2日連続日程/京流




無事7周年ライブも終わって、次のアルバムも発表されてツアーもあって。
大人しく地下活動してた時期が嘘みてぇに忙しくなる日が楽しみでたまらない。

そう思いながら、いつもの位置でパソコンに向かって仕事。
グッズデザインとか、色々候補作りてぇし。


「るき、コーヒー」
「…あ、はい」


眼鏡掛けてパソコンと睨めっこしてたら、後ろのソファに座る京さんから声がかかって一度中断。
お互い緩い感じのこの空気感が、たまらなく好き。

京さんもシークレットライブが終わって、次にすぐ始まるツアーに向けて少しの休憩時間。
京さんのカップにドリップしたコーヒーを注いでまたソファに持って来る。

テレビ映像を垂れ流して、煙草を吸いながら見てんのかよくわかんねぇ視線を向けてる。
その前、と言うかまた元の位置の床に座って京さんにカップを差し出す。


「お待たせしました」
「ん」
「…京さんまたツアー始まりますね」
「んー、せやなぁ」
「…この前のライブ最高でした」
「なん、やっぱ来たん」
「はい。もう行ってよかったです残とか最高です嬉しかったです」
「ふーん」


何か、この前のライブの事を思い出して勝手にテンションが上がってく俺とは対照的に、あんま興味無さそうにコーヒーを啜る京さん。
いやでも、マジで。
すげぇ興奮してよかった。


「そう言う割には、お前全然ノってへんかったやん」
「え」
「一番後ろ。皆ノリよる中、何や棒立ちのヤツおるな〜って思ったらお前やし呆れるわ」
「や、一番後ろが目立たないかなー、と」
「来んな言わんかったっけ?」
「……行きたかったんです虜なんで」
「は」
「でも京さんよくわかりましたね」
「僕目ぇいいし」
「マジすか。俺目ぇ悪くて全然見えないんすよ。ファンの顔が粒粒で」
「へー」


あーでも、京さんに捨てられたチケットをごみ箱から救出して、自分なりに来てもいいって許可貰ったと思って行ったんだけど。
何か京さんにステージ上から見つけられたとか、超嬉しいんだけど!


「…あ」
「あ?」


何か京さんが、呟いてテレビ画面を凝視してるモンだから何だろってテレビに視線を移した、ら。


「……ッ!」
「…何や、歌っとるやん、るき」
「うわ、何かこう言うの京さんと見ると恥ずかしいんですけど…!」


某着うたメーカーのCMで新曲が独占配信されてる、その映像。
メイクして髪もセットして衣裳に身を包んだ自分とメンバーが、ほんの数秒とはいえ京さんといる時に見てしまうとか。
恥ずかし過ぎる。


「今更やん。お前ファンに見せる姿かっこつけとるもんなぁ」
「…何笑ってんすか」
「だっておもろいし」
「………」
「普段はアホ面下げてアホな事言うて不細工でデブやのに、ステージ上では何様やお前って感じやし」
「………」
「しかも、いつも京さん京さん言うとる割に、客席が粒粒とか、見つけられへんアホやしなぁ」
「…え」
「僕が粒粒ん中入っとんやぁ」
「え、え、京さん幕張来てました…!?」
「…パス出したんお前やろ」
「うっそ、マジっすか!ちょ、え、教えて下さいよ!」
「何で」
「意地で見つけますから」
「教えな見付けれんとか。お前その程度か」
「う…」


あぁあぁー…京さん来てたなら楽屋来て欲しかった!
会いたかったのに!!

ってかもう俺、目ぇ悪い自分恨むわ。
糞。
京さん探してライブ…してたら間違えそうだな、俺。
寧ろ顔が粒粒にしか見えねぇし。
や、俺が京さんをわからねぇハズがねぇ…!


何て事をぐるぐる頭ん中で考えてたら。


「おいアホ」
「…はぇ!?あ、はい!」
「は、何アホな声出しとん」
「やー…京さんに会いたかったなって考えてたんで」
「家で会えるやん」
「会えるなら何処でだって会いたいです」
「ふーん」
「あと見に来てくれたの、嬉しいし」
「あっそ」


素気無く言いながら、コーヒーを飲む京さんの視線は絡まずに明後日の方向。
そんな態度も好きだなって、京さんの足元に寄って、膝に擦り寄ると甘えんなキモいって言われたけど。
気にしない。
うん。
好きだから。


「ステージ上の京さんも、今の状態の京さんも大好きです」
「へー僕は今の方がえぇけどな、るきは」
「え」
「かっこつけとんムカつくやん」
「ええぇ、駄目ですか…」
「アホな方がえぇわ。おもろいから」
「ッ!」


笑顔で俺を見下ろした京さん。
言葉一つ一つに反応して。
言葉の裏に受け止めれる真意が理解出来ると、とてつも無く嬉しい言葉になる京さんのソレは。

大好きな声。




20090314


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