1つで2人分/京流




夜。

京さんも今から帰るって言うメールもらって、遅めの夕食を作る。


京さんと会うのも、何だかんだで久し振りだし。
仕事詰まってると顔合わすのも難しくなってくるよなー。


一緒に暮らしてるから、会う時間はまだある方なんだろうけどさ。


京さんと肩を並べて食事すんのも久々だなーとか思いながら、俺も今さっき帰って来たばっかだし簡単に出来るカレー。


カレーが一番簡単だしなー。
なかなか失敗しねぇし。


冬はシチューとか作りてぇんだけど、京さん牛乳嫌いだし。

嫌がんだよな、白いの。


前買った圧力鍋ってすぐに野菜と肉が柔らかくなるし、時間短縮出来るし超便利。


レタスとトマトでサラダも作ったりして。


食事作りながら京さんの事を考えつつ、今日やらなきゃいけない仕事を頭ん中で組み立てる。


後は弱火にして煮込むだけって感じで、2人分だから量は少な目のカレーをゆっくりと混ぜる。


したら、玄関で鍵が開く音。


京さんが帰って来たって思って、玄関に続く扉にチラッと視線を移す。

…と、暫くして京さんが扉を開けて入って来た。


「…ッあ!」
「……」


おかえりなさい、を言う前にその京さんの姿を見て、思わず声を上げた俺を京さんは眉を寄せて訝しげに俺を見た。


「…何。いきなり」
「ちょ、ちょ、京さん!それ俺のジャケットじゃないですか!?」


京さんが着てたのは、今日俺が着ようと思ってた俺のジャケット。


着た時のフォルムが綺麗で結構お気に入りなんだけど。


リビングで、ハットやアクセを外す京さんに近寄る。

ジャラジャラとテーブルに置かれるアクセ。


京さんの後ろに回って、脱いだ俺のジャケットを受け取る。

シワになるし、ハンガーに掛けとこ。


「あぁ、うん。借りた」
「通りで探してもないと…」
「るきの癖にえぇの持っとったから」
「これお気に入りなんすよ。合わせやすいし。あーでも背丈似てんのっていいですね。お互いの服着れるし」
「…え、いつお前が僕の服着たん?」
「あ。…時々、ツアー中でいない時、とか?」
「……」


無言で目を細める京さん。

京さんの服って俺好みなのもあって、着たいんだし仕方ねーじゃん!


「だって格好良いのあったら着たいし、同じの2着買うのも勿体無いじゃないですか!」
「何も言うてへんし」


目が言ってます。


「お前ようけ服買っとる癖に僕の着んでもえぇやろ」
「いやいや、京さんのも着たいんですって。何かツアーで会えなくても京さんの着てるってだけで嬉しくなりますよね」
「…キモ」
「あはは。京さんが着たこのジャケット明日着ようっと」
「…オイ待て何かお前が言うとホンマにキモいんやけど」
「気の所為ですよー」
「……」


腑に落ちない感じに煙草を出して咥えた京さんに、にっこりと笑って。

ジャケットを掛けに一旦寝室に入る。


少し香る、京さんの香水。
大好きな京さんの匂い。


明日このジャケット着るとして他は何着ようかな。


何か、京さんが俺の着るのって京さんもそれがいいと思って着たワケだから。
趣味が合うってか認めてもらえたって気がして嬉しい。


自然に口元がニヤけるのを押さえながら、キッチンへ戻って煮込んでたカレーのIHのスイッチを切る。


「京さーん。ご飯出来ますよー。今日はカレーです」
「んー」


ソファに座って煙草を吸う京さんの後頭部と煙だけが見える。
話し掛けると、ゆっくり頭が動いて、煙草を消してるっぽかった。


2人分のカレー皿にご飯をよそってカレーをかける。


うん、美味そう。
腹減ったし。


テーブルにカレーとサラダを並べてたら、京さんが立ち上がってこっちに来た。

ジャケットを脱いでロンTにジーンズ姿になった京さんは入れ墨が見え隠れ。

それが格好良くて、エロくて好き。


「…何ニヤニヤしとん。キショいなお前」
「ひでー。あ、カレーに生卵かけると美味しいらしいですよー」
「いらんわ。何その食い方」
「メンバーがやってみたらしいんですけどー…」
「お前んトコの冒険する奴やな」
「ですよねー。いただきます」
「いただきます」


久々に顔突き合わせての食事。

でも、いないトコでお互いの私物が、お互いの存在を主張してる感じがして。


それはそれで、見えない所で繋がってる気がして嬉しく感じた。


まぁ、京さんに言ったら鼻で笑われんだろうけど。

そう言うトコが好きだから、全然いいけどね。




20101204



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