何をやっても好きで終わる/京流
京さんが今更何をやっても驚かない、つもりだったけど。
まだまだ俺は京さんについてわからない事だらけだなって思う。
いつも通り。
ホントいつも通り帰って来て、おかえりなさいご飯食べて来ました?何か作りましょうかって声を掛けながら出迎えて。
口数少なく断った京さんは、サングラスを外してハットを外した、ら。
いつもと違う雰囲気の京さんがいて。
一瞬見て固まった。
「ちょっ、京さん頭どうしたんすか!髪の毛何処に無くしたんすか!」
「無くしたって何やねん。剃っただけやん」
「うわっ、すっげー!いかつい!格好良いー!」
「煩い。死ね」
ソファに座って、慣れた手つきで煙草を取り出して口に咥えた。
その隣に座って、全部剃った頭を見つめる。
スゲー。
今まで長かったり短かったりはしたけど、こんな短いのとか初めて見たし。
やっべ、何か俺がテンション上がる。
「……ちょぉ、ジロジロ見んな」
「や、だって。スゲェ京さん」
「何がやねん」
「触りてー」
「アカン」
じろっと俺の方を睨み付けて煙を吐き出す。
……。
目力凄いんですから。
髪の毛と相まっていかつくなってすげー怖くなるんすけど。
でもやった本人よりも、俺の方がテンション上がっちゃって。
好奇心に負けて、京さんの頭に手を伸ばした。
「…うわ、すげー手触り」
「……」
恐る恐る、京さんの頭に手を伸ばして。
撫でるとしょりしょりする感触。
京さんはチラッと俺の方を見ただけで、特に何か言われなかったから。
調子乗って、何回か形に剃って手を滑らせる。
「すげーなー。も、マジ京さんすげー格好良いー」
「煩い。いつまで撫でんねんアホ!」
「や、だって気持ちいー」
「死ね」
静かに嫌そうな声を出して、溜め息を吐いた京さん。
だって何かこう言うのって触りたくなんじゃん。
京さんなら、尚更。
すげー格好良い。
好き。
撫でるのを止めて、ソファに上がって京さんの方向いて。
煙草を吸う京さんの横顔を見つめる。
動く度に、首の骨や筋肉、皮膚が動くのも丸見え。
最近伸びて来たと思ったのに、また無くなった髪。
でもイイ。
「……何してん」
伸びをして、京さんの短く剃られたこめかみの辺りにキスをする。
唇にチクチクした感覚。
すげー不思議。
でも京さん格好良くて本当、この人のやる事全てが好きだなって思う。
煙草を持った京さんが拒否らないのをいい事に、チクチクする感覚の髪を唇で楽しむ。
「────ッい゛…!?」
「キショいねんいつまでやっとんや」
「…いってぇえ!くち、唇切っ…!」
「はッ」
したら、いきなり京さんが頭突きして来て。
油断してたから、そのままモロに食らった。
あーッ。
すっげぇ唇痛い。
絶対ぇ歯で切った。
マジ痛ぇ。
俯いて口を押さえて、唇を舐める。
血の味するし。
京さんには鼻で笑われるし。
あー、何か痛くて涙出て来た。
「るき」
「きょーさん痛い…」
「あーぁ、血ィ出とるやん」
「だ…っ、」
誰の所為ですか、って言おうとしたら。
京さんに首根っこ掴まれて引き寄せられる。
されるがまま近寄ると、唇にぬるっとした感覚。
キス、と言うよりも京さんの舌が俺の舌を舐め上げた。
頭突きされてひりひりする、そこを血を舐めながら吸い付かれた。
そんな事されたら、文句言うのも抵抗すんのも全部全部やる気が削がれる。
好き。
京さんの首に腕を回す。
「……ぃ…ッ!」
ガリッと、唇切った所をまた噛まれて、痛みに身体が強張っても。
京さんの腕の力は強く、離してくんねー。
ホント、甘やかしてくれてんのか痛め付けたいのかわかんねーよ。
京さんがしてくれる事だから、全部好きだけど。
終
20101230
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