ペアリングと独占欲/敏京




「京君とお揃いの指輪が欲しい」
「…は?」


仕事の休憩中。
何か敏弥が言うて来た。
脳内で反芻して理解して。
うん、無視ったろ。

何かスタジオ籠もりっぱなしで疲れた頭に余計疲れる言葉言われた気ぃするわ。


「ねぇ、ペアリング買おうよ。バカップルみたいに付けようよ。ってか付けたい」
「………」
「安モンでいいからさぁー。ね?ね、京君」
「………」


うっさいわァ、コイツ。
何か1人ベラベラ喋っとるし。

休憩中に敏弥に買いに行かせた烏龍茶を口に含みながら、返事をせずにうざったそうに視線を寄越したら、満面の笑みが返って来た。
めっちゃ期待しとる目ぇやん。

何なん。
時々敏弥って突拍子も無い事言うて、こう言う風に言い出したらあんま言う事聞かんくなる。
敏弥の癖に。
ほんまガキが。


「京君とお揃いの付けたい。ダメ?」
「…何でや」
「憧れ」
「女々しい」
「いいじゃん。ペアリング買おうよー。いつもずっと付けてんの」
「はぁ?バンド内で同じ指輪や付けれんやろ」


敏弥が僕の手ぇ取って、指を指の腹で撫でながらじっと見つめて来る。
顔歪めて払うと、敏弥はあんま気にして無いんか段々前のめりで近づいて。


「…じゃぁ俺はプライベートでしか付け無い。けど、京君はずっと付けてて」
「は?」
「家でもスタジオでも雑誌撮影でもライブでも、ずっと。左手薬指に」
「……何でやねん」
「ファンに叩かれても。誰かわかん無い嫉妬するファンがいて、空想の彼女が噂になっても。京君は俺のだって、見せ付けられる」
「…………」
「…ダメ?」
「お前って…ほんまガキやなぁ…」
「うん。だから年上お兄さん、我儘聞いて」


ちょっと呆れて、苦笑いしとったらまた敏弥がぎゅっと手ぇ握って来た。
今度は、強い力で。

憧れ言うか、ソレが本音やろ。
独占欲の塊やん。
公私混同すんなや。
って思うけど、口には出さん。


「無理」
「えぇ!?ダメ!?何で!?」
「ちょ…煩いし…何やねんそれ。OK出されると思ったんか」
「うん」
「キモ…」
「やだ、ペアリング欲しい」


更に手ぇ握る力が強くなって。
言葉がガキっぽくて、言う事もガキで、どうしようも無いコイツ。
何でいきなりコイツこんな事言い出したん…。

ってちょっと脳内で考えよった、ら。

そう言えば。
もうすぐやったっけ。

付き合って1年目。


アホらし。
そんな事覚えとる僕も僕や。


「仕事ん時はな」
「うん」
「仕事の僕やから、趣味や無いんも、自分の意思や無いんも付けるん嫌やねん」
「……うん」
「…やから、敏弥がずっと付けとくならえぇで」
「え?」
「敏弥の方がずっと付けとくなら、買ったってもえぇよ」

そのペアリングとか言うキショいモン。

「付けッ、付け、付ける付ける付ける!ずっと付けておくから!」
「うわ、どもっとる。キモー」
「やった!一緒に買いに行こうね!」
「ん」


まぁ、僕も大概やからな。

独占欲とか。


「変な噂立っても、俺には京君だけだからね!」
「当たり前やろ」
「京君大好きー」
「はいはい、くっつくなや欝陶しい」


まとわり付いて来る敏弥がウザかったから、烏龍茶のペットボトルで顔押し退けてもめげへん敏弥って、ほんまアホやと思うわァ。




「………お前ら、俺らん事忘れてへんか」
「あ?」


あぁ、薫君。
そう言えば仕事場やったか。
まぁえぇわ、どうでも。
どうせ言われるん敏弥やし。




20090209


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