飽きない存在のお前/京流




仕事終わって帰って来て、Tシャツにジャージ着て楽な格好なって、煙草切れて買うん忘れとった事に気付いて。

るきがいつもストック買っとったりするんやけどそれも見当たらんくて。


タイミング良くるきが帰って来たから、玄関まで行ったった。
全身黒一色のるき。

ブーツ脱ごうとしとったトコに煙草買って来い言うたら物ごっつ嫌そうな顔しやがって。


えぇから行けって追い出したら、靴音が消えてったから行ったんやと思う。
どっかで買って来たらしいスーパーか何かの袋を玄関先に放置して。

まぁ帰ったらどなんかするやろ、るきが。


踵を返して、またリビングに戻ってソファに座って手に入れたDVDを観ようとリモコンに手を伸ばした。










「京さん買って来ましたよー」
「おーようやった忠犬」
「もう、携帯に連絡下さいよ先に!」
「知らん。さっき気付いたし」
「ご飯食べて来たんですよね?」
「うん」


暫くしたら玄関開く音して、ビニール袋をガサガサしながらるきが帰って来た。

少し不満そうな顔しながら、僕の煙草のカートンを差し出して来て。
それを受け取って、煙草を一箱取り出した。


るきはコンビニで他にも買ったらしく、小さい袋をテーブルに置いて玄関先に置いとった袋を持ってキッチン行ったり。

外着のまま忙しなく動いとった。


煙草吸って、ソファにもたれて映画の続き。
でもつまらんかったから、ほとんど観てへんけど。

当たり外れあるわー。
一応最後まで観るけど。


そんな事を思いよったら、隣に座ったるき。


「京さんこれ面白いですか?」
「つまらん」
「あー…」


隣のるきをチラッと観ると、るきも自分の煙草吸い始めた時やって。


ま、るきは途中からやし観てもわからんやろし。
やからってこっち見とんも嫌やねんけど。


「…なん」
「や、京さんて服の上からでも筋肉凄いわかりますよね」
「…やからっていちいち触んな」
「や、だってね、うちのバンドのリーダーも最近筋肉ついて来たんすよ。触らせてもらったんすけど、固いし太いしスゲーなって」
「ふーん」
「リーダーどっちかってと細身だったんすけど、筋肉ついたら結構男らしい姿んなって。かっこいいなーって」
「ほなお前もやったら。細っこーてひょろひょろやん」
「…京さんの筋トレ見てたり、れいたも筋肉あるんでその筋トレ見てたりしてたらちょっと」
「…お前腹筋つけろや」
「…なかなか割れなんいですよねー」
「継続せな無理やな」


そんな話をしながら、るきは僕の露出されとる刺青だらけの腕を見つめながら指先で撫でた。

僕も昔は筋肉つけても細っこかったけど。
今はがっちりになったし、体重の変動激しいけど満足は満足。


もう今更るきがごつごつのマッチョんなるんとか想像出来ひんけどな。


煙を吐き出しながら、しつこく僕の腕を揉んだりしとるるきの手から腕を引く。

それでも僕の腕から視線は外さへんかったけど。


「でもやっぱ筋肉質な方が男らしくていいっすよね。京さんも格好良いし」
「やからるきもやったらえぇやん」
「うーん、その内」
「絶対やる気ないやろお前」
「いやいや、ありますよ。体力作りしなきゃいけねーし」
「嘘くさ」
「嘘じゃないですって。あ、そんで京さんて肉まんとあんまんどっちがいいですか?」
「は?」
「や、さっきコンビニ行った時買ったんですよね。食べたくて」


そう言うたるきは、テーブルの上の灰皿に煙草を押し付けて代わりにコンビニ袋を引き寄せた。


中には言うとった中華まんが2つ入っとんが見えて。


「ははッ、お前ホンマやる気ないやん」
「ちょっ、何笑ってんすか」
「アホや。ホンマお前アホや」
「もー、2つ食べちゃいますよ」
「やめろやデブ」


夜中に食ったら余計デブるで。

ただでさえアレやのに。


別に抱き心地はえぇから、僕は構わんのやけど。


筋肉つけたいと、言うた傍からそれか。

ホンマにアホでおもろい、るきは。


下手なつまらん映画よりも。


「ちょっと何でそんなに笑ってんすか。いらないんですか」
「わかったわかった。両方寄越せ」
「俺が食べたくて買って来たのに!」




20101021



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