃそうか。ま、昔より今の方が好きだけど」
「俺も。昔のルキ君は可愛かったけどね」
「はは、ありえねー」
「今は格好良いよ」
「だろ」
「そんな生意気な所も、好き」
「知ってる」


口の端を上げて笑うルキ君は、俺の方を向いて。
視線が絡み合う。


お互い、好きになっていった過去。
遊びから本気に。

後悔なんて一切ない。


遊んでた頃より、今の方が楽しいから。


生意気そうに笑うルキ君に笑い返してゆっくり唇にキスをした。



END


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