甘やかしの結果/京流
るきと仕事帰りに時々飯食いに行くねんけど、今回はお互いいつもより早めに終わって。
何やるきが電気屋行きたいとか言いやがったから大型の電化製品の店に来た。
夜やのに人が多い。
ついでに店内広いし何処に何があるんか探すんかなりめんどい感じ。
るきは何やサングラス越しでもわかる、楽しそうな表情。
「お前何か欲しいんあったん?」
「やー、特に欲しいのは無かったんすけど。時間無くて通販とか多いんで実際見に行きたいなーって」
「ふーん」
「あ、京さんデジカメ見ていいっすか?」
「はいはい」
ちっさい派手な男がうろうろして、デジカメコーナーに向かって行く。
ダラダラ歩きながら溜め息を吐いてるきの背中を追いかける。
「すっげ。最近の薄いんすねー。あ、タッチパネルのもある。あー新しいの欲しいーなー」
「何撮るん。携帯あるやん」
「最近の携帯も画質綺麗ですよねー。こう…家ん中で京さん撮るとか」
「嫌やしありえん」
「あ、携帯と言えばメンバーが話してたんですけど、1000万以上する携帯とかあるらしいですよ」
「携帯に?アホみたいな値段やな」
「ですよね。携帯に1000万や2000万使うってどんなセレブだっつー」
「意味わからんな。別ん事に使うわそんなん」
「まぁでも、セレブの生活って想像がしにくいんで、ちょっと体験してみたい気もしますけどね」
「ふーん」
るきが店内を色々回って、それの後についてく感じ。
やって僕家電で欲しいんないし。
大概るきが使うし。
色んなモンに目移りしながら楽しそうに見とんを見ると、犬みたいっつーか。
犬の散歩さしとるみたいな感じ。
迷子になるから後ろついてったる、みたいな。
「京さん京さん、マッサージ機欲しいですね」
「最初だけやろそんなん使うん」
「えーそうですかね?」
「お前飽き性やし。それより体脂肪とか計る体重計買ったら?るきは」
「…京さん持ってるじゃないですか」
「るき使ってへんけどな」
「あは」
笑って誤魔化しながら、るきが色々手に取ってまた置いてを繰り返して。
ホンマに見たかっただけかい。
まぁ大概るきが全部揃えとって、必要なモンは僕んちに無かった気ぃするんやけど。
そんな事を思いながら、るきの話に適当に相槌を打って。
チラッと腕時計を見る。
店内も大きいから、見るだけでも時間かかんなー。
つーか、こいつがアホみたいにはしゃいどるから時間があっと言う間に過ぎる感じ。
腹減ってんけど、僕。
「る…、」
「あ!京さん京さん」
「…なん」
るきに話し掛けようとしたら、るきが何か見つけたらしくてそっちに向かってった。
ホンマ騒がしい奴。
「俺これ欲しかったんですよね。買っていいですか?」
「…何それ」
「圧力鍋です」
「……これから飯食いに行くねんぞ」
「ダメですか?」
「アカン。鍋もあるやろ家に」
「圧力鍋無いんですよ。これ肉もめっちゃ柔らかくなるんです」
「知らん。いらん」
「いります」
「…お前…」
「ダメですか?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「はー…お前持って帰れよ」
「!有難う御座居ます京さん」
ホンマはその鍋買いに来たんちゃうんって思うぐらいやん。
つーかコイツもB型やから、自分の中で決まっとって僕にポーズで伺い立てんなって話やわ。
鍋なんかどれも一緒やろに。
鍋の箱を持ちながら、まだ店内をうろうろ。
何だかなー。
この犬躾しても時々言う事聞かん感じ。
「うわーこのオーブンレンジ欲しーこれ値切ったらいくらになるんですかね。ね、京さん」
「…お前セレブな生活に憧れとんちゃうの」
ま、アホみたいなるきと、るきの手料理がある生活の方がえぇけどな。
「え、家電て値切るのが楽しく無いですか?」
「……。それ系あるんやからいらんで」
えーとか不満そうな声を出しながら、オーブンレンジから離れて他に目移り。
…鍋の箱持ちながら。
笑える。
何この絵面。
「あ、京さんホームベーカリーですよ。これも買っちゃダメですか?」
「アカン。いらん」
「えぇー」
程々に、が条件やけど。
終
20101104
[ 12/442 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]