激しさと、この胸の中で/敏京
「どう?新しい映像は」
「良くなかったらOK出さんやろ」
「ま、そりゃそうか。いいよね。曲も映像も」
「せやな」
新しく出来たプロモーションビデオを敏弥が焼いて貰って来たらしくて。
ソファに座ってDVDにセットして2人で見とった。
もう何回も見た映像やねんけど。
ソファに足を上げて、僕の肩に腕を回した敏弥に引かれるまま、もたれる形でテレビを見る。
うん、最近のCG技術は進歩しとるしクオリティ高いから満足。
やっぱどっちかって言うと、僕のが表立ってよう映像に映るんやけど。
敏弥の演奏の仕方も変わったしかっこえぇなって思う。
楽器の事はようわからんけど、敏弥が努力しとんは知っとるから。
「あ」
「ん?」
「…京君の左目と左腕、俺が美味しいから食べちゃったんだよね、コレ」
「…アホか」
「ふふ」
自分の抉れた身体を見て、敏弥がまたアホな事を言うて来た。
呆れ気味に笑って、隣に座る敏弥を見やると笑顔でこっちを見とった。
肩に回された手で、髪を撫でられて。
「あんな風に京君がなっちゃったらどうしよう。俺が一生世話するけど」
「敏弥の足やって抉れとるやん」
「ねー。京君が食べちゃった?」
「えー…人間の肉って不味そうやし…」
「え、そっち?好き過ぎて食べちゃいたいってとっちの意を汲み取って欲しいな」
「うん、ウザい。僕そっちの趣味無いし」
「俺もねーよ」
楽しそうに笑った敏弥の声がしたと思ったら。
肩に回された腕が解かれて。
敏弥は片足をソファに乗せて、僕の方へと身体を傾けて来て。
なん?って敏弥の方を見ると頬を両手で挟まれて敏弥の唇が左瞼に触れた。
「でも食べちゃったら勿体無いよね。大好きだから」
「ふーん」
「京君に俺を見て欲しいから目は必要だし、俺を抱き締め返す手が欲しいから腕も必要だし」
「ん、擽ったいで、敏弥」
「一緒に歩いて行きたいから、足も必要だもん」
「…我儘」
喋りながら、敏弥は僕の顔中にキスして来て。
両手で固定されとるからされるがまま。
拒否する理由も無いし。
「…京君、目ぇ開けて」
「なん」
「んー」
「……ッ」
敏弥の言われるままに、目を開けると敏弥の舌が僕の左の眼球を舐めて来た。
ビクッと反射的に身体が跳ねた。
そんな事されたん、初めてやったけど。
生暖かい舌が、自分の眼球に触れとんを感じるとか何や変な感じ。
で、気持ちえぇ。
何度も舐めたりキスされたりして。
好きなようにさしとったら、いつの間にかソファに乗り上げて押し倒される形。
もうプロモの映像は終わっとった。
しつこく左目を舐め回す敏弥に、苦笑い気味に両頬を押さえる手首を掴む。
時折見える敏弥の表情は楽しそうで。
この変態。
それに付き合える僕も、相当やけど。
やって、これだけでヤリたくなって来た。
「…ヤラしい顔してる」
「…誰かの所為でな」
「京君の左目柔らかくて美味しそう」
「アカンで食べたら。僕も敏弥を見たいから」
「嬉しい事言ってくれるね」
「一部欠けたらソレをお互い補えばえぇけど、やっぱ寄り掛かるんやなくて二人で地に足着けて一緒に過ごしたい」
「…もう、そう言うトコも大好き。愛してる」
「当たり前やん。早よ脱げや」
「ソファで?」
「うん。たまにはえぇやん」
「だよね」
敏弥が部屋着を脱いで、僕の唇を塞いだ。
覆い被さる敏弥の背中に、両腕を回す。
両腕に感じる、敏弥の体温。
そんなん僕やって。
抱き締められるばっかやなくて、敏弥を抱き締める腕は必要。
愛しとるから。
終
20100319
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