苺とるき/京流




深夜。
仕事から帰るとるきの靴はあったけど電気は消えとった。

もう日付変わっとる時間帯やし、アイツ何やライブ近いとかで忙しそうにしとったしな。

僕もライブ近いし、るきとは朝に顔合わす程度。


暗闇ん中、手探りでブーツを脱いで適当に置いて上がる。


暗闇は目が慣れて来るし、自分ちやから電気点けんでも何となくわかるし。


廊下を歩いて、リビングに通じる扉を開ける。

リビングはるきが選んだ見た目重視の綺麗なライトが点いとったから配置はわかって。
薄暗い中、テーブルの上にあるリモコンを押してリビングの電気を点けた。


いきなり明るくなった室内に目を細める。


るきは綺麗好きで、ホコリ一つ落ちとんも気に入らんタイプやけど、忙しいんか知らんいつもよりは部屋が荒れとって。


まぁ、生活感ない部屋よりえぇけどな。


そんな事を考えながらアクセを外してテーブルに置く。


喉渇いたし、キッチンに行って冷蔵庫を開けると。
綺麗に整頓された中、大きな箱が真ん中に入っとった。


なん、これ。

ケーキ?


……。


あぁ、そう言えば前にるきがクリスマスケーキ買うとか言うとったな。


その時の事を思い出しながら、横から開けるタイプの箱をちょっと開けてみた。


そこには苺が山積みみたいになっとるケーキやって。

ホンマに買ったんや。

苺苦手や言うとったのに。


鼻で笑って、ペットボトルの水を取り出す。


ってかいつ食うんや。
明日は僕また遅いやろし、るきもライブ前日やないん。


…まぁ、えぇか。

疲れたし早よ風呂入って寝たい。


水を飲みながらリビングに向かって。

もうソファに座ると動くん怠くなりそうやし、さっさと風呂入っとこ。


少し減ったペットボトルをテーブルに置いて。

服を脱ぎながら浴室へ向かった。
















暗闇ん中、寝室へ入るとやっぱるきが寝とって。

僕側の方を空けて寝とるから、そのまま隣に寝転ぶ。


やっぱ自分ちのベッドが一番えぇ。

これから始まるツアーが、少し憂鬱に重いながら目を閉じる。


したら、振動で気付いたんか知らん、るきがこっちに寝返り打って転がって来て。

寝とる身体やから温かいし、腕伸ばして抱く様にしたら反射的に擦り寄って来る。


凄い眠そうな聞き取りにくい声で、京さんおかえりなさいと呟くるき。


起きとんか無意識か。

僕の名前しか出さへんコイツを、かわえぇ、と思うとか。


…僕も眠いし温かいし。


そのまま、目を閉じて眠りん中に落ちてった。













「あ、京さんおはようございます。早いですね、今起こそうかと」
「……」


今日も仕事あるし、あんま寝てへんかったけど無理矢理身体起こして。

隣におったるきはおらんくなっとったけど、リビングに行ったらキッチンで何かしとった。


「朝ご飯食べます?」
「…ん」
「じゃ、準備しますね」


忙しなく動くるきを横目に、欠伸をしながら洗面所に行って。

顔洗ってサッパリして、またキッチンに戻って来る、と。


「…るき、これ朝ご飯?」
「朝ご飯です」
「……」


テーブルの上に置かれとったんは、夜中冷蔵庫ん中で確認したケーキ。


苺大量に乗っとる。

しかも4分の1が皿に乗っとった。


「…ケーキやん」
「クリスマスケーキです」
「…飯ちゃうやろ」
「だって京さん今日も遅いですよね?俺も遅いし…クリスマスだし、一緒にケーキ食べれるの朝しかねーし…」
「……」


僕の方には4分の1盛り付けとんのに、るきの皿にはその半分以下。

あぁ、苺嫌いなんやっけ。


溜め息吐いて、椅子に座る。


朝起き抜けにステーキ出て来ても食えるけど。

ケーキて。
飯ちゃうやん。


ケーキの隣に置かれた珈琲カップを手に取って一口飲む。


るきも目の前に座って珈琲飲んどった。


「いただきまーす」
「…いただきます」


フォーク持って、どっから食ってえぇんかわからん程苺が敷き詰められとるケーキに突き刺す。


苺だけ食ったら、普通に美味い。


クリスマスケーキとか、見た目だけやと思っとったけど味も意外といけるやん。


るき見たら、上の苺を退けとる最中やって。

意味ないやんか、それ。


「苺食えよ」
「…苦手なんで」
「なら何で買ったん」
「……」


そう言うたら、僕を責める様な視線を送って来たから笑みを浮かべる。


僕のケーキの、一番デカいと思う苺をもぎ取ってそれをるきに差し出した。


「え?」
「口開けぇ」
「…苺、」
「早よ開けろや」
「……」


戸惑うるき。

僕と苺を交互に見て。


「なん、僕が苺食わしたる言うのに、食えんの?」
「そんな事、」
「なら早よ。フォークごと口に突っ込んでぐちゃぐちゃにしたるで」
「…っ」


あ、ちょっとそれも楽しそう。

とか、そんな事を考えながらるきを見とると。
意を決した様な顔をして、少し伸び上がって僕が差し出す苺を口に含んだ。


予想通りの行動に、片端を歪めて笑う。


えぇ子。


「美味いやろ?」
「……京さんがくれたから、美味しいです…」


そう言うて、眉を寄せて嫌そうに苺を食べるるきは。

やっぱり可愛いって思った。




20101228



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