ちょっとした悪戯/京流
ライブも盛り上がって。
今日は家に帰れる範囲だったから機材片付けて、打ち上げも無しで解散。
まだツアーは残ってっし。
遠征行く準備もしなきゃなんねーから、次の日には反省会と打ち合わせの予定入ってっしな。
ファンがくれたプレボには大量のお菓子が入ってたりして、何かと思ったらハロウィンだってね。
去年は京さんと過ごしたけど、今年は無理だったなー。
京さんライブまで一週間ぐらいあったし、リハとかあるけど大体夜中には帰ってるから。
せっかくのハロウィンだし、何かお菓子でも買って帰ろうかな。
こう言う時ってハロウィン限定のケーキとか発売してたりすんだけど、さすがにこんな時間じゃ空いてねーだろうしな。
そんな事を思いながら、マネが自宅まで送ってくれるライブ後で死屍累々なメンバーがいる車内。
京さんにハロウィンだからお菓子くれないと悪戯しますよーって言って、嫌そうな顔されんのを想像して1人ニヤける。
「…ルキ、やけに楽しそうだな。顔が気持ち悪い」
「何だとコラ。れいたは顔死んでんじゃねーかよ」
「うるせー。マジ寝てー」
「あ、俺家の近くのコンビニで下ろして」
「了解」
マネージャーにいつも行ってるコンビニで下ろしてもらって。
デザートコーナーに行って、新しいのが出てないかチェックする。
最近デザート充実してるしね。
あ、これ京さん好きそう。
夜中だけど、何だかんだで食べたりするしな。
ハロウィンの売れ残りか、カボチャ系のスイーツもあったけど味がどうかわかんねーし。
チョコ系のケーキを選んで、後はガムと珈琲を買ってお会計。
ライブで疲れたし、甘い物食いたいし。
暗い夜道、京さん寝てませんようにって思いながら家路に着く。
エントランスを抜けて、エレベーターで最上階まで行く。
鍵を開けて、ドアを引いても部屋からは明かりが漏れてなかった。
あれ?
京さん寝てんの?
玄関先の靴を見ても、京さんの靴がない気がする。
「…京さーん…?」
電気を点けて、寝室を覗いても京さんがいる気配はなかった。
リビングに帰って来た形跡も無くて。
携帯を出して京さんにメールしてみたけど、返事無し。
仕事が長引いてんのかな。
まぁ、俺もライブだったし…飲みに出掛けちゃってるかな。
いると思ってたから、若干ショック。
溜め息を吐いて、携帯を閉じる。
何かケーキ食う気にもならねーし。
風呂入って寝よ。
冷蔵庫にコンビニで買ったケーキを入れて、風呂のスイッチを押す。
あーぁ。
京さん何処行ったんだよ畜生。
月明かりと、薄暗い照明の中。
ベッドの軋みに目が覚めて、その原因の京さんの姿を確認する。
会えると思って会えなかったから寂しさは倍増してて。
寝転がったまま、京さんに近寄ると疲れてんのか、酒が入ってるからか爆睡中。
風呂は明日入んのかな。
服を寛げたままの姿で布団を被ってる京さんに笑みを浮かべながら顔を近づける。
肘を付いて身体を起こして。
夜の暗さに慣れた目は、京さんの顔を捉える。
寝顔は幼く無防備で、大好きな顔。
「……京さん、お菓子くれなかったから悪戯しちゃいますよー」
静かに言って、寝てる京さんの晒け出された首元に唇を寄せた。
「……ん…、」
薄い皮膚に、吸い付いたら京さんから微かに声が聞こえて。
でも起きない。
京さんの匂いと、お酒の席特有の匂いが鼻腔を擽る。
「……なに、ウザ…」
「………」
起きないのをいい事に、暫く吸い付いてキスマーク付けてたんだけど、さすがに違和感感じたのか鬱陶しそうに手で払い除けられて、向こう側を向いてしまった。
でもいいや。
首元の皮膚は薄いから完璧キスマーク付けれただろうし。
いつも付けさせてくんねーから、たまには、ね。
ちょっと京さんに悪戯出来た気がして、満足して頭を枕に沈める。
京さんの背中に寄り添って。
おやすみなさい。
ま、翌朝キスマーク見つけた京さんにキレられて、仕返しに俺も付けられたんだけどね。
「うわ、何それルキやべーだろ」
「…京さんに悪戯したら、キレてやられた」
「キスマークも此処まで来るとやべーな。うわ、歯形まである」
「俺は一ヶ所しか付けてねーのに…」
「ライブどうすんの。首元とか隠せねーし自重しろよなバカップル」
「ドーラン塗って隠すし。あー隠れっかなー」
「塗りたくったらいけんじゃね?……あ、そう言えば京さんもライブだっつってなかったっけ?」
「うん。まだ少し先だけど」
「…そりゃキレられるだろ」
「まぁね。あの人の事だから隠すとかしなさそうだから、ファンが見つけたらとか思うとゾクゾクすんね」
「…お前結構腹黒いな」
「はは、今更だろ」
「まぁな」
終
20101101
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