締め付けられるその想い/敏心




3日間のオフの最終日。


最初の内は友人に会ったりして出掛けたりしよったけど。

今日は特に予定も入れんと、いつも留守番さしてもうとるみゆゆと遊ぶ。

広い公園に散歩行ったりして、元気な2匹の姿を見るとこっちも嬉しくなるし。


そんな風に遊んで夕方頃に帰って来て。

またご飯やるには早いし、バスルームで2匹の足を綺麗に洗ってタオルで拭いたると、みゆゆは尻尾を揺らしながら柔らかいソファに上がって身体を丸めた。

今日よう走りよったし、疲れたんやろな。

安心しきって目を瞑る所が、ホンマ可愛い。


2匹の柔らかい毛並みを撫でよると、不意に顔を上げたみゆゆ。


それと同時に、玄関が開く音。


合鍵渡しとんは、敏弥しかおらん。

今日来るとは聞いてへんのに。


みゆゆはソファから降りてその人物の傍に尻尾を振って走り寄って行く。


「うぉ、みゆゆ元気だなー。よしよしよしー」
「…敏弥」


ドアを開けた瞬間、足元にまとわり付いとるみゆゆに一瞬にして笑みを浮かべ、しゃがんで2匹の毛並みを撫でる。


「やっぱ癒されんなー。俺も犬飼おっかなー。下手な女と付き合うより時間有意義な気がする」
「…なん。女出来たん」
「うん。でも今日別れた。オフの日まで我儘聞いたりしたくねーっつの。やっぱ女は付き合うとダメだねー」
「…そ」
「あ、毛が濡れてる。散歩行ってもらったんだー?よかったねー?」
「……」


平然と言う敏弥の言葉に、胸が締め付けられる。


昔程、女遊びが激しいワケやないけど。


僕以外にも身体の関係がある女の存在も知っとるけど、そう言う事実を目の当たりにするとやっぱりしんどい。


アカン。
僕もそこらのめんどい女のようになりそうやん。


身体だけの関係でもよかった筈やのに、やっぱり、悔しい。
僕以外の他人がおる事が。


「しーんや、飯食いに行こ」
「えぇよ。みゆゆにご飯やってからな」
「おー」


それでも、みゆゆ達と遊ぶ姿はそんな嫉妬さえも払拭させられる程、好きな表情やねん。









「あー…ねっむい。明日早いんだっけー?」
「や、明日はそんな早く無かったで」
「そっか。風呂借りんねー」
「うん」


今日は僕んちに泊まるつもりらしく、ご飯食べたらまた僕んちに帰って来て。


みゆゆ達はもう寝とるし、敏弥も勝手は知っとるからさっさと風呂に入って。


敏弥専用に買ったスウェットに着替えて出て来た。

入れ違いで僕も風呂に入る。


出て来たら、もう敏弥はベッドに入っとって携帯をイジっとった。

僕の姿を見たら、携帯を閉じて布団を更に被る。


デカいベッドやから、敏弥と一緒に寝ても全然平気やけど。
隣に入る時は少し緊張する。


やって、いつもやったら。


「…敏弥」
「んー?」
「……せぇへんの?」
「何、したい?」
「別にそんなんちゃうけど」


目を細めて笑う敏弥。

女にするみたいに慣れた手つきで、僕の髪を撫で付ける。

思わず視線を反らして。


敏弥が僕んち来るとか、セックスする目的以外何があるんって、自分で言うんも虚しいけど。


僕と敏弥を繋いどんは、身体しかないって思うから。


やから。


「じゃ、いーじゃん。俺眠いしねー。心夜のトコだと落ち着くし。おやすみ」
「…うん」


そう言って、目を瞑る敏弥。


ホンマに眠かったんか、すぐに寝息が聞こえて来て。


無防備に寝顔を晒す敏弥をじっと見つめる。

数段、幼くなる。


敏弥と過ごして、何もせんのとか無かったし、正直戸惑う。


なぁ、僕、敏弥の事好きやって言うたやん。


そんな事せんで。
勘違いしてまいそうになるから。


僕の事、都合のえぇセフレぐらいにしか思ってへんやろに。


『心夜のトコだと落ち着くし』


その言葉に、凄く嬉しくなる。


ホンマ、好きや。

時々それがキツい時もあるけど。


京君の事も忘れて、僕だけの物になって欲しい。


ホンマ、人間て欲張りや。


仕方無いやん。


2人が付き合っとる時から好きやったんやもん。


幼い寝顔に顔を近づけて、唇にキスをする。


好き。

泣きたくなる程。




20101104



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