貴方の物/京流




るきと夜に飯食いに約束して。

ちょうど18時には仕事終わってんけど、るきがちょぉ遅れるや言いやがった。


もうそしたらタクシーで帰りたいねんけど。

そんな事したらるきが後々煩いんを知っとるから、それはせんけど。

最近あんま行ってへんかった待ち合わせ場所の近くの、比較的デカい本屋に行って目当ての雑誌を探す。


チラチラと雑誌を見て、立ち読みしよると携帯がメール受信。

見てみるとるきから。


もうすぐ着くってメールが入ったんを見て、携帯を閉じてまた立ち読み。


これどうしよかな。

何冊か選んで、気に入ったヤツを手に取って会計しよるとまた携帯鳴っとった。


着信はるき。


「何や」
『京さん何処にいます?着きました』
「本屋。ちょぉ待っとれ」
『あ、はーい』


手短に電話を切って、本屋を出てるきとの待ち合わせ場所に向かう。


人混みが多い中。

色んな人間がおるから私服が派手なるきもそこまで目立たへん。


でも、知り合いを探しとると意外に見つけれるモンで。
携帯片手にサングラスにマフラーで口元を隠したるき発見。


るきも周りを見とったから、僕が近づいたら近寄って来た。


「京さんスミマセン遅くなりました」
「うん。腹減ったし早よ行こ」
「何処行きます?」
「あー…肉食いたい、肉」
「あ、じゃぁあそこ行きます?」
「うん」


るきが隣に並んで、適当に歩き出す。


繁華街やから飯食うトコとかようけあるし。
るきが指した焼き肉店へと足を進めた。













「京さん飲み物何にします?」
「烏龍茶」
「じゃ、俺も」


先に飲み物を頼んで、メニューを広げて見とるるき。


灰皿を引き寄せて煙草を咥えて火を点けとると、るきが思い出した様に顔を上げた。


「あっ、京さん京さん見て下さい。俺今日サロン行って来たんですよー」
「はー?」
「ネイル。雑誌掲載に合わせて初めてやってもらったんですけど、綺麗じゃないですか?」
「……」


そう言いながら、るきは左手を差し出して来て。

るきの比較的細長い爪は、黒く塗られとって。

何や薬指だけ色ちゃうかった。


「やーネイルサロンとか初めて行ったんすけど、男いねーし無駄に緊張しますねー」
「…まぁやらんわな。昔メンバーが爪割れたー言うて補強にはやっとったけど」
「最近は男でもネイルするらしいですよ。マニキュアより持ちがいいらしいんで」
「なん。そんなんやりよって遅かったんかお前」
「え、はい」
「はー…アホや」
「スタッフにネイリストいないんですよー…ちょっと欲しいですよね」
「……」


煙を吐き出しながら、大きく溜め息。

まぁ、るきんトコは化粧もするし見た目に気ぃ使っとんはえぇけど。

何か会話しよるんが女としとるみたいで微妙。

どんだけ女々しいんや、みたいな。


「でもこう言う技術持ってんのって凄いですよね。俺も昔彫り師になりたかったし、自分の手で造り上げんのっていいなって」
「…えぇやん、音楽やっとんやから」
「ですね。彫り師になってたら京さんの入れ墨彫りたかったな」
「…何か余計なモン彫られそう」
「何でっすか!背中彫りますよ千手観音」
「はいはい。僕生レバ食いたい。後の肉は好きに頼んで」
「あ、はーい。じゃ、適当に頼みますね。海老も頼んでいいっすか?」
「うん」


店員を呼んで、るきがサラダとか肉とか適当に頼んで行く。

…2人しかおらんのわかっとんかって感じに。


頼んで店員が離れると、また僕の方を見てるきのマシンガントーク。


「まぁ京さんの背中彫るとしたらわからない様に名前書きますよね、俺の」
「やっぱ余計な事するやん」
「あは。俺の背中は京さんに彫って欲しいなー。京さんの名前を。そしたらライブ中脱いじゃいますよ」
「お前、人前で脱いでいい身体しとらんやん」
「そりゃー京さんの身体男らしくて格好良いですけどー」
「つーか名前彫るとか痛い。キモい」
「京さんの物って感じがして、俺はいいですけどねー」


るきは笑って、トングで運ばれて来た肉を七輪で焼く。


…ま、持ち物には名前書きましょうって小学生で習うしな。


目の前のは、名前書かんでも勝手に無くならんから必要ないけど。


…無くす気もないけどな。




20101206



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