自宅では不許可/京流




朝。
京さんはまだ寝てる。
俺のが先に起きるのが多かったり。
大体まぁ仕事関係で起きる時間はまちまちなんだけど。
京さんが先に仕事に行く時も、見送りてぇし朝ご飯作りてぇから。

昨日はお互い仕事で疲れて、何もしねぇで寝入ったから情事後の倦怠感は朝には引き摺って無くて。

ベッドの上で身体を起こして煙草を手に取り一服。
京さんを見下ろす。

枕に半分顔を埋める感じで、見える表情は幼い。
不精髭さえも格好良いその人が起きるにはまだ早ぇから、起こさずそのまま。


髪撫でてぇ…けど触ったら起きるよな。
やめとこ。


煙草を咥えたまま、携帯を持ってベッドを抜け出す。


朝飯何作ろうかなー…。


そんな事を思って、吸いかけの煙草を灰皿に押し付けた。
洗面所で顔を洗って、携帯チェック。
メールが何件か入ってる。


あ、れいたから。

夜中に来てたメールの内容を読んで、直接電話。
発信音を聞きながら、冷蔵庫を開ける。
…卵あるから目玉焼きにしよ。
卵は便利だな。
簡単だし色んなの作れる。
後はベーコン。

ご飯は昨日の内に炊いたし、味噌汁作ればいっかなァ。


そんな事を考えてると、発信音が途絶えて本人の声が聞こえた。


『おぅ』
「れいた、はよ」
『はよー何だよルキ早ぇな。寝てっと思ったのに』
「朝飯作んだよ」
『あぁー新婚夫婦みてぇじゃん』
「そりゃ旦那の為に動く奥さんですからァ」
『ははッ、ルキきめぇー』
「煩ぇ。で、何あのメール」


IHの上に、フライパンを置いてボタンを押す。
ベーコンをフライパンの中に伸ばす様に入れて、肩と耳に携帯挟んで卵を割る。
1人2個ずつ。
水入れて、蓋をする。


『ん?あぁ、酔って送っただけだから気にすんな』
「はァ?死ねよ」
『怖ぇよルキちゃーん。京さん相手にもそんなん?』
「なワケねぇだろ。あの人は特別だし無理。逆に殺されそう」
『あぁー(笑)お前京さん大好きだもんなぁ』
「当たり前。好き愛してる」
『…はいはい、何で惚気聞かされてんだ俺』
「聞けよ」
『ヤだよ。ところで今日さぁー…』


れいたが話をし始めた時。
電話に夢中で気付かなかった。

俺の背後から、首へと逞しい腕が回って来た。
予想して無かった事で、ビクッと身体が強張った。


「お前何話しとん」
「きょ…っ」
『ルキ?』
「あ、れいたごめ…」


れいたに謝って、電話を切ろうとしたけど、先に京さんに携帯を奪われて電源を押された。
通話終了。

何か普通に電話してただけなんだけど、そんな事されると怒ってんのかって不安になる。


「京、さん、おはようございます」
「………」


挨拶すると、無言で携帯を差し出され、腕の拘束も解かれた。

え、え?
逆に怖ぇんだけど。


「…お前、焦がしたモン僕に食わせるん?」
「…え?…あッ!」


目玉焼き作ってんの忘れてた。
蓋閉めた間から、煙すっげぇ出てんだけど。

焦ってIHのスイッチを切って、中を覗いたけど目玉焼き明らかに焼きすぎになってしまった。


「朝っぱらから他の男に電話しとるからやアホ」
「御免なさい…」


京さんいつから起きてたんだろ。
起きたのにも気付かなかったとか、不覚。


「んな他の奴がえぇなら、そいつんトコ行けば?」
「えっ?」
「さっき言うとったやん。好きとか」
「違ッ、あれは…っ」
「あー…るきもおらんくなるんかぁ…」
「違います…!」
「何が違うねん」


あぁー…前の会話よりも、よりによって勘違いされるトコを聞かれたっぽい。
京さんの事言ってただけなのに。
京さんの視線に泣きそうになって来た。

どう言う風に言えば、誤解は解けんだろ。


「…はッ」
「……?」
「何て顔しとん不細工」
「え?」
「ちょっとからかっただけやん」
「マ、マジですか…?」
「うん。起きたらお前おらんしどっかからアホな声聞こえるし」
「嘘ですか?他のトコ行けって言わないですか?」
「ん」
「よかったぁー…」


いやこの誤解で捨てられたらどうしようもねぇ。
泣ける。
ってか泣く。


「でも電話はアカンで」
「え?」
「何か、るきがムカつくから」
「えぇ!?」
「わかったん?」
「はい…」
「ほな飯早よして」
「わかりました」


焦げた目玉焼きは、俺が食べよ。
皿に移し変え、もう1人分の目玉焼きを同じ手順で焼く。

インスタントの味噌汁を取り出して袋を開ける。


………ん?
電話がダメって。
要するに、他と電話してんのが嫌だから?
嫉妬?
嫉妬ですか京さん。

やっべ!
すっげぇ嬉しくなって来た…!

寧ろポジティブな俺の脳内変換よくやった、的な。


「何ニヤニヤしとん、キモいで自分」


顔洗って来た京さんに変な目で見られた。
嬉しいんだから仕方ねぇ。

京さん好きです愛してます。

あ、京さんの分の目玉焼きはちゃんと焼けましたよ!




20090207


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