Intersection@※/京流




12月25日。
るきに時間とホテル名と部屋番だけ書いたメールを送る。
こう言う風に部屋に呼び出すのは、久しぶりかもしれへん。

何でクリスマスにライブやねん。
るきも来たいや我儘言うて。
いつも言わん癖にウザい。
なして、僕はわざわざるきの事待っとんやろ。
疲れとるし、眠い。
アホくさ。

自分の中では完璧とは言えへんライブにも苛々するし、何やねん。

ベッドの端に座って1人、じっと床を見つめて考え込む。
自分の中の渦巻く何かは全然おさまってくれへん。
指定した時間まではまだあるし、何もする事も無い。

携帯で時間を確認して、シャワーを浴びにバスルームへ向かう。

少し冷たいぐらいにしたシャワーを頭から浴びる。
流れる水と共に、自分の中の混沌とした物も消えて無くなればいい。
そんな感傷的。
アホくさ。
ライブ後の自分は、自分でもどうにも出来へん。


明日もライブあんのに。
疲れた身体とは反対の最低なテンションに、溜め息を零す。
シャワーを止めて濡れた髪の毛を掻き上げ、バスタオルで適当に身体を拭きながらバスルームから出て行く。


下着と、ジャージだけを穿いて、ふと携帯を見ると点滅した光。
着信かメール。
携帯を開くとやっぱりソレはるきからので。

『時間より早く着きました。部屋の前に居ます』
『寝てますか?』

そんな内容。
着信も何件か入っとる。
思わず舌打ち。
何やねん、何で早よ来んねん。

帰ったと言う考えは浮かばず、部屋のドアへと近づく、と微かに聞こえる話声。
…廊下やぞ。
何やねん。


そのままドアを開けると、サングラスに帽子姿のるき。

…と、敏弥。

何、しとん。
何で2人が僕の部屋ん前で。
廊下で談笑しとんねん。

別に悪いワケは無いけど、何でお前や。


「あ、京さん。すみません、早く着いてしまって…風呂入ってたんですか?」


るきは僕に気付いて笑いかける。


「びっくりしたよー。廊下歩いてたら京君の前に誰か突っ立ってるし、不振者かと思っちゃった」
「スミマセンやっぱこの格好変でしたか?」
「いや、そう言う意味じゃ無いよ。ルキちゃん来るなら来るって事前に教えてよー京君」
「何でお前に教えなアカンねん」


つーか。
ドアの前でごちゃごちゃウザい。

るきの腕を、掴み無言で部屋ん中に引き入れる。
ちょっとバランス崩しそうんなったるきの身体を、そのまま身体で受け止めた。

素肌に触れる、るきの外の空気を纏った服。


「はい、ほな明日な。おやすみ」
「程々にね。ルキちゃんも、おやすみ」

「あ、はい。おやすみなさい敏弥さん」


敏弥に言葉を投げ掛け、ドアを閉める瞬間に聞こえた声と少し見えた笑う表情。
律儀に反応するるきに、溜め息を覚えた。

余計なお世話じゃボケ。


「京さん、ライブお疲れ様でした」
「ん」


腕を離すとるきの言葉と共に、唇を掠める感触。
普通に、ごく自然にこなす。
大人しく享受して、ベッドに腰を下ろした。

るきは多分ケーキが入ってる箱やら、ワインを買って来たみたいでテーブルにソレを置いて行く。

多分クリスマスやからやろけど、どう見てもワンホールぐらいありそうなその箱。
男2人で食べきれる量ちゃうやろ。


「…敏弥と何話しよった」
「え?あぁ、京さんの部屋の前に来ても反応無かったんで、どうしようかなって思って待ってたら敏弥さんが来て声かけられて…挨拶してたって感じです」
「ふーん」
「どうかしました?」
「別に」


別に大した事は無い。
やけど、身体ん中にあった言い表わせられへん感情は、確実大きくなる。






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