帰り道/京流
家に帰る前に、煙草が無くなったんに気付いて舌打ち。
帰ったらるきが買い置きしとんがあった気ぃするけど…わからんから買って帰ろか。
もうすぐ自分のマンションが近づく中、一番近いコンビニに寄る。
夜中やから客はおらんし、帽子とサングラスの僕を店員はやる気無い視線で「いらっしゃいませー」って言うとった。
余計怠くなるわ。
煙草だけ欲しかったけど、何となく店内を物色。
飲み物とか買っとこ。
あー…これよう冷蔵庫ん中にあるヤツやん。
アイツもよう此処で買い物しよるんやな…ってかアホみたいにデザート類買い過ぎやねん。
食ったら食ったでウダウダ言うし。
デザートコーナーが目に入って、ついうっかり同居人の行動を思い出してもて舌打ち。
何で本人おらん時までアレの事考えなアカンの。
嫌やわ。
そう思いつつ、手にした烏龍茶とレジんトコで煙草を買って帰ろうとした、時。
「きょ…ッ」
うん。
何か聞き覚えがある声が聞こえてんけど。
気の所為か。
気の所為やな。
嫌な予感がして無視ってレジ行こうとしたら、腕掴まれた。
何ッやねん!
腹立つな。
「京さんお帰りなさい!偶然ですね!」
「………」
腕掴んだ相手の方に視線を向けると、案の定るき。
なしてこんなトコで会うん。
や、確かに家近いけど。
それにしても。
「…お前…何つー格好で出て来とん」
「え、部屋着ですけど」
「見りゃわかるわ」
スッピン眼鏡で不細工なんは今に始まった事ちゃうからえぇねんけど。
ダボダボのスウェットにダウン羽織っただけとか。
何やねん。
お前いつも服装には拘っとるやん。
僕にはお前のセンス理解出来んけど。
「やー仕事してたんですけど、小腹が空いちゃって新作あるかなーって思って買いに来ました。京さんは仕事帰りですか?」
「うん」
「お疲れ様です。あ、風呂沸かしてあります。夜食何か作りましょうか?」
「…お前、ここ店内やぞ。ちょっとは静かに出来んの」
「あっ、そうですよね。すみません」
何やいつもみたくギャーギャー言うて来て、コイツは静かにする事出来んのかって不思議でしゃーない。
つーか。
「…何買っとん…」
「え?」
「お前また夜中に食う気か」
「お腹空いたんですもん」
「は、デブ」
「お腹事情には逆らえません」
認めたなコイツ。
あー、もう何でもえぇから早よ帰ろ。
るきが持っとるカゴん中に、さっきまで僕がこのアホを思い出して見よったデザート類がようけ入っとって溜め息。
何か疲れた。
会話途切れさして、レジの方へ向かう。
るきも選ぶんは終わったんか、僕の後を付いて来て。
烏龍茶と煙草2箱分の代金を払って、さっさとコンビニを出た。
出た瞬間、煙草の包装を破って1本咥える。
火ぃ点けて店の外からレジにおるるきを見るとまだ会計しとった。
買い過ぎ。
帰ろ。
煙草を吸いながら、歩き慣れた道を通る。
まだ寒いし、早よ帰って風呂入りたい。
そう考えながらダラダラ歩いとると、後ろから僕を呼ぶアホな声が聞こえた。
「京ーさん、待って下さい」
「………なん、うっさい」
「京さんと一緒に帰れて嬉しいです」
「へー」
会計がようやく終わったらしい、るきが何かコンビニで何買ったんってぐらいの大きさと袋下げて小走りで近寄って来た。
チラ見すると、嬉しそうな視線と合った。
「つーか、腹減ったら寝たらえぇやん。夜中にんなモン食わんと」
「えー…寝たら京さんに会えないから嫌です」
「は」
「帰るまで起きてたいです」
「アホか」
「いやでも今日は買い物来てよかったです。こうして京さんに会えたんで。これって運命感じますよマジで」
「ウッザ…」
るきが何かよう下らん事喋りよって、その言葉のアホらしさに深く煙を吐き出す。
「あ、京さん煙草の買い置きまだ家にありましたよ」
「…何やねん、先言えや。おかげでアホに遭遇してもうたん」
「そのおかげでこうして京さんと帰れるんで、よかったです」
「……疲れた…」
コイツのアホさ加減が。
「あ、疲れには甘い物がいいですよ。帰って一緒に食べますか?」
………。
脱力系の顔見たら、文句言う気も失せるわ。
おもろい顔やから。
…決して可愛いワケでは、無い。
「るき」
「はい」
「太ったら知らんで」
「ッ!!」
「待っとったご主人様帰って来たんやから、寝たらえぇやん」
一緒に。
「はい!!」
終
20090309
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