ENVY and REPOSE@※/敏京
「あー…ちょっと酔っちゃったー…トイレ行って来んね」
「おー行ってらっしゃーい」
「…、」
アルコールをかなり飲んで、テンション高くなった京君に声を掛けて。
アルコールと食べ物と、それぞれの香水が混じった香りのする部屋を出る。
京君の顔は赤くなってて、あんまり飲むなって言おうと思ったけど楽しそうだったし止めた。
12月25日。
正確に言えば集まったのが23時からだったからもう26日になったけど。
京君の後輩君にクリスマスパーティー誘われて、俺もついて来て。
本命連れて来るって話だったんだけどなー。
俺と京君が女連れじゃ無かったから、俺達の関係を知らない後輩が気回して女連れて来たらしい。
知らないから仕方ねーけど、余計な事してんじゃねーよって思う。
自己紹介でも京君との関係言うワケにもいかねーしさー。
愛想笑い疲れる。
昔は自分の武器がわかってる女の誘いに乗るのとか、手軽でよかったんだけど。
今は京君がいるしただウザいだけに感じる。
他盤のメンバーと、女と。
かなり集まって2部屋カラオケボックス占領してる状態で。
京君はお酒飲んだり飲ませたり、後輩と音楽の話したり。
いつもこう言う感じなのかなって言う所は見えたからいいけど。
「あー…顔赤い」
トイレで用をたして、手を洗って鏡を見ると。
アルコールを摂取して赤くなった自分の顔。
まんま合コンのノリで一気とかするからなー。
お酒飲むのは好きだけど、やっぱアルコールのある場所で女がいんのはやだ。
京君に近づくんじゃねーよって腹立つ。
鏡に写った自分の顔を見つめ、頬を軽く叩いて京君にセットして貰った髪型を手で直す。
まぁ俺も話した事ない人とか音楽の話出来て、楽しいんだけどね。
あーダメだもう。
いちいち嫉妬すんの良くねーよな。
溜め息を吐いて、服をキチンと直してトイレを出た。
2部屋取ってるから、ちょっと別の部屋を扉のガラス窓から覗いて。
京君がいる部屋の扉を開ける。
一気に騒がしい室内の音が聞こえて来て。
皆酔っ払ってん、な…。
そんな事を思いながら京君の姿を探して、固まる。
トイレ行くまでは無かった光景が目に飛び込んで来た。
京君の左隣に知らない女が座ってて。
まとわり付く様に左腕に腕を絡ませて密着してた。
一気に、自分の機嫌が悪くなるのがわかった。
京君は眉を寄せて距離を置こうとしてるけど、そんな事でアルコールが入った女が離れるワケもなく。
テンション高い女は、これ以上ないってぐらい京君に擦り寄って行って。
誰の女だよ。
躾しておけよ。
あーフリーの女もいるんだっけ?
あまりに目の前に起こった事がショックでムカついて。
フリーズしてたら、嫌がる京君を尻目に段々エスカレートしてって。
隣のイチャついてた女の手が、京君の股間に伸びた。
オイコラ。
何処の淫乱だよ。
ファックかテメー。
「ホンマ何す…、ッ!」
眉を潜めて、京君が女の手を離そうとした時。
京君が俺に気付いて、一瞬驚いて顔を歪ませた。
俺に見られて、泣きそうな何とも言えない表情。
それ程、今の俺の顔は酷いらしい。
「とし…」
自分が、口元だけで笑うのがわかった。
少し離れたガラ君が、京君の様子に気付いてフォロー入れようと立ち上がったけど。
その動きより先に京君のトコに歩いて行って。
女が絡み付いてない、反対側の腕を掴んで引き上げた。
「い゛…ッ!」
「……」
京君が痛みに声を上げたり。
京君の膝が当たってテーブルの上のグラスが倒れたり。
…隣にいた女が驚いた顔で見上げてたりしたけど。
そんな事どうでもいい。
「敏弥痛い!」
「敏弥さ…、」
「………」
京君の腕を掴んだまま、引っ張って歩き出す。
部屋を出る際、ガラ君の声が聞こえたけど一瞥してその部屋を後にした。
他麺や店員がウロついてる廊下を進んで、エレベーターボタンを押す。
京君は無言で俺の後をついて来た。
俯いてて表情は見えない。
腹立つ。
何あの糞ビッチ。
自然と、京君の腕を持つ手に力が籠った。
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