恋人、それは変わらず/敏京
「敏弥何見とん?」
「んー?これ。スタッフに頂戴ってお願いしてたの。発売前に貰っちゃった」
「…あっそ」
「ふふ」
「ニヤニヤしとんなキショい」
「だってー」
仕事から2人で帰って、俺が作り置きしてたカレーを2人で食べた。
京君が先に風呂入って上がって、声が聞こえたから真剣に読んでた雑誌から顔を上げる。
京君が自然に俺の隣に座って。
雑誌を閉じると見える表紙のソレに京君の眉が潜められた。
自分じゃんコレ。
今の黒髪も超似合ってるよ。
もう暖かくなって来た室内で、上半身裸でジャージ姿のまま髪の毛をタオルで拭く。
雑誌を脇に置いて、京君の身体に腕を回して引き寄せた。
「京くーん」
「うわ、何やねん。くっつくな」
「大好きだよー」
「は、何やねん」
風呂上がりで高い体温に、シャンプーのいい匂い。
口では拒否っても身体は拒否んない。
そう言うトコが可愛くて、愛しい。
「何か京君のインタビュー見てたら、昔を思い出して」
「あぁ…」
「嬉しいなぁって」
「何でやねん。ホンマの事やん」
「まぁ、俺も、京君の事格好良いなって思ってたって言うか、好きだったし」
「…僕はそう言う意味で言うたんちゃうけど」
「うん、でもさ。人見知りの俺等が自然に仲間になれたのって、やっぱ運命だと思うんだよね」
「運命?はッ」
「やっぱ、大好きだよー」
「うわ、ウザ」
鼻で笑った京君に、両腕を巻き付けて抱き締める。
腕の中で藻掻く素振りの京君の濡れた髪のままの後頭部に手を添えて、こめかみや首筋にキスを落とす。
久々の黒髪。
短く髪を切ったから、右耳の下にある小さい刺青も見えた。
何かね。
月日も流れて見た目も全然変わって、それでも愛しい想いは変わらないって。
それって凄い事だと思うんだよね。
「…敏弥、眼鏡邪魔」
「あ、」
『御免ね』って言おうとしたら、刺青だらけの手が伸びて来て。
眼鏡を取られてすぐに京君の唇に噛み付かれた。
京君の身体が密着して来て、俺の身体はソファの背もたれに押し付けられる。
唇を薄く開くと、すぐに京君の舌が入り込んで来て。
好き勝手に動く舌についてくように絡める。
吸い付かれて唇で扱かれると気持ち良くて、京君の身体をぎゅっと抱き締めた。
若い時は、このままソファでってなったけど。
エロい雰囲気にはならずに、まったりした感じ。
お互いの舌を貪って、満足したらしい京君が唇を離して。
お互いの唾液で濡れた唇を舌を出して舐めるその仕草、好き。
「…大好きだよ、京君」
「ホンマ、お前はそう言うトコ昔っから変わらんな」
「うん」
「言わんでも、もうわかっとる」
「知ってる。でも言いたい」
「は、我儘」
お互い、出会った頃と変わった。
見た目でも、周りを取り巻く状況でも。
ライブの在り方。
曲作り。
歌詞。
でも、変わらない。
お互いがお互いを必要とする気持ち。
本当に、大好きで愛してるんだよ京君。
運命って言葉、京君は嫌うけど。
「やっぱさ、運命なんだよ俺等。歳取って縁側で一緒にお茶啜るイメージ出来るもん」
「は、何やのソレ。運命とかアホらし」
「だって、」
「運命やなくて、必然。当たり前。敏弥が僕が必要で、僕も敏弥が必要やから。それだけ」
「……ふふ」
「やから、笑うなキショいな」
そう早口で言った京君は、眉を寄せて不機嫌そうな顔でまたキスして来た。
髪を撫でられて、キスの気持ち良さに目を細めて。
その当たり前の切っ掛けになった映像でも見ようか久々に。
昔を懐かしみながら、大好きな君と。
終
20100510
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